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存在する権利をなくした記憶


例えば、下北沢でよく赤ワインを飲んだカフェとか

予定をパスして、嘘つきの2人同士で行ったお気に入りのラブホテルとか

ラブホテル明けの朝に、コーヒーと腹ごしらえのために行った渋谷のセガフレードとか

さようならをした駅構内の階段とか

夜中に手を繋いで歩いたどっかの高校の前とか

そういう、私たちのお気に入りだった東京が

オリンピックの開発とともにどんどん消されていって。

美化ばっかりされていく記憶も埋め立てられて、行き場を失っていってしまったから

もういよいよ私とあなたは一緒にいることなんてできないんだよ、と言われているようで

閉ざされたシャッターを眺めながら、記憶の所在地を消した。



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