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ロングスリーパー

一気に暑くなってきたせいか、夏でもないのに夏バテしてしまった。

頭がぐるぐるとして動けない。口内は冷たいアイスクリームを求めてかぴかぴに乾いている。

そんなときに、”1日家で寝そべっていても良い”という環境はありがたく、ひんやりとした羽毛布団に潜り込んで目をつぶった。

「アンタは本当によく寝るねぇ」と昔から母に呆れられるほど、わたしはよく眠る。

正確には眠ってしまう。

別に疲れていようがいまいが、「今日は1日寝てて良いですよ」という日があれば、平気で16時間こんこんと眠り続ける。立ち上がることもなく。飲まず食わずでいける。

なんか、寝てしまうのだ。

そして、いつも夢を見る。夢のなかで、「あぁ、これは夢だなぁ」と思いながら過ごしているし、中途覚醒してもまた目を閉じれば続きが見られる。

今日は、夢のなかで親戚が殺人鬼となり、母が殺されてしまった。

そこでもわたしは「ああ夢かぁ」と思いながら目を覚ますのだが、夢のなかで目を覚ましたので、それはわたしにとって「現実」でしかなかった。

急いで警察に向かって走る。母が刺されました、助けてください、と息絶え絶えに言って、またくるりと家に戻る。

家に帰ってきてドアを開けると、おばあちゃんが喪服に身を包んでおり、「こんなことしかしてやれないけど」と小さな白い蝋燭を握っていた、

まさか、夢じゃなかったなんて!

わたしは絶望して、幼少期からの母との思い出を反芻しながら突っ伏した。

よりによってこんなときに。

コロナだから帰省するなという母の言葉なんて無視して帰ればよかった。わたしこそ「なにもしてやれていない」じゃないか。

あまりのことに涙も出ず、実感も得られず、ぼうっとしていると、視界がだんだんと霞んでいった。

はっと目を開けるとそこは薄暗闇のなかで、目をパチパチとさせながら、息を止めていたことに気付いて、少しずつふうっ、ふうっ、と吐き出す。

安堵感に包まれながらも、夢の尾を引きずって何だかしょんぼりとした。

こうやって夢に浸食されることもよくある。

そしてまた目を閉じれば、再び夢のなかに吸い寄せられていく。そうやって眠り続けて16時間、夕方だなぁと思いながら布団から這い出る。

ロングスリーパーって損だ。

人に与えられた時間の半分くらいしか生きていないような心地がするし、夢のなかでも変わらず動いていて全然身体が休まった感じがしない。

人生はみじかい。
わたしは実家にかえりたい。

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