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学習者が「これ、使えそう!言いたい!話したい!」と前のめりになる授業の準備のコツ❷

こんにちは。日本語教師への復帰準備中の元日本語教師です。今日は、コツ❷です。コツというか、準備するときに考えていることのまとめ的なものです。前回の投稿で、学習者に言いたいことは必ずあること、「使えそう!言いたい!」と思えること(=ジブンゴトになること)が大事なこと、そのために教師が考えるべきこととして「使いそうな場面や表現を考えて吟味することの大事さ」について書きました。

今日は、その他にも考えることについていくつか、書いてみます。

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その表現のどこまでが必要?チャレンジできる範囲は?ゴールをどこにするか

例えば、「vてもいいですか?」を中心に許可求めの表現を練習したい時、動詞も少ない、やりもらいが苦手な学習者に、よく使うからといって、新しい動詞をたくさん出して使わせたり、「ちょっと確認してもらってもいいですか」「これ、もらってもらってもいいですか?」のようなものをサラッと出したりすると、練習がうまくできなかったり、大混乱に陥ったりする。

大学で教えていた頃、私が教えていた学習者の多くは「大学院の研究室で多くの時間を過ごす人たち」だった。地頭が良く、チャレンジングな精神の人が多く、質問も本当によくした。彼らは習った日本語や母語で自分の話をしてくれることも多く、普段の生活や研究生活の話もよくしてくれた。授業作りにもその話を生かして臨んでいた。
あるクラスの学習者たちは、初級レベルながら応用力も高く、難しい動詞でも使う動機があれば積極的に覚え、使いたがることが多かったので、「こんな意味のこと言いたい!」」と言われれば、新しいものでも臨機応変に提示して進めることが多かった。ただ、中には新しいものが出てくると、頭がそっちに引っ張られてしまう人、組み合わせが苦手で処理しきれない人などもいたので、メンバー構成やその日のコンディションによっても都度都度の調整は必要だった。

少し脱線したが、ゴールの設定、例えば、「やりもらいを入れた「Vてもいいですか」は、聞かせてどんな意味かわかる程度でよし。でも、習った動詞では自分で形を作って言える、場面に合わせた表現で発話して、会話が続けられる」など、目安となるゴールを設けておくことは授業準備をする上でもとっても重要だ。

時間はどのくらい使えるだろうか?


そして、同じくらい大事なのは、時間だ。時間は必ず限られているので、その中で目指せるゴールに向かっていくプロセスを作らなければならない。導入、練習、確認の何にそれぞれどのくらい時間をかけるか、さらに練習の中の何にどのくらい時間がかかりそうか。
先ほどの「vてもいいですか」なら、全部で45分ほど使えるとしたら、導入に5〜10分、形の練習で7、8分、文作りで5、6分、場面練習10分、会話10分、確認3分、と大体の目安をつけていく。これも決めていく順序はいろいろあると思っていて、実際私の場合は絶対にやらなければならないことと時間の目安をある程度配置したら、残りの時間は練習したい内容を決めてから、最後に時間を割り振っていくことが多い。もちろん計画なのでその通りにいかないことも多いが、時間配分とゴールを考えてメモしておくことで、時間がなくなった時も余った時も、「あとの時間でゴールに向かうにはどうする、私?」と考える助けになるのは確実。

大ごとじゃなく、小さな単位で


時間配分のことにも関わるが、練習する時の単位は、小さいと良い。壮大な練習には説明と学習者側の準備にも時間がかかるものだ。特に形や定着の練習なら1文作らせたり、3行くらいの短いターンの会話などミニマムですぐ始められるシンプルなものが良い。私は発話を増やしたい時、とにかくたくさん使いそうな表現と場面を考えてみて、応用が効きそうなもの、チャレンジさせたいものが決まったら、まずは3行くらいのミニマムな会話仕立てにしてみることが多い。

例えば、「vたいです。」
(研究室の先輩と、研究室で)
 先輩:疲れましたね。/さむいですね。/暑いですね。
  私:そうですね。
    早く帰りたいですね。/スープ、飲みたいですね。/アイス、食べたいですね。
 先輩:そうですね。

反応が悪かったら次へ行ける軽やかさで


時間のこともそうだが、小さな単位でさまざまな練習のパターンを用意しておくと、いざ始めてみて「あれ?あまり響いてないかな?なんかイメージできてないかな?」と言うときにも、「はい、次、次」とテンポ良く進める。一生懸命考えたから、教師としてはやってみたくても、学習者の様子からぐずぐず続けていても仕方ないと判断できたら、固執せず次へ行く方がいい。「なんだろう?この時間…」と学習者が思い始めたら授業の空気が重くなって、学習者の口も重くなるからだ。そもそも、クラスにはさまざまなバックグラウンドを持つメンバーがいて、みんながみんなピンとくる状況、楽しく練習できるもの、というのは難しいかもしれない。だからこそ、いろんなものを考えておくといい。

クラスで流行るフレーズも発話チャンスが必要


どんな練習、どんな活動、何がヒットするかわからないが、時々みんなが口々に真似したくなるようなフレーズが生まれることがある。そうなったら、みんな面白がって言いたがって、みんなの頭に残って、クラスの一体感も出る。これも、小さな単位でいろいろな練習があると起こるチャンスが増えるだろう。「この練習、なんか何言えばいいのかわかんないな」という学習者がいても、次の練習では輝けるかもしれない。誰もが考えてチャレンジして言ってみる機会が増えると、面白いフレーズの発生率も上がる。

今日はここまで。
また書きます。


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