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ハンガリー 音楽と温泉と | ミュージック・ジャーニーvol.65

皆さん、民音ミュージック・ジャーニーへようこそ。
今回は、中央ヨーロッパの共和制国家ハンガリーへ、駐日ハンガリー大使館の皆様とともにご案内いたします。

ハンガリーは日本の1/4の大きさで、7つの国に囲まれた内陸国です。国土の中央を雄大なドナウ川が縦断し、西部の平原には古代ローマ時代にさかのぼる古くからの都市が栄えていきました。また西部には、中央ヨーロッパでも有数の大湖があり、各地には温泉が湧き出ていることから、温泉大国としても知られています。

気候は大陸性で四季があり、夏はカラッと暑い一方、冬は北海道より緯度が高いにもかかわらず気温はさほど下がらず降雪量も少なめです。

ハンガリーの旅のしおり
・ドナウ川のディナークルーズでブダペストの夜景を楽しもう
・温泉都市ブダペストのセーチェーニ温泉で旅の疲れを癒そう
・ハンガリーの不思議な動物たちに会いに行こう(マンガリッツァ豚、プーリー、コモンドール)
・伝統工芸品「カロチャ刺繍」と「マチョー刺繡」を見つけよう

ハンガリーの主要な道路や鉄道は、首都ブダペストを中心に東西南北へ放射線状に広がっています。そこで、今回はブダペストを旅の拠点にして、各地を音楽とともに巡っていきましょう。

“ドナウの真珠” 首都ブダペスト

首都ブダペストは、ドナウ川を挟んで西側のブダ地区と東側のペスト地区を合わせた都市です。19世紀後半から社会が安定し経済も発展したオーストリア=ハンガリー帝国時代の建物が多く残り、街全体の美しさや歴史的価値によって“ドナウの真珠”とも呼ばれています。「ブダペストのドナウ河岸とブダ城地区およびアンドラーシ通り」は、1987年と2002年に世界遺産に登録されています。

多様な建築様式が融合した国会議事堂

1902年に完成した国会議事堂は、さまざまな建築様式が融合した荘厳な外観に特徴があります。中央のドームはルネサンス様式、尖塔はネオゴシック様式、内部はバロック様式と絶妙なバランスで構成され、世界で最も美しい国会議事堂と呼ばれています。

大胆な少子化対策
ハンガリーは1981年から続く人口減少に対して、とても大胆な少子化政策を行っていることでも知られています。その内容は「3年間の育児休暇」「子どもが 4 人以上いる母親は生涯所得税ゼロ(1〜3人の場合も子どもの人数に応じて段階的に減税)」「子どもが1人以上の家庭の不動産購入補助」など、いずれも大胆かつ大規模なものです。

その結果、子どもを望むハンガリー人は過去10年で2割増加、2021 年には結婚数が 35 年ぶりの高水準と着実に具体的な成果が表れ始めています。

ハンガリーのシンボル セーチェーニ鎖橋

ブダ地区とペスト地区を結ぶ重要な橋であるとともに、夕暮れ時や夜にライトアップされた際の美しさから、“欧州の宝石箱”とも呼ばれるハンガリーのシンボルでもあります。夜空にまばゆく光る鎖橋はまるで真珠のようであり、ドナウ川でのディナークルーズは、そんなブダペストの夜景を楽しめる贅沢なひとときです。

人々の癒しの場 セーチェーニ温泉

温泉都市とも呼ばれるブダペストには、世界有数の温泉が点在しています。たとえば、「セーチェーニ温泉」は地下1000メートルから自噴する湯を利用した温泉であり、広大な敷地内に3ヶ所の温水プール、温度の異なる15の屋内風呂があるヨーロッパ最大級の温泉施設です。

温泉とは言っても水着の着用がルールであり、綺麗な建物や景色を楽しみながらゆったりと過ごせるため、家族やカップルなどで楽しめるプールリゾートといったイメージです。温水プールでは、青空の下で半身浴をしながらチェスを楽しむのも地元の人々のたしなみとなっています。

ハンガリーの自然と伝統工芸

ハンガリーには各地に観光名所が点在しており、どれも一度は足を運んでみたい魅力を持っています。今回はブダペストから南西部、南部、東部の順にハンガリーの見どころを巡りましょう。

南西部:エメラルドグリーンのバラトン湖

ブダペストから南西に130kmほどの位置にあるバラトン湖は、中央ヨーロッパ最大の広さを持ち、エメラルドグリーンに輝く湖です。付近はブドウ畑に囲まれた高級リゾート地になっていて、美しい水面を眺めながら味わうワインは格別です。

南部/東部:カロチャ刺繍とマチョー刺繍

ハンガリーには、地域ごとに独特の刺繍文化が根付いています。南部の古い街カロチャで紡がれてきた「カロチャ刺繍」は、白い布地にカラフルな花や植物をあしらう製法が特徴です。

また、ハンガリーの北東部、特にメゼーケベジュドで発祥した「マチョー刺繍」には、200年にもわたって伝承されてきた装飾技術が用いられています。
その美しさから、「マチョー刺繍」は、2012年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。

東部:めずらしい動物に出会える ホルトバージ国立公園

ホルトバージ国立公園は、約800平方kmもの広大な面積を持つヨーロッパ随一の草原地帯であり、ハンガリーの世界遺産の1つでもあります。ここでは、ほかでは見られないようなめずらしい動物が生活しています。

なかでもハンガリー人の先祖が騎馬民族として原住していたウラル山脈南麓から現在の地へ移動する際に連れてきた古代種の羊「ラッカ」は、穏やかな羊のイメージを覆すような闘争心むき出しのフォルムが特徴的です。

ハンガリーの不思議な動物たち

マンガリッツァ豚

・国宝のマンガリッツァ豚
羊のようにカールした長い冬毛が特徴的で可愛らしい豚です。
栄養豊富でとろけるような高級感のある肉質を持ちながら、他の品種に比べ生産性に乏しかったなどのことから1991年には200頭以下まで数を減らしてしまいましたが、政府の飼育管理によって生息数が回復しました。
2004年には国宝にも指定され、現在では現地のレストランなどでも食べることができます。

・プーリー、コモンドール

モップのように長い毛を持つハンガリー原産の犬です。
羊毛のようなアンダーコートにウェーブしたオーバーコートが巻きつき、年齢を重ねるとともにひも状に縮れていきます。

ハンガリーの伝統料理と国民のお酒「パーリンカ」

ハンガリー料理にもっとも欠かせない食材といえば「パプリカ」です。パプリカの祖先は南米原産の唐辛子であり、ヨーロッパに伝わった後、1500年頃にハンガリーに伝わったと言われています。

ハンガリーでの品種改良によって辛みのないパプリカが見いだされ、辛みのあるパプリカと並んで広く使われるようになりました。特に乾燥させて粉状にした粉パプリカは、伝統的なハンガリー料理に欠かせない調味料となっています。一方、生パプリカは朝食の定番であるとともに、煮物料理などにも幅広く活用されています。

もう1つ、ハンガリーを代表する文化として、蒸留酒「パーリンカ」が挙げられます。アンズや洋梨、プラム、チェリーなどの果物が原料であり、“飲む香水”とも表現されるほどの香りと、果実由来の豊潤な味わいが楽しめるお酒です。

ハンガリーの音楽文化

民音では、ハンガリー国立民族舞踊団やハンガリー・ジプシー・アンサンブルをはじめ、これまでさまざまな文化交流を行ってきました。

ハンガリーが生んだ音楽家

ハンガリーは多数の音楽家を生み出した地でもあります。19世紀のヨーロッパ中を虜にした「リスト・フェレンツ(フランツ・リスト)」(1811-1886)、民族音楽の研究・収集をした「バルトーク・ベーラ」(1881-1945)や「コダーイ・ゾルターン」(1882-1967)など、世界的な音楽家がハンガリーから誕生しています。

また、ロマ音楽をベースにした超絶技巧のバイオリニスト「ロビー・ラカトシュ」(1965-)をはじめ、現在でも広く活躍する音楽家を輩出し続けています。

首都ブタペストにはハンガリーを代表する文化機関の「ハンガリー国立歌劇場」があり、同国最古のオーケストラ「ハンガリー国立歌劇場管弦楽団」や「ハンガリー国立バレエ団」、世界的に有名な歌手などによる公演が行われています。

1884年に創設された歴史ある歌劇場は、大規模な改修を経て、2022年3月に再オープンしました。ここでは、現在の歌劇場の様子を映像でご覧ください。

リスト・フェレンツとハンガリー
『愛の夢』や『ラ・カンパネラ』など数々の名曲を残したリストは、当時ハンガリー王国であったライディングという小さな村に生まれました。ここは、現在ではオーストリアの一部になっており、彼自身も幼い頃にウィーンやパリへ拠点を移したことから、ドイツロマン派に位置づけられることが多いです。

しかし、彼が祖国に尽くした形跡はハンガリーのさまざまな箇所に残されており、ブダペストに創立した音楽の伝統校「リスト音楽院」もその1つとされています。また、ピアノの超絶技巧曲『ハンガリー狂詩曲』はハンガリーの民族音楽やロマ音楽に影響を受けた楽曲として有名です。

幼い頃から各地を演奏会で周り、晩年はワイマール、ローマ、ブダペストの3つの都市を同時に拠点とした彼は、母語こそ上手ではなかったものの、ハンガリーは祖国と公言しはばかることはありませんでした。

最後に、駐日ハンガリー大使館が推薦する4組の音楽家の演奏をお楽しみください。

  1. Cantemus Choral Institute(カンテムス合唱研究所)

あらゆる世代の優れた合唱団を輩出する “カンテムス合唱ファミリー”をまとめる組織。各合唱団に所属するメンバーのほとんどは、ハンガリーのニーレジハーザ市にあるコダーイ小学校で音楽教育を受けた生徒で、1975年に同校で初めての合唱団が結成されてより、ショマ・サボーが指揮者・教師として指導している。

ヨーロッパ各国をはじめ、オーストラリアやカナダ、日本、韓国、南米、アメリカなどでのコンサート開催。コンクールやフェスティバルへの参加など幅広い活動を通して、国際的な賞を数多く受賞している。

2.Tímár Együttes / Csillagszemű“Lakodalmas” - Wedding traditions of Hungary

Dances from Szék

ハンガリー民族舞踊の第一人者で、舞踊団の団長を務めるティマール・シャーンドル氏の名を冠し、1993年に設立された舞踊団。ティマール・メソッドと呼ばれるダンス教授法をもとに、民族舞踊の楽しさを若い世代に伝えることを目的として活動している。シャーンドル氏は、1978年から日本でハンガリーの民族舞踊を教えるとともに、同舞踊団は日本各地の20以上の都市で公演を行っている。

3.Budapest Saxophone Quartet(ブダペスト・サクソフォン・カルテット)Budapest Saxophone Quartet & David Kanyo play Morricone's film music

Budapest Saxophone Quartet plays Mike Curtis: Ivan na donka dumase

1995年に、当時リスト音楽院の学生だった友人4人で結成されたカルテット。結成から現在に至るまで同じメンバーで活動し、日本をはじめ25ヵ国以上で合計2000回以上のコンサートを開催。
ハンガリー、ドイツ、イタリアで権威ある6つのコンクールで賞を受賞するともに、2009年には 現代音楽の最高レベルに贈られるArtisjus賞を受賞した。

皆さん、ハンガリーへの音楽の旅はいかがでしたでしょうか。
音楽の旅はまだまだ続きます。次回もどうぞお楽しみに。

協力、写真提供:駐日ハンガリー大使館

Min-On Concert Association
-Music Binds Our Hearts-


ご案内

この記事は英文での提供もしています。
https://www.min-on.org/14247/min-on-music-journey-no-65-hungary/

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