ランプのない部屋

学校から帰宅して、アパートの廊下を歩く。
今日は何を食べようか、コンビニのカツ丼か、はたまたインスタントラーメンか。
 玄関の前まで来ると、不意に違和感を感じてしまう。何か忘れているような、でも、財布とスマホはカバンの中に入っているから、特に問題ないだろう。ドアを開ける。
 

 違和感の正体が判明した。

部屋の中の電気が消えていた。
トイレから覗くリビングの照明が消えていた。
四六時中付けているベッドルームの電気が消えていた。
昼間戻った時のPS4のメニュー画面が消えていた。
五月蠅い冷蔵庫の排気音さえも消えていた。
手元の照明は何も無い。
スマホのバッテリーは10%もない。

街灯の明かりを頼りに電気料金の案内を探す。見つけた。まだ払えるみたいだ。よし、コンビニに行こう。金はある。たばこもある。夕食は途中の居酒屋でいいだろう。明日は友達と飲むから胃腸を膨らませるために、たくさん食べれるとこにいこう。

七、八年ぶりにスマホを見ないまま、夕食をした。お腹は膨らんだが、部屋のことを思いだして憂鬱になる。
外より暗い部屋に戻る。
 

暗闇に包まれて、建物サイズの棺桶に入っている気分がする。死んだサバやサンマの缶詰の中ってこんな感じなんだろうか。もっと憂鬱だ。電気が戻るまで二日かかる。自分一人だけが電気のない時代にタイムスリップしている。夜が夜としてしっかり活躍している頃に戻っている。
 

あぁ、冷蔵庫の排気音よ、早く戻ってこの静寂を破っておくれ。

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