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ホリスティックとは

'ホリスティック' って言葉、「よく耳にするようになったなぁ」という方も、「全く聞いたこともないぞ」という方もちょっと肩の力を抜いて、少しの間一緒に考えてみませんか。ストレスの多い現代社会を生きる私たちにとって、'ホリスティック' という概念が、優しくも心強い味方になってくれるかもしれません。

(カジュアルにまとめるつもりでしたが、結果的に堅苦しい説明になってしまいました…小難しい表現などが苦手な方は、ぜひ最後の『なんとな〜くのまとめ』まで飛んでしまってください。また時間と心に余裕があるときに本文を読み返していただければ嬉しいです。)

ホリスティックとは英単語の 'holistic' であり、辞書によって様々な言い方で定義されていますが、核となる考え方は共通しています。もっともシンプルでわかりやすい定義のひとつとして "considering a person or thing as a whole, rather than as separate parts" というものを見つけました。「ある人やものを、独立部分の集まりとしてではなく、統一体としてみなすこと」と訳すことができますが、この「統一体」ということばに注目したいです。英単語の 'whole' の訳になりますが、そもそも 'holistic' の語源であるギリシャ語の 'holos' は 'whole' を意味します。つまりホリスティックとは「 'whole' であること、人やものを 'whole' として見ること、およびその状態」だと考えてよいでしょう。ホリスティックについて、'wholistic' という綴りが使用されることもままあります。

では、'whole' であるとはどういうことなのでしょうか。上記の「統一体」ということばは堅苦しく飲み込みづらいので、少しずつほぐしていきたいと思います。1920年代に初めて 'holistic' ということばが使用されたとされる文献の中に、"wholes that  are greater than the sum of the parts" という表現があります。つまりここでは、統一体である 'whole' とは単なる独立部分の総和ではなく、それ以上のものだということを言っています。ある記事ではこの文言について、"'wholes'—that is, organisms and systems instead of molecules and atoms" と説明し、'whole' とは単なる分子や原子の寄せ集めではなく、それらが相互に影響し合って保たれるひとつの体系、つまり有機体のことだと言っています。うーん…これでもまだ少し堅苦しいですね。では、もっとわかりやすいことばで言い換えてみます。'whole' であるとは、「人やものを細分化して見るのではなく、まるごとひとつの存在として確認すること(およびその存在そのもの)」だと言えると思います。いかがでしょうか?なんとなく理解できるような気がしてきました… では、'holistic' ということばとその概念は、実際どのように使われるのでしょうか?

冒頭の定義で参照したのとは別の辞書において、'holistic' は次のように定義されます:"relating to or concerned with wholes or with complete systems rather than with the analysis of, treatment of, or dissection into parts"「部分的な分析や処置、または分解よりもむしろ、統一体または体系全体に関すること」と解釈できます。要するにあらゆる物事や人についてその存在をバラバラに解剖して理解しようとするのではなく、そのまままるっと、全体的な見方によって対応しましょう〜…ということですから、 'holistic' の概念はどの分野においても使用可能であり、あらゆる学問分野や芸術活動、私たちの考え方や生活スタイルにおいても活用できることがわかります。特に健康に関わる分野においてホリスティックということばを目にする、耳にする機会が多いのではないかと思います。

オクスフォードの辞書(各自でご参照ください)では 'holistic' ということばの「医学的な用途」として次のように定義されています:"characterized by the treatment of the whole person, taking into account mental and social factors, rather than just the symptoms of a disease"「疾患の症状のみでなく、精神的および社会的要因を考慮に入れ、その人物をまるごと処置することを特徴とする」と訳します。雑な例ですが、外科的な処置や処方された薬では治らない頭痛や腰痛などの根底には、精神的なストレス等が大きな要因としてある、というような話です。「木を見て森を見ず」という諺がありますが、医学分野で 'holistic' であるということは、身体の症状が出ている部分だけを見て対処するのではなく、その人の全体性の中で何が起こっているのかを理解しようとする医学的アプローチになります。

ひとりとして同じ遺伝子を持ち、同じ環境で生きる人はいませんから、症状によって画一的に身体を処理するよりも、存在の全体性に目を向けて心身の全体的なバランスをとるホリスティックな治療の方が、実は非常に理にかなっているのではないでしょうか。身体的な不調を症状として感じる時に私たちの多くは、病院に行って診察をしてもらい、薬を処方してもらうことがすぐに頭に思い浮かびます。または処方箋をもらわずとも手っ取り早く買うことのできる薬のために、薬局に急ぐかもしれません。でもその前に少しだけ時間を作って、自分の身体の症状だけに意識を向けるのをやめて、次のように感じてみませんか:『自分は今全体的に、どんな感じだろう。』『まるごとひとつの自分として、今わたしはどのように存在しているだろう。』ホリスティックなアプローチは自分が今までどのように生きてきたか、そして今どのように生きているのか、さらに、これからどのように生きていきたいかを知ることから始まります。そしてそれを知ることが過去、現在、さらに未来の自分をまるごと受け入れることにつながり、そこにホリスティックな健康の礎がつくられます。このように、ホリスティックであるということは、自分の状態にたいして自発的であることを必要とします。つまり、病院や製薬会社などに自らの健康を任せきりにしない、という態度が重要なのです。

医学分野でのホリスティックなアプローチと自発性については別の記事でさらに詳しく書くことにして、私たちそれぞれの生き方においてもホリスティックな在り方が、多くの人に大きな意味をもたらすと考えています。上述のまるごとの自分という枠を少し広げて、自分という存在は自分が持つ身体に留まらず「この環境とそこに生きる全ての生物を包含したまるごとの存在である」というホリスティックな考え方で生きるとすると、自分という人間が抱えているあらゆる種類の問題が、実は自分ひとりの個人的な問題ではなく、多種多様な存在がお互いに影響を与えあって発現していると気がつきます。そう考えると少しだけ肩の荷がおりるような気がすると同時に、ひとりの人間が人生において自分自身と他者に及ぼす影響のことを考えて、背筋が伸びる思いになります。…と、かなり話が大きくなってきましたが、要するに、様々な場面においてホリスティックなアプローチとは、物事や人に対応する際の態度として、全体的な視野を保つということだと言えます。

長くなってしまいましたが、結局 'ホリスティック' ってどういうこと?というのを以下になんとな〜くまとめたいと思います。

なんとな〜くのまとめ:

  • ホリスティックであるということは、あらゆる人やものごとを見る際に細分化して分析したり対処しようとするのではなく、統一体としての存在をまるごと受け入れること。

  • 統一体とはその中で様々な存在がお互いに影響を与え合うことで成り立つ有機体。

  • ホリスティックなアプローチでは人や物事の存在の全体性に焦点をあて、そこで何が起こっているのかを理解し、局所的な対処よりも全体的なバランスをとろうと努める。

…いかがでしょうか、少しでもホリスティックという概念について親しみが生まれれば嬉しいです。個人的には「木を見て森を見ず」という諺が非常にわかりやすい例であると思います。ホリスティックなアプローチはその逆で、森全体を理解しようと努め、その存在をまるごと受け入れようとする姿勢です。もちろん個々の木を見ることもするでしょうが、ひとつの木が病気だからといってすぐにその木を切り落とすという画一的な対処法ではなく、森全体がひとつの有機体としてどのような状態なのか、または気候や森に住む生物の影響などにも意識を向けます。その結果病気になった木を切り落とす決断に至るかもしれませんが、切り落とさずに多方面からのアプローチで木の治療に取り組むことになるかもしれません。ホリスティックであるということは、全体的な視野を失わずに人や物事に向き合うということだと言えます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回以降どこかで、医学分野でのホリスティックなアプローチとそのために必要不可欠な自発性について、書いてみたいと考えています。今後は私が学んでいるホリスティック栄養学についてや、ソマティックワークについて記事を書いていくつもりです。どうぞ読んでみてください。

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