見出し画像

お友達のお父さんと温泉へ

 私が子供の頃に両親が、共働きの若夫婦の子育てのお手伝いをしていた時期がある。おじさんが国鉄でおばちゃんは看護師さん。私もそこの3人の子供たちと一緒に遊んでやったことを覚えている。もちろん私もご夫婦から随分と可愛がって貰った。おじさんは私が国鉄で働く間も、何くれと世話を焼いてくれた。

 おじさんは民営化後に退職、起業して学習塾から高齢者のデイサービスを切り盛りするようになった。事業も軌道に乗って、後進を子供たちに託して、さあこれからゆっくりと好きなことをと思った矢先に大病を患い急逝。その後は残されたご家族との年賀状のやり取りだけのお付き合いとなって、義理を欠いたままになっていた。

 ところが、お友達から友達のお父さんが老人ホームに入っている93歳のお父さんを温泉に連れて行ってやりたいけど、女だし一人では無理、なんとかならないかと相談を受ける。いい話ではないか。知らない友達でもなく、逆にお世話になったこともあるお友達の頼みなら、誰あろう私が引き受けましょうとお返事する。

 お父さんが入居している老人ホーム「赤とんぼ」への事前訪問が決まり、行ってみると、施設長が「あらはじめちゃん」、私もつい「あらおばちゃん」と喜びの再会となる。おじさんの意思を継いで、奥さん子供たち3人で切り盛りしていると言う。懐かしいあの頃の話にも花は咲きながら、お父さん温泉入浴の話はトントン拍子で進んでいった。

 そして今日が別府は鬼石温泉への入湯の日となった。台風も進行を早めることなく、日差しも弱く、時々の涼を呼ぶ程度の雨もあって、最高の温泉日和、いくらなんでも私一人では無理なので、友達の20代の息子にも手伝って貰って、お父さん至福の笑顔で入湯となった。お父さん曰く、極楽じゃと一言、こんな笑顔を頂けるのなら、お父さん次はまた秋に行きましょうということで、帰りは湯上り生ビールとしゃぶしゃぶで心も体も満腹となった。ああ、なんとも楽しい温泉ボランティアの一日だったなぁ。
20230805

ここで頂く幾ばくかの支援が、アマチュア雑文家になる為のモチベーションになります。