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ずっとこのままでいたいのにな

お盆休み、家族でカラオケに行った。

3年ぶりくらいかなぁ。家族でなんてカラオケに行かないから、みんな何を歌うんだろう、なんてワクワクしていた。

お父さんはあいみょんを歌った。しかも難しいやつ。

なんでそんな最近の歌を知ってるの、と言ったら、いつも通勤時に聴いているかららしかった。

お母さんはSHISHAMOを歌った。どうも、有線で流れているのを気に入って、CDを借りてきて取り込んで車でいつも流しているらしかった。

妹は、尾崎豊を歌った。尾崎豊のご子息が歌っていて、それで知ったらしい。

なんだ、この世代ぐっちゃぐちゃのカラオケ…と思いながらさユリを歌ったら、お母さんが「この歌、好き!」と歓声を挙げた。

うちの父は9連休中。

うちの妹は、海外の大学に通っているから夏休みが3ヶ月もある。

そのなかで、わたしはおばあちゃんちでお線香をあげた後、急ぎの仕事をするためにパソコンに向かった。

急ぎの仕事。

急ぎの仕事なんだけれど、目の前で家族がのんびりと団欒していることの尊さに触れてしまった。

あくせくと働くことに、意味はあるんだろうか。

わたしの実家は田舎なので、おじいちゃんはのんびりと畑仕事をして、おばあちゃんはのんびりと美味しい料理を作って、お母さんはそれを取り分けて、家族みんなで食べるわけで。

実家にいると、意外と人間はそこまで睡眠時間を削って死ぬ気で働かなくても幸せな気がしてきてしまう。

でも、おばあちゃんとお母さんの会話を聞いていると、近所の誰かがボケてしまったとか、死んでしまったとか、自分はいつまで生きていられるだろうかとか、そんな話ばっかりで、人生そんなもんかと思ったりする。

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わたしは去年も一昨年もお盆に合わせて帰省をしなかった。**

お盆休みもなかったし、休んだところで仕事は溜まるだけだし、どうせ帰省してもお墓まいりしかすることがない。

でも、今年、一緒にカラオケに行ってみて、ああ、あと何回一緒にカラオケに行けるんだろうなんて、考えてしまった。

親と過ごせる時間を殺してまで頑張ることなんて。

いや、あるかもしれないけど、そう考えた瞬間ゾッとしてしまった。

お父さんの口からたどたどしく紡がれた音もいつかは聴こえなくなってしまうのかな。なんて思うと。

まだお父さんもお母さんも元気だけれど、わたしのまわりにはお父さんもお母さんももういなくなってしまったという人も何人かいて、当たり前じゃないのだと思い知らされる。

わたしはまた、みんなでカラオケに行きたい。

へったくそなお父さんのあいみょんを聴いていたい。ちょっぴりうまくなったわたしの歌も聴いてほしい。

どうすればいいのかわからない。ずっとこのままでいたい。

まだ身近な人を失った経験のないわたしには、どこか遠くの話のようだけど。

そんなことを思って、実家に戻ろうかと思ってしまったお盆休みだった。


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