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栞小説

今日が〆切。
真っ白なノートを拡げ、アイデアを書き始める。
心配は要らない。私は「栞小説家」だからだ。

本を買うと栞がついてくる。
新刊の広告だったり、その本のイラストだったりが印刷されている。
そこに小説を印刷するという企画が通ったのだ。
長編とは違う難しさがあったが、何本も書き上げられるのは快感だった。
手軽に読めるのが好評となり、おかげで仕事も増えている。

複数の栞にわたる話を書いた。
二枚の栞を重ねると読める仕掛けを作った。
世界に十枚しかないレア栞を作ったら、コレクターが現れた。
栞小説業界は盛り上がり始めたところだ。

今は、電子書籍用の栞小説を作っている。
歯抜けになった話が書かれていて、読者が書き足し、ネットに流せるようになっている。

私の書いた物語が巡り巡って、また戻ってきたら──。
そんな願いを込めて、私は今日も書く。

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