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ヴィム・ヴェンダース作品 『Perfect Days 』とジム・ジャームッシュ作品『パターソン』と


役所広司さんがカンヌ映画祭で主演男優賞を受賞したので話題になった
『 Perfect Days 』を3週間ほど前に観てきました。結構良かったのだけれど、時々違和感があったので、批判するのは違うかなぁ…と思いまして、書かずにおりました。でも、ふとジム・ジャームッシュ監督の『パターソン』という映画を思い出して、「あぁ、私は、『パターソン』という映画を日本人の主人公で描いてもらいたかったのかもなぁ……「自分の日々を大切に慈しむ様に楽しんで生きる」というテーマをPerfect daysという映画(しかも日本人で描くということで)期待しちゃっていたけれど、違っていたので勝手にガッカリしてしまったのだなぁ……」と気がついたので、そのことを書くことにしました。
もちろん、役所広司さんの演技に不満があった訳ではありません。むしろ、奇跡的な位にはまりきっている役柄であり、演技だったように感じます。主演男優賞を受賞されたのは、誰もが認めた演技だったからでしょう。納得しています。でも、彼の演技とは違って、映画の出来具合としては不自然で必然性のないようなエピソードがあり、その違和感でせっかくの「流れ」が邪魔されるところが何度かあったことがとても残念でした。これは、ヴェンダースが小津を通しての日本文化への思い込みがあり、日本人スタッフの余計な忖度がもたらしたものとしか思えない残念さでした。(余程ヴェンダースと共に仕事をする事が嬉しかったのかもしれませんし、更には余計な野心でも起こしてしまったのかもしれませんネ……)
そうした違和感…要らぬ提供をしてくれた方々皆さんに贈りたい言葉があります。

 “ときには、ただ生きてみることだ。
 ただ生きる…生と闘わず、生を無理強いせずに。
 そっと物事が起こるのを見守ってごらん。
 起こることを起こらせるがいい。
 ありのままにあらしめるがいい。
 あなたの側の緊張は全部落として、
 生を流れさせ、生を起こらしめるがいい。”
 OSHO

きっと、この映画の本質(だったであろう)であり、この言葉通りにやってのけたのは主演の役所広司さんだけでした。
アカデミー賞で外国語映画部門でノミネートされているようですが、この不自然さに気づくことのない思い込みの強い審査員だけでしたら、受賞もあるかもしれません。(なんせ、半地下の住人の韓国映画が作品賞をとれるくらいですから…あの不自然なくらいのエキセントリックさは、初めは面白かったけれど、生命を面白ろおかしくもて遊び、しまいにはゲップが出そうなあざとさと下品さしか感じられなかった……。)
そんな、刺激もなく訥々と温かく日常が描かれていたのが、『パターソン』という映画でした。この映画を観た時、小津映画を継承しているのはこの人かも……と思ったのも確かです。
Wikipediaのあらすじが的確だったので引用させていただいくと、
「ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソンは、妻ローラと二人暮らしで、日々考えついた詩をノートに書き留める詩人でもある。 彼は愛する妻との平凡な暮らしを大切にし、仕事は淡々とこなし、夜には犬の散歩に出かけて途中のバーで一杯のビールを飲む習慣を持つ。妻のローラはギターを習い始め、カップケーキを作って市場に出している。彼はそんな妻の姿を微笑ましく見つめ、妻への愛と感謝の気持ちを新たにするのだった。 ところが、二人して映画を観に出かけた夜、帰ると犬のいたずらで詩のノートが粉々になる、という事件が起きる。翌日は日曜で休日だが、まだショックから立ち直れないパターソンが一人散歩に出てベンチに座っていると、一人の日本人男性(永瀬正敏が演じてます)に声を掛けられ話し込む。共に敬愛するパターソン出身の詩人の話をし、男はパターソンに一冊のノートをプレゼントして「白紙のページに可能性が広がることもある」と言い残して去った。月曜日になり、パターソンの詩に支えられた新たな日常が始まる。」

……この白紙のページに込めた映画全体に流れている「余白」に対しての洞察の深さには感嘆してしまったものです。

あまり残念なところばかり書くのも何なので、敢えて書くとすれば、役所広司さん演ずる平山の子供の様な遊び心の豊かさは、”Perfect Days” の映画での救いでもありました。
またまたOSHO がこのことを言っているとしか思えない言葉を最後に記しておきます。
平山さんに敬意を込めて(きっと平山さんは私と同じ様に現代社会は生きづらいに違いない。)

 “自分がどうやってみじめになるのか
  もしその現象を理解したならば
     あなたはその場でそれを落とすことができる
     ただやわらかく、流れているだけでいい
     子供のようになりなさい
     そして、つねに子供時代の純潔とやわらかさを保つのだ
     それとの接触を失わないこと”

     OSHO

ジム・ジャームッシュ監督作品の『パターソン』を未だ観ていない方は是非ご覧くださいネ。


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