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誰と働くかが本当に大切だと思った話

皆さん、こんにちは。今日は、カーネギーメロン大学に博士学生として留学をしている中で起こった経験について書きたいと思います。

教授とお試しで短期間一緒に働くことができるローテーション制度

アメリカの博士課程プログラムではよくあるのですが、私のプログラムでは、研究室ローテーションという仕組みがあります。これは、一年目の学生は最初から決まった研究室に配属をされる訳ではなく、何人かの教授と短期間(3-4ヶ月程度)お試しとして一緒に働き、その経験に基づいて最終的に配属される研究室を決めることができるような仕組みです。

アメリカの博士過程は学位取得までに5年以上かかるものがほとんどなので、どの教授と一緒にどのような研究に取り組んでいくかは非常に重要な要素となります。一方で、実際に一緒に働いてみなければ、なかなか教授との相性や、実際に関わることができる研究プロジェクトについて具体的なイメージを持つことはなかなか難しいです。そのような課題を解決するためのこのローテーション制度は非常に良い制度だなと思います。

私の最初のローテーションの指導教官

このようなローテーション制度を使いながら、私はこの9月から、カーネギーメロン大学のByron Yu教授とMatthew Smith教授と一緒に働き始めました。元々このプログラムへの進学を決めたのも、彼らの取り組んでいる研究に興味を持ったことが非常に大きかったので、実際に一緒に働くことができ、今でもとてもワクワクしています。

そして、どのようなプロジェクトに取り組んでいきたいかを議論をしている中で、私がハッと気付かされるような出来事が起きたのでした。

高いゴールを当たり前のように設定してくれる人の貴重さ

プロジェクトについて議論をしていく中で、私は今の自分の能力と、現状彼らの研究室で行われているプロジェクトを結びつけ、どのようなことができるかを考えていました。

特に、研究室にいる一人の女性研究者の方に指導をしてもらいながら働くことが決まっていたので、彼女の研究の一部を手伝うようなことをできれば一番良いなと思っていました。というのも、ローテーションは短期間で終わってしまうので、その中でも何かを形にしようとすると、現状あるもの x 自分できることの組み合わせが次のステップも明確にイメージができるし、一番効率が良いと考えたからです。

しかし、議論をしていく中で、Byron Yu教授が、それだと私の将来の研究に繋がらないと話をし始めました。彼の話はざっくりとまとめると以下のような話でした。

このローテーションは短い期間で終わるけど、この期間で成し遂げるべきことは、この短期間で完結できることを考えて行うことではない。
このような方針で進むと、もちろん何かしらの経験はできるし、学びもあるだろう。しかしそれは最終的にはあくまで(女性研究者さん)のプロジェクトを少し手伝うだけに終わり、(私)の先々の研究を形作るものにはならない。言い換えれば、この形で進んだ場合、ローテーション期間を通じて得たものは、(私)の今後の大きな研究実績には繋がっていかない。(私)は、この博士課程を通じて世界に大きな影響を与えることができるような研究をするためにこのプログラムに来たのだから、このような進め方はお勧めしない。

そうではなく、このローテーション期間でゴールとして目指すべきことは、この先、もし私がこの研究室で働き続けることを決めた場合に、しっかりとした研究成果に繋がるようなプロジェクトのアイディアを明確にすることだ。それを達成するために、(女性研究者さん)のプロジェクトと関連のある作業に取り組むのはもちろん良いが、あくまでゴールは私が本当に興味があり、社会にインパクトを残せると思うような研究テーマを今から考え、それを明確にしていくことだ。

私はこのような彼のコメントを聞いた時、衝撃を受けました。私は、このローテーション期間に入ってから、目の前のことしか見えておらず、今見えている世界の中で物事を完結させようと考えていました。今考えるとすごく視野が狭かったし、自分が世界的に活躍をできる研究者になるために道筋を見据えた思考ではなかったなと思います。

一方で、Byron Yu教授は、著名な学術雑誌にも何本も論文を書いているような先生なので、そのレベルにこの子を引き上げてあげるために今何が必要かをすごく考えてくれていたのだなと思います。今できることじゃなくて、世界に通用するレベルで物事を考えるのだと間接的にですが、アドバイスをもらったような気がしました。

高いレベルの環境にいると自然と自分のレベルが上がる

これは今回に限らず私がこれまでの人生を通じてずっと思ってきたことなのですが、人は才能以上に、どのような環境で誰と過ごすのか次第で劇的に変わると思っています。

私の場合、例えば日本で研究を続けていた場合、まずは日本の学会に成果を出せるようなところまで頑張り、それを何度か経験した上で、世界レベルの研究成果を出せるように頑張ろう、というところから始めていたのではないかなと思います。もちろん、日本でも世界で通用する研究をされている先生方や研究者の方はたくさんおられますが、その数はアメリカに比べると圧倒的に少ないと思います。

しかし、今の環境では、世界のトップクラスで通用する研究をすることが当たり前で、それを当たり前とする価値観を共有している人たちに囲まれています。そのような中で生活をすることは最初は非常に苦しく感じるのですが、気づくとそのような環境にいることに慣れ、自分も同じような価値観を共有できるようになっているように思います。

このような恵まれている環境に今いることができていることに改めて感謝をし、また世界的に通用するレベルに自分をしっかりと引き上げることを意識しながら取り組んでいないといけないなと思った経験でした。

今日は以上です。

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