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大きな青いチョーク【短編】

雨上がり、すっかり乾いたアスファルトの道を
下を見ながら歩いていたら
大きな青いチョークが落ちていた。
クッキーの生地を伸ばす”めん棒”くらいの青い棒。
わたし、なんでチョークって分かったのか分からないけど
「あ、チョークだ。
道路に何か描こう」
って思ったのですぐにしゃがんで拾った。

何を描こう?
そうだ、とりあえず丸を描こう。
わたしは一つ、青い丸を描いた。
まるい形を描いたあと、中をぐりぐり青く塗った。
できあがった青い丸をじっと見た。
何だか分からないな、と思ったのでもう一つ描いた。
二つの丸をじっと見たけど、まだ何か分からなかった。
もう一つ。
もう一つ。
わたしはチョークが大きくて安心なので
調子にのってどんどん青い丸を描いた。
少し飽きたら、小さい青い丸を描いた。
いっぱい描いた。
自分の周りじゅうに描いた。
それはちょっと雨の日を思わせた。
大きい丸をみると、水たまりのようにみえた。
青はやっぱり水だな。
わたしはもっと大きく描いて
池にしよう、それから海も描こう、と思ったが
ずっとしゃがみ込んで描いていたので
足が疲れてしまった。
立ち上がって足を伸ばした。
ついでに上から
自分が描いた青い丸を見下ろした。

何もなかった。
小さな透明な水たまりが一つ、白い雲をうつしていた。
のぞくとわたしの顔もうつった。
手に持っていた青い棒はよく見ると
リレーのバトンになっていた。
どうしてこれで絵が描けたんだろう?
わたしがじいっとバトンを見ていると
「パス!」
と声がしたのでつい声のほうに差し出すと
青いはちまきをした誰かが受け取って
水たまりをぱしゃりと踏んづけて
その中に消えてしまった。
そのとたん、雨がざあっと降り出した。
わたしは慌てて駆けだした。

(了)

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