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#それでもスポーツで生きていく・#20

~各論【第1章】
スポーツの『存在目的』に耳を傾ける旅
宮崎都農編・その4(スポーツ地方創生編)
ツノスポーツコミッションの取り組み

こんにちは、スポーツエッセイスト・岡田浩志です。

今回で連載20号。「スポーツの『存在目的』に耳を傾ける旅」と題して10回目の投稿となります。

第1章の最後として、僕が何度も足を運んでいる宮崎・都農町の取り組みを通じて、スポーツのあり方や存在目的、スポーツ団体の理念についての考察を一区切りつけようと考えます。

ここで改めて、僕の11回目の連載記事で書いた「スポーツの『存在目的』に耳を傾ける旅・旅の3つのエッセンス」をおさらいしたいと思います。

1. ミッション・ステートメントを持たない
 ( 対話から存在目的は進化する )

2. イノベーションは常に組織の末端で起こる
 ( 変化を必要と感じている人が起点となる )

3. 正しいチャンスは外部からの働きかけ
 ( 自分の使命に従うこと、明確にすること )

第12回から、青春18きっぷも使いながら、豊田(名古屋)、岐阜、さいたま、大井、塩尻(松本)、宮崎都農と各地を転々としてきました。しかしながら、お邪魔した町すべてで、上に掲げたエッセンスを実感できているわけではありません。

旅の目的をがんじ絡めにして動いておらず、かつ終着点を決めていないので当然ですが、宮崎都農については、自分のなかであらかじめエッセンスを感じながら、お邪魔している経緯があります。

その辺りを文章に書き綴り、自分なりにスポーツの『存在目的』について、今回纏めきることができれば、と考えています。

緩やかなミッションで人を巻き込む

第17回からの3回にわたる連載を通じて紹介してきた宮崎・都農町の取り組みの起爆剤になっているのは、ツノスポーツコミッション代表理事であり、サッカー九州リーグ所属・J.FC MIYAZAKI代表取締役でもある宮城'亮'(みやぎたすく)氏です。

5月に彼がクラブ代表取締役に就任する以前、J.FC MIYAZAKIの目標は、Jリーグ昇格であり、Jクラブのない宮崎県にJリーグクラブの存在を実現することで子供たちに夢を与え、サッカーを通じて宮崎県を元気にすることがクラブのミッションでした。

宮崎は、口蹄疫や鳥インフルエンザ、新燃岳による火山灰被害、豚流行性下痢(PED)など様々な災害にみまわれました。サッカーを通して、「宮崎県民を元気にしたい!」「子供たちに夢をあたえたい!」と思い、九州で唯一Jリーグチームのない宮崎に新チームを発足させ、宮崎の復興・PRをしていきます。( J.FC MIYAZAKIオフィシャルサイトより )

ここに、宮城氏がJ.FC MIYAZAKIの代表取締役に就任した際の就任コメントがあります。

この度就任致しました代表取締役社長としての私の役割は、サッカーやスポーツを取り巻く環境整備です。しっかりと根を張るホームタウンを作ることです。その為には、”宮崎県のクラブとして地域にどんな貢献ができるのか?”これを常に問い続けなければなりません。そして、クラブが勝ち上がることで、地域の皆様を楽しませ、地域に人を呼び込み、そして地域産業を活性化させなければなりません。そうすることで、クラブは地域にとって必要な存在になると信じています。
( J.FC MIYAZAKIオフィシャルサイト | 2019.5.22「代表取締役交代のお知らせ」より )

「宮崎にJリーグを!」というミッション・ステートメントが、"宮崎県のクラブとして地域にどんな貢献ができるのか?"という『存在目的に関わる問いかけ』に生まれ変わり、これに呼応して、宮崎県の人口一万人の小さな町に、これまでになかった様々なチャレンジが形になり始めます。

TSUNO MUSIC & SPORTS FESTIVAL

J.FC MIYAZAKIのホームゲーム会場を、サッカーの試合だけではなく、SPORTS STAGE・MUSIC STAGEと題し、競技場に県内外のアーティストを呼び、盛り上げます。

第1回ゲストにシンガーソングライター・ハジ→、MCにはMEGARYURyuREX、第2回に大事マンブラザーズ・立川俊之氏を迎えています。必ず地元アーティストにもステージを解放し、第3回はついに地元勢のみで MUSIC STAGE を埋めることになりました。

このステージを設けることについて、宮城代表は、インタビュー記事のなかで、次のように説明しています。

サッカーにさほど興味がない人たちの足先を、どのようにしてスタジアムの方に向けさせる方が重要なんです。「スタジアムに行ったらおいしい食べ物があった、ミュージシャンが演奏をしている、子どもたちが楽しめるアトラクションがある」。そういった要素を盛り込んで、一日中楽しめるエンターテイメントを作ることをやっていかないといけないです。これは必ずしもチームが強いとか、成績が良いからやる必要がないというものではありません。「スタジアムに行けば楽しいことがたくさんある、だから行こう」。こういった動機づけを作るのもスポーツビジネスの一種だと思います。
※上記画像にインタビュー記事へのリンクあり

このインタビュー記事のタイトルにもなっている、『目指すは地域の幸福』これが、J.FC MIYAZAKI の『存在目的』であり、鉄の掟としてミッション・ステートメントで縛りつけるものでなく、関わる人たちの間で対話を通じて育て上げていくものといえるように思うのです。

「宮崎県にJリーグを!」という合言葉からの、小さな変化ですが、『目指すは地域の幸福』。とても大きなスタンスの変化に感じられるのです。

イノベーションは常に組織の末端で起こる

トップが理念のブラッシュアップを行ったならば、ここからは、どれだけ組織の末端現場、そしてそのサービスを享受する地域の側がどれだけ呼応するか、それに事の成否はかかっています。

左からJ.FC MIYAZAKIの強化を担う石崎氏、つい先日の『森保一講演会』の冒頭で設立記者会見が行われたTSUNO SPORTS ACADEMYを率いる河野氏、そして写真一番右、これらの動きをトータルにコーディネートするツノスポーツコミッションの石原氏。

みな宮城氏の理念に呼応して、ここ都農に移住し集ったスペシャリスト。実際にこれから都農という町にイノベーションが起こるかは、彼らと、この町に変化を必要とする人々との協業に全てがかかっています。

『目指すは地域の幸福』を合言葉に

組織を率いる側が、その組織の使命を明確に認識し、それに従い進んでいけば、様々なチャンスは、自然と周囲からもたらされてくるのでは、と僕は予測します。

まだ立ち上がったばかりの動きですから、今成果が出ている訳ではないのですが、継続して追いかける価値ある取り組みと考えております。理念が形になっていく過程は、また継続して連載として取り上げて参ります。

なお、都農町やツノスポーツコミッションが目指す地域活性のビジョンについては『森保一講演会』のなかで詳しく語られていますので、以下の有料記事もよろしければご参照ください。

各論【第1章】「スポーツの『存在目的』に耳を傾ける旅」としてはこの20回目の投稿でいったん一区切りし、次回からは各論【第2章】「スポーツの『自治』から『自主経営』へ」と題して、主にスポーツボランティアなどをテーマにした内容に移っていきます。

引き続き、ご愛読賜りますよう、宜しくお願い致します。

スポーツエッセイスト
岡田浩志

『みるスポーツ研究所』では、「それでも、スポーツで生きていく」皆さまの取り組みにもっと寄り添っていけるよう、随時サポートを受け付けております!