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かっ飛ばす欠席届

朝、目が醒めたら頭が痛い。
半身を起こすと、ぐらりと視界が揺れた。風邪だろうか。しかたない、今日は学校を休もう。

欠席届を書き、小さな金属のケースに入れる。
ふらつく足で、庭にある鳩舎へ向かった。
鳩の足にケースを取り付け、空へと放つ。鳩はくるりと旋回した後、学校へ飛んでいった。

まったく、面倒だ。

伝書鳩は不達や行方不明がたびたび起きる。生き物だから、世話も必要だ。
かつては、欠席届はメールやチャットで送るだけでよかったらしい。
世界からインターネットが消えた今、通信はとてもコストがかかるようになっていた。

ため息をついていると、父さんがやってきた。
体調不良で休むそうだ。つまり、欠席届を出す必要がある。
これが大仕事だ。

──なにせ、父さんの職場は月にある。
これから物資を運ぶ定期ロケットの打ち上げ場へ行き、欠席届を運んでもらわないといけないのだから。

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