受賞のご報告

#週刊少年マガジン原作大賞で優秀賞をいただきました。
このような企画を主催してくださったnote運営、講談社の方々へ感謝申し上げます。
また、最優秀賞を受賞した和櫛ちか先生、企画書部門で優秀賞を受賞されたTOM&BUOY先生、他奨励賞を受賞された方々おめでとうございます。


「魔女のカバン持ち」はとにかく読みやすく、主人公に感情移入がしやすい。その上で独特の世界が背景に広がっているのを感じるワクワクする作品でした。
「余命ガチャ」は単位の遮蔽でここまで面白く書けるかと感じた作品です。
年月日時間色々考えられますが、数字の設定が難しいですね。ある程度の期間がすぎれば単位が確定しそうですので。
それをこれから如何にクリアしていくか。それが気になります。

2作とも連載されるのがすごく楽しみです。



さて……やっぱり嬉しいですね。
「出版されうる」と評価された作品はこれで2作目です。
そして1作目じゃないからこそ本当に嬉しいです。

少しお話をしますね。良ければお付き合いください。
今の心境と、僕がこの作品を通して確立した創作の方法論を書いてみます。

プロフィールにある通り、僕は漫画原作者兼医師です。
KADOKAWAのヤングエースで「神獣の執刀医」という作品を連載しております。
内容は医療バトル物、医療版シン・ゴジラとでもいいましょうか。
気になる方はリンクをご参照ください。

自画自賛ですが、よくこんな奇抜な設定で読ませられるものを書けたと思います。
当時は原作大賞など少ない時期でしたので直接出版社に持ち込んで賞をすっ飛ばして連載にこぎつけました。
中々の異常事態です。そのくらいの傑作です。

そしてこれが僕の処女作です。
故に本当にきつかったです。

例えるなら
「一発は確実に弾が入っているけど、何発入ってるかはわからないよ。」
と銃を渡されて戦地に放り込まれた気分です。

終始不安でした。この弾を撃ったあとに次はあるのか?と。

漫画原作という性質上、僕は一人では戦うことができません。
話も絵も描ける漫画家でも無ければ、文章だけで人を引き付ける小説家でもありません。
今後「神獣の執刀医」の連載が終わったら僕必要です? いらないですよね。

ですので今回の賞に応募しました。
しかも賞がとれる作品を「計算して」書きました。
つまり「再現性がある形」で作品を作り上げました。
これに関しては後述します。この記事を読んでいる方ならきっと読みたいですよね。

一発屋芸人が一発屋で終わらないこと。当直(夜勤)明けの寝ぼけた頭で奇抜な設定を思いついた素人のラッキーパンチではなかったと証明したわけです。

だから嬉しいです。本当に本当に心の底から嬉しいです。
そしていつも僕のことを応援してくれている周囲の方々に感謝申し上げます。

めでたしめでたし。




とはならないんだよなぁ。
今がスタートラインでここからが本番なんだよ。
受賞即出版とは絶対にならない。
ようこそ賽の河原へ。
こっから1円にもならん、期間も分からん無限没地獄の始まりだぜ。

「神獣の執刀医」は担当ついてから出版までに5年かかったな?
早かったなおい? 次は何年だ? 10年か? 一生か?
上等だ。何度でも書き直してやる。かかってきやがれ。

少し叫びました。
とはいえ前作と比較して今作は備えが違います。
それが僕が先程述べた「再現性」に繋がってくるわけです。



お待たせしました。
僕なりの漫画原作の作り方、本作「転生聖女は現世で何を診るか」の制作過程を公開します。


前提として今回僕は出版社に「商品」を提案しました。
分かります。我々が書いているのは「作品」だろうって話ですよね。

違います。
商業誌化する以上、金銭授受が発生する以上、出版社側が望むのはあくまでも読者に読まれる「作品」=売れる「商品」です。
故に僕は本作に3つの売れる要素を組み込みました。
・新規顧客を獲得しうる独自性
・ライトユーザーに好まれるエンタメ性
・ヘビーユーザーを惹きつける専門性
商業化を意識しすぎて書きたくないものを書いているわけではありません。
商品力のある基礎を作った上でその上に僕が書きたいものを書いたというだけです。


まず最初に作品のテーマを決めます。
個人的な意見としてテーマの無い作品は読み応えがありません。
僕のテーマはいつも同じです「医療をもっと身近に面白く」。
今回もこれをテーマに持ってきました。
え? 基礎を作るのが先じゃないのかって?
いえいえ、洗濯物を洗濯機を調理器具として使う人はいないですよね。
それと同じです。何をするための「商品」なのか、これをまず決定しています。

次に商品力です。この作品で一番優れていると自己評価している点です。
順番に説明しますね。
・独自性
医療×転生ですね。類似作はありますが、異世界から現世に聖女連れてきちゃったのは無いですね。あったとしても医療の専門家が書いている作品は無いはずです。
・エンタメ性
転生要素です。正確には転移ですが。
医療マンガはとにかく堅苦しくなりがちです。このハードルを取っ払うために素人を医療現場に転生させています。
・専門性
言うまでもなく医療。医療マンガは一定の需要が見込まれる分野です。
そして僕の強みを最大限生かせるジャンルです。
こういうのは仕事や興味の対象を作品にするのが鉄板ですね。


これらを総合した結果、「異世界の聖女を現世の医療現場に放り込んじゃおう」という初期設定が生まれたわけです。
洗濯機で例えるなら、「独自の新設計」を採用した「ボタン一つで操作可能」な「高性能」洗濯機を提案しました。

難しそう? 難しいです。
僕もこんなの1から順番に真面目に考えているわけありません。
日頃から上記を意識して悩んでいると、ある日ふと思いつきます。
メタ思考の一種だと思いますが、これに関しては運や才能も絡む要素だと思います。
故に万人受けする方法ではないとご承知ください。


さあ、商品力は担保しました。
次はどうしましょう? キャラクターです。
いくら基礎工事がしっかりしていたところで、人の目に入るのは結局は上に建っている建物です。
売れる作品とはキャラクターの良い作品です。
さっそく4人ほど作成しました。
①純真無垢な聖女
②不器用だけど優しい大男
③腹黒い頭脳役
④③に対をなす熱血漢

できるのであればキャラクターはどこまでも作り込んだほうがいいでしょうね。
(もちろん作り込んでいますが、これを公開すると作品の面白さが半減するのでここまでとします。)
キャラクターは次項の「軸」とほぼ同時進行で決めますので、どんどん深掘りして作り込んでいくのが僕のスタイルです。


最後に軸(ストーリー)を決めます。
この物語の軸は2つです。別に軸の数が1本じゃなければ行けないって決まりはないですよね。
というか物語に深みを出すなら軸は多いほうがいいです。

①表軸
主人公の成長
②裏軸(精神的軸)
なぜ人は人を助けるのか

この精神的軸を設定するのは僕には合っているようで。
精神的軸があると、キャラクターに味が出ます。
あと出版社から要望が来ているようなのでここに軸を追加する形で対処できそうかなと思っています。


ここまで構築してやれば物語は勝手に動き始めます。
転移した聖女が壁に叩きつけられるのも必然だし、同期達が協力するのも必然、それを疎ましく思う人間が現れ、元々の体の持ち主の恋人が現れ……。

そしてここからはプロ根性です。細部を仕上げていきます。
読者が楽しめるように。そのためにあらゆる手を講じます。
・1話毎の引きは続きが気になるものにする。
・ひたすらに読みやすい文章を心がける。
・設定を地の文で語らない、登場人物に話させる。
・読者を絶対に飽きさせない、具材は多めに。
・具材同士はリンクさせる。バタフライ・エフェクトを意識する。
etc…

これらの内容を加筆修正を繰り返し達成するわけです。
お気づきかと思いますが最初から連載することを前提に設計しています。
長期的な拡張性をもたせそれをあえて作中で匂わせています。


まとめると僕はマガジン原作大賞を通して
「「商品:転生聖女は現世で何を診るか」とそれを提供できる「漫画原作者:水水水水水」」を売り込みました。
そして講談社がそれを買いました。少なくとも僕はそう認識しています。


僕ごときの底辺原作者が何を言うかと笑う人もいるかも知れません。
逆ですね。底辺原作者ですらここまでやっているのです。
あなたが商業出版を目指すのであれば、相手取るのは僕以上の化物です。

もちろん万人受けする手法ではないでしょう。
人それぞれ違った手法が存在すると思います。
そして僕がそれを提示することはできませんので
最終的には自分なりのやり方を自分で見つけるしかありません。

このnoteが皆さんの創作活動の一助になれば幸いです。
よろしければコメント欄に感想や質問などお寄せください。
今後とも拙作をどうぞよろしくお願いします。

                         水水水水水

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