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鴻巣友季子『文学は予言する』新潮社

翻訳者にもいろんなタイプがいて、訳したいものを黙々と翻訳する人もいれば、評論の世界に進出する人もいる。この人もそういう野心を持っている人だなぁと前から思っていたけれど、最近はもう翻訳家よりも書評家の顔をしているなぁ。この本にはそのやる気が全開だ。これまでの書評をまとめたものだが、テーマごとにまとめてちょっとした教科書的な雰囲気。まったくよく書かれていて、学校の優等生のような趣だ。そつがない。でも優等生っぽいので、あっと驚く斬新な視点はない。(と、わたしは感じたんですけど、単に自分が理解できていないだけかもしれません。)

まぁこういう書き方をしているので分かっていただけると思うが、わたしは黙々と翻訳する人の方がどっちかというと好き。好みの問題です。翻訳家に自分のカラーを強く出してほしくないのだ。物語に没頭する邪魔になる気がするので。

でもこの本、勉強になるのはたしか。海外文学を中心とする<いま>を知りたければ効率よく知ることができる。第1章ディストピアと第2章ウーマンフッドは「きちんとまとめました」という感じだったが、第3章他者は知らないことも多くて面白く読んだ。やる気にあふれる優等生のイメージをわたしは持ったが、優等生であることは誰にでもできるものではない。尊敬すべきなのである。



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