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Newコタまり第7号「感動の貯金」

先日、プロフェッショナルをたまたま見ていたら、俵万智さんが取材されていました。
もっときちんとしている(失礼だな…)人かと思ってたんですが、意外に自由な人だな。と感じました。
ふと思い出した一首。

トーストの焼きあがりよく我が部屋の空気ようよう夏になりゆく
                        俵 万智

これはある朝、朝食のためにパンを焼いてて「あっ」と思ったらしいです。それまでは平均して5分くらいかかってたトーストが、今朝は4分半でいい。しかもぱりっと焼けている。こんなところにも夏が来てるんだなぁ。っていう歌なんだそうです。
この、「あっ」という気持ちを、「心の揺れ」ということばを使って表現していました。

このあたりがさすがだな。と思います。
ふとした動作や気持ち、気づいたことがあるんだけど、日々の生活の中で流れていってあっという間になくなってしまうもの。
「心の揺れ」という言葉にすることで、ふわっとですが、何となく残る気がします。

言葉には、心がはりついている。
そう、俵万智さんは番組の中で話していました。

なんとなく、短歌って言葉遊びのようなイメージが強くて、あまり自分には縁の遠い世界だった気がしていました。
でも、ふだんの生活の中で気づいたことを、手帳に書いている場面を見て、ああ。本当にだれにでもある生活の一場面を詠んでいるのだな。ということがよくわかりました。

短歌の元になっている言葉は、なんてことない日常の平凡な1シーンですよね。どこの家にでもありそうな…。ほんとちっぽけなことかもしれないけど、いつか必ず言葉という形になることがきっと来る。そう、そんな
「感動の貯金」
すぐには使えないかもしれないけど、しっかり貯めておくことが大切なんだと思います。

ただ、お金を貯めるのといっしょで、日々の生活の中ではついつい後回しにしてしまうんですよね。だから「言葉」という形で残す。
写真や動画など、現代では様々な形で残すことができるようになりましたが、やはり原点は言葉で残すことなんだろうなぁ。と思います。

ふだんの生活の中で、「感動の貯金」ができるように生活できれば…。と思うのですが、現代人にはその余裕がない。
でも、若い人でも短歌を詠もうという人が最近増えているそうです。日々の生活の中で、「感動の貯金」を大切にしている人が増えている。ということなんだろうと思います。
平安時代のように膨大に時間はないかもしれないけれど、作ろうと思えば作れるはずなんですよね。そういう時間。

朝ドラの「舞いあがれ!」の中で、主人公の夫が歌人をやっています。
そんな機会もあったので、なんだか自分も短歌が作りたくなりました。


目を凝らす 見えない星を 見るように 一生かけて 君を知りたい
                         梅津 貴司


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