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ドイツの野外ミュージカルコンサート

私が毎年楽しみにしている野外コンサートがある。
それは、Dinslakenというところで毎年夏に開催されるSommernacht des Musicals(ミュージカルの夏の夜)というコンサートだ。
私がまだ日本にいて、インターネットの海を彷徨っていた頃に、いくつかあったドイツ現地のミュージカルファンのHPの中でこのコンサートの動画がアップされていたのを見て、どうやらこれはコンサートで歌われたらしい、毎年やっているらしい、という予想をして、いつか行ってみたいと思っていたコンサートだった。

そのときの映像がこれ。
当時のHPは今はもうなくなり、YouTubeに転載されていたけれど、エッセンのエリザベートでフランツ・ヨーゼフを演じていたMichael Lewisが、Die Schatten werden länger(闇が広がる)のルドルフパートを歌っているのだが、トートパートを歌っているのが、John Partridge。
DVD版キャッツ (注:映画版ではなく、98年のロンドン版)でラムタムタガーを演じていたあの人だ。

ラムタムな人だからして、とにかくエロい。
当時、ト、ト、トートが舌舐めずりしている…!!と衝撃を受けたのも懐かしい。
そんなお祭りっぽい企画、生で見てみたいと思っていたのは遠い昔で、2008年の10周年記念以降は、毎年来ていることになる。

ドイツでは、ここ以外でも野外コンサートや野外公演が数多く上演されるが、天候には勿論左右される。
屋根付きの劇場もあるけれど、多くは屋根がなく、傘も持ち込み禁止のところが多い。
では、どうするか?
雨合羽を持っていくのである。
更には友人からの勧めで、レインパンツも用意している。
そして、大抵椅子やベンチは座り心地が悪いので、クッションも必要になる。
雨が降ったらクッションも濡れてしまうので防水シートも一緒に入れて、夜中は冷え込むときもあるので、薄手のダウンやショールも持って、と毎回かなりの大荷物になるが、殆どの人が自前のクッションを入れたIKEAのブルーのバッグのような大きい袋を持って入場することになる。

そして、座席に着くと、自分の席をきっちりセッティングする。
ひどいときには、ビッグサイズの方々に挟まれた真ん中の人が、殆ど座るスペースがないというギャグのような光景も目にしたことがある。
それを防ぐためにも、座布団代わりのクッションは有効なのだ。

 背中も痛くなるので、私は背もたれ用兼寒くなったときのためにフリースの膝掛けを背中に当てている。
これは去年の写真だが、友人が薄手のクッションを貸してくれたので、二重になって楽だった。

クッションでしっかり座席確保

また、去年のコンサート時は、コロナ禍で一定の間隔を空けて座らなければならなかったので、空けるためのスペースに小さい植木鉢の入ったラックが引っ掛けられていて、飲み物入れとスペース確保の両方の役割があったのだが、これは見た目にも緑の植物があって綺麗だし、いいアイディアだと思った。

飲み物入れとスペース確保のためのラック
ベンチなのでくっついて座ることのないよう考え出されたアイディアは見た目にも良い

さて、ここまでしっかり準備しても、実際に雨に降られたことは数度、しかもパラパラ程度で、雨合羽を羽織らなくても大丈夫なくらいだった。
それでも、しっかり準備していくのは何故か。
それは、「伝説のゲッセマネ」と呼ばれた瞬間があったからだ。

伝説のゲッセマネ、それは2004年に遡る。
ジーザス・クライスト=スーパースターに何度も出演したことのあるYngve Gasoy-Romdalがゲッセマネを歌い始めると、だんだん雲行きが怪しく、風も強くなってくる。
曲が高まっていくのと同時に、雨も降りだし、途中のシャウトの部分で、タイミングよく雷が!
後半は雨に打たれたジーザス、という、まるで演出されたかのような舞台が出来上がったのだ。

私は実際にはこの舞台は見ておらず、後から映像で見たのだが、その場にいた友人たちは、忘れられない瞬間だったと未だに言っている。

因みに数年前、彼が主演のモンテ・クリスト伯の野外公演を見に遠征に行ったのだが、なんとそのときも途中から雷雨に!
このときも、雷が効果的な場面ではあったものの、その後、彼は私によって「嵐を呼ぶ男」認定されましたとさ。

私が思う野外コンサートや野外公演の醍醐味は、日が長いヨーロッパで、だんだんと暮れ行き真っ暗になっていく中での舞台の見え方だったり、舞台装置のように使われる自然だ。
天候によっても見え方は日々違うだろうし、その面白さが魅力のひとつでもある。

今年の野外コンサートは残すところあと一回。
そして、来年のチケットはもう確保している。
夏休みは劇場オフシーズンだが、次はどんなものが見られるか、劇場の中とは違う期待を胸に抱く私に、野外コンサートという楽しみが、また待っている。

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