見出し画像

Twitter×美容マーケティングの勝ち筋 2020年上半期編 ~①エテュセ リップ エディションのバズ要因考察~

こんにちは、MimiTV編集部の添田裕女です。前回の更新から半年近くが空いてしまいましたが、MimiTVが昨年2019年より半期に1度発表している「BUZZ COSMEAWARD(通称バズコスメ大賞)」が発表となりましたことをご報告いたします👏

「BUZZ COSMEAWARD(通称バズコスメ大賞)」とはMimiTVが半年に1回、6月と12月に発表している独自のコスメアワード(表彰)企画です。半年間の間、Twitterで話題になったコスメを10アイテム選抜して表彰します。

今回は、2019年11月〜2020年4月の期間において「Twitter上で話題になった(=バズった)コスメ※」を表彰しました。MimiTV編集部の精鋭美容オタクメンバーと、厳選されたMimiTVユーザー215名(フォロワーが100名以上で、日頃からアクティブに美容情報の収集・発信を行っている美容垢が対象)の投票で決定しています。

※発売時期は問わない。限定品は除く

今回のバズコスメ受賞アイテムは以下の通りです。(並びは投票数順)

大賞:ビーアイドル | つやぷるリップ
受賞:ロムアンド | ジューシーラスティングティント
受賞:エリクシール シュペリエル | つや玉ミスト
受賞:アルビオン | フローラドリップ
受賞:ドクタージャルト | シカペア リカバー クリーム
受賞:エテュセ | リップエディション(グロス)
受賞:オルビス | オルビス オフクリーム
受賞:エレガンス | アルモニーアイズ
受賞:アピュー | ジューシーパン スパークリングティント
受賞:シャネル | ルージュ ココ フラッシュ 90

プレスリリースはこちら。

本日より、2020年上半期の「バズコスメ」のうち3つのバズ要因を分析し、そのストーリーを紐解いていきます。今回は、「エテュセ リップエディション(グロス)」のバズストーリーをご紹介します。

【目次】
---------------------------------------------
■前提:なぜTwitterでバズったらコスメが売れるのか?
・Twitterが持つ「拡散性」と検索機能
・Twitter独自の存在「美容垢」
・コスメにおける評判定着とTwitterの関連性
---------------------------------------------
■バズ分析&考察…エテュセ リップエディション
・バズプロセス
---------------------------------------------
■考察パーソナルカラー重視のトレンドに「逆張り」
・「パーソナルカラー」その功績と弊害
---------------------------------------------
■結論:エテュセ リップエディション(グロス)のバズ方程式
---------------------------------------------

■前提:なぜTwitterでバズったらコスメが売れるのか?

そもそもなぜTwitterでモノが売れるの?という疑問を持たれる方も多いと思いますので、バズコスメの本題に入る前に、いくつか前提のお話をさせてください。

・Twitterが持つ「拡散性」と「検索機能」

Twitterはリツイートやいいねで投稿が拡散されます。自分のタイムラインに、フォローしている人がリツイート・いいねをしたバズツイートが流れてくることで、自分がフォローしていない人が発信した情報にも自然に触れることが出来ます。その投稿を見た人が、いいねやリツイートでさらに拡散することで「バズ」が生まれます。多数のユーザーにリツイートやいいねをされることを「バズった」と、そして大勢に拡散された人気投稿のことを「バズツイート」と呼びます。

画像1

画像のように、バズったツイートはいいね数やリツイート数を見ることが出来ます。どれくらいの人に拡散されたのか、話題の度合いが見てすぐわかることはTwitterの特徴の1つです。

もう1つの重要な機能は、検索です。Instagramはハッシュタグや位置情報では投稿の検索が可能ですが、例えば「#赤リップ #ブルべ 」「#化粧水 #敏感肌 」など複数のハッシュタグを1度に検索することは出来ません。対して、Twitterは複数のワードが含まれるツイートを1度に検索することが可能です。バズったツイートやリアルな口コミが検索しやすいという点も、購入の後押しに繋がっています。

"投稿を見て商品を購入したユーザーたちがさらにその感想をTwitterに投稿する"という循環が繰り返され口コミが拡散される”&購入検討の際に口コミ検索がしやすい”という特性から、Twitterは化粧品マーケティングにおいて重要な役割を果たしていると言えます。

・Twitter独自の存在「美容垢」

美容垢とは、メイクのTipsやコスメのレビューなど美容情報の発信に特化したTwitterアカウントのことで、バズコスメを語る上で欠かせない存在です。
※Twitterを主な活動プラットフォームとしている人のことを「美容垢」と呼ぶ場合が多く、YouTuberや美容家さんのTwitterアカウントは美容垢とは呼ばない風潮があります。

一般的に、自らの顔や名前を出している美容系YouTuberやインスタグラマーとは異なり、顔出しをせず匿名性の高い存在であることが多いのも美容垢の特徴です。匿名だからこそ、人となりに関係なく純粋に美容への熱量を語ることが出来て、その熱量に共感する人がフォロワーになっていきます。

フォロワーを数万人以上抱えている有名美容垢は影響力も絶大です。有名美容垢の愛用品や購入品として紹介され、そのツイートが拡散された結果、リアルでモノが売れるという事例は近年数多く存在しています

・コスメにおける評判定着とTwitterの関連性

しかし有名美容垢にコスメに関する投稿をしてもらえれば必ず売上が上がるわけではありません。もっと言うと、たった1度のバズや、有名美容垢だけが口コミを投稿しているような状態のままでは、一時的に売上を上げることは出来ても、売れている状態を維持することは難しいでしょう。バズは拡散性はありますが一過性のものだからです。

MimiTVでは、とあるコスメが「優秀」と消費者から一般的に認知されるまでには、大きく分けて以下の3つのフェーズがあるのではないかと考えています。

バズコスメリリース画像_評判定着ステップ

1つのバズツイートではさすがにこの3つのフェーズまで評判を持っていくことは出来ません。複数のバズがそれぞれのフェーズで発生していることが、Twitterの化粧品マーケティングにおいては重要で、実際にバズコスメを分析していくと、各フェーズにおいて象徴的なバズツイートを確認することが出来ます。

コスメに関するバズツイートとは一重に言っても、バズった時期やその大きさによって評判形成のプロセスにおける意味合いが異なってくるので、そこも定義をしておきます。

バズコスメリリース画像_バズの規模定義以上、これからバズコスメを語っていく上での前提です。

■バズったのは…エテュセ リップエディション

画像4

全8色 各1,200円(税抜)※編集部調べ
エテュセは、バラエティショップを中心に販売されている人気コスメブランドです。ブランド誕生30周年の節目である今年2020年、ブランドリニューアルを実施しました。リニューアル前から「オイルブロックベース」「リップ美容液」など、実用性に優れたアイテム展開で固定ファンを持っており、昨年限定アイテムとして発売された「ほてリップ」がバズったことも記憶に新しいです。

リップ エディション(グロス)はブランドリニューアルの皮切りに今年3月に発売されたアイテム。パーソナルカラーを気にすることなくファッション感覚で手に取れるように、と開発されたリップグロスは高発色ながら、軽い付け心地と透け感が特徴です。

・バズプロセス

こちらの図は、Twitter上で「エテュセ リップエディション」について、Twitter上で呟かれた回数の増減をグラフで表したものです。
※リツイートも含みます

エテュセ_分析

こちらのグラフを元に、評判形成・拡散・評判定着のプロセスを説明していきます。

【評判形成期】2020年2月~3月上旬
30周年を記念したブランドリニューアルが2月に発表。ミレニアル世代から支持を集めるトップアートディレクター吉田ユニさんを迎えた新ビジュアルや、新ブランドメッセージ「今から変わるよ。なりたい私に。」などオシャレでエモーショナルな世界観に対する好意的な反応や、元々のエテュセファンが「既存アイテムが廃盤になってしまう!?」など悲喜交々な声があがりました。

美容メディア等によるスウォッチのティザー投稿や、公式によるキャンペーンの開催によって発売前から、「早く現物を見たい!」「早く欲しい!」といった盛り上がりを見せていました。MimiTVでも2月12日にスウォッチを投稿。通常、スウォッチ投稿は平均1000いいね程度ですが、この投稿に関しては7000いいねを超える反響がユーザーからあったことからも、消費者の期待が大きかったことがうかがえます。

【拡散期】2020年3月12日~2020年5月末頃
3月12日~の先行発売にて購入した人のスウォッチ投稿がみられるようになりました。有名美容垢さんの投稿の中では1000RTや1万いいね以上のエンゲージメントを獲得しているものも見られます。「パーソナルカラーに関係なく使える!」「グロスなのに高発色」など商品の機能性について拡散されることになりました。

コロナ禍でバラエティショップがテスター撤去や営業自粛となり、実際に店頭に現物を見に行くことが出来ない中でも、購入者によるクチコミや5月中旬ごろに発売した限定色情報により、アイテムへの期待や盛り上がりが損なわれることはありませんでした。

【定着期】2020年6月~
4月8日に政府から出された緊急事態宣言が解除され、実際に店頭に出向き、商品を購入した人のクチコミが続々と投稿されています。

■考察:パーソナルカラー重視のトレンドに「逆張り」

リップエディションのクチコミにおいて、「パーソナルカラー関係なく使える」というワードが多く見受けられたこと、これがバズ要因を考える上で大きなカギとなります。

・「パーソナルカラー」その功績と弊害
名前の通り、自分に似合うカラー系統のことです。髪色・肌色・瞳の色等の生まれ持った要素から割り出します。大きく分けるとイエローベース(黄みよりの色が似合う)とブルーベース(青みよりの色が似合う)で、その中でさらに、彩度や明度を加味し、春、夏、秋、冬で分けられるのが一般的です。

画像5

(出典元:https://www.beaute-p.com/eyelist/7736/)

美容垢が多くあらわれた2017年頃より、Twitter上にてパーソナルカラーに合わせてコスメを選ぶべき!という風潮が生まれました。「イエベ春大勝利(イエローベースの春に該当する人にとても良く似合うという意味)!」などのワードはこうした背景から生まれています。パーソナルカラーは、主観や思い込みの影響を強く受けることから自己診断が難しく、色彩検定やカラーコーディネーターの資格を保持している人に判断してもらうことで正確な結果が分かると言われています。そのため、カラーサロンや、百貨店のコンサルティングサービスへ予約が殺到するなど、新たな消費を生み出しました。百貨店の大丸が比較的安価(3000円程度)でパーソナルカラーを診断してくれるため、今でも予約枠は争奪戦となっています。

パーソナルカラーの考え方が浸透していくにつれ、プロフィールに自分のパーソナルカラーを記載したり、アカウント名自体を○○@ブルべ夏と設定しているような人も多く見受けられるようになり、美容垢にとっていまやパーソナルカラーは自分を語る代名詞や、「肩書き」として機能をしています。

画像6

(これは恥ずかしながら私が使っているTwitterアカウントです。一切タメになることはつぶやいていないリアルアカウントですが、たまにコスメを語るため、パーソナルカラーを記載しています。これを書くことで、同じパーソナルカラーの人がツイートを見に来てくれたりします)

パーソナルカラー重視の流れはメーカーやブランドの商品開発やプロモーション手法にも波及しています。情報や新商品にあふれているこのご時世では、単純にアイテムの特徴や色味を紹介するだけでは消費者に選ばれにくいです。「この色はイエベ向け、この色はブルべ向け」という情報を提供することにより、消費者に「じゃあイエべの私はこっちを買えばいいんだ!」と商品を手に取るきっかけを与えることが出来るため、パーソナルカラー訴求を行うようなブランドサイトのコンテンツや店頭POPもめずらしくありません。

画像7

(出典元:https://maquillage.shiseido.co.jp/rougeselection/top)

資生堂マキアージュはここ最近、パーソナルカラー訴求に力を入れている人気のブランドの1つです。瞳の色に合わせたブラウンアイシャドウ(私の普段メイクに大活躍しています…!開発の皆さまに大感謝)を発売したり、診断コンテンツを充実させています。マキアージュのアイテムはベーシックでナチュラルな仕上がりになるものが多いので、パーソナルカラーの訴求がばっちりハマるブランドだと思います。

しかし、似合うコスメや選ぶべきコスメが分かる反面、パーソナルカラーにとらわれすぎるあまり、コスメやメイクを楽しんだり、冒険することが出来ない…という新たな悩みが生まれてしまったような人も少なくありません。例えば昨年流行した、テラコッタカラーやブラウンリップはイエローベース向けの色ですし、パープルのリップはブルーベース向けの色です。雑誌や広告のビジュアルを見て興味を持っても、「自分には似合わないのでは…」と手を伸ばしてみることが出来なくなってしまった、という声はよく見かけます。

そんな中、30年の歴史があるブランドのエテュセが、手の出しやすいバラエティストア価格で、「ファッション感覚で好きな色を身につけられるように」という思いで発売したリップエディション。「高発色ながら、透け感もある」という機能性が、新ブランドメッセージである「今から変わるよ。なりたい私に。」とうまく掛け合わさった結果、今まで好んできたものとは別のカラーに挑戦して、新しい自分に出会う楽しさを思い出させてくれるアイテムとして語られたことは、バズの要因として大きいのではないかと考えています。

■結論:エテュセ リップエディション(グロス)のバズ要因

以上の理由から、エテュセ リップエディションのバズは

モノ軸:高発色かつパーソナルカラーに関係なく使えるリップグロス
ヒト軸:美容垢たち
コト軸:「エテュセ」30周年記念の大胆なブランドリニューアルという話題性

の3つの軸から考えることが出来ます。

画像9

発売前のティザーでブランド世界観重視の情報展開→先行発売でGETした人たちのクチコミによって機能性に関する情報が拡散→優秀コスメとして評判定着が実現した、という事例だと言えるでしょう!

次は、「オルビス」のアイテム、バズストーリーをご紹介します!

--------------------------------------------------------------------------------------MimiTVへのご相談はこちらまで
info@mimitv.co.jp
--------------------------------------------------------------------------------------


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?