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「待つ」集め

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なんでもかんでも、「これも、“待つ” に関係あるかもしれない」 という心持ちで見つめてみる。 すると、今まで見えていなかった物語がそこに浮かんでくる。 待つは、物語なのだと思う。… もっと読む
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お茶碗の絵柄、ティーカップの底

1113

おいしいごはんを食べて、最後の一口を頬張ると、

からっぽになったはずのお茶碗に、かわいい絵柄がひょっこり顔を出す。

おやおや、こんにちは。と、戸惑いながらもご挨拶。

食器の底に描いてある絵柄は、単に器の彩りのためだけの存在ではないような気がする。

ごはんが盛られている時、ミルクティーがたっぷり入っている時、

その底は、何も見えない。

でも、自分が食べたり飲んだりすることによ

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手紙を待つ

1016

ある日、

「この舞台が終わったら、手紙書こうと思ってるから、住所を教えてほしい」

というLINEが届いた。

親友が、手紙を送ってくれるらしい。

ほんとに送ってくれるのかなあ。

気持ちが変わらないといいなあ。

私は住所を添えて、「手紙届くの待ってるね」と返した。

私の親友は、とても照れ屋なので、

手紙を書くのにも相当時間のかかるタイプの人なのだ。

「あーやっぱり恥ずかし

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工事のしるし

0731

よく、工事中の駅なんかに、工事のしるしがついている。

チョークのような白いもので書かれた、数値や「消火栓」なんていう文字たち。

あ、いずれここに、消火栓が置かれるんだな。

そう思った瞬間、いつか来るであろう未来に思いを馳せていた。

白い文字の書かれたこの床は、未来が書かれた床なのだ。

ここに書かれたしるしは、ここに実際にモノが出来上がることを待っている。

もちろん、モノが出

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雨靴で歩く日がくるまで

1106

天気予報を見ると、来週はずっと雨マークだった。

そういえば最近、雨靴が欲しいと思ってたんだよな。

ちょうど来週から雨も続きそうだし、今のうちに買っておこう。

靴屋さんに行ってみると、おしゃれな雨靴はどれも高かった。

でも、長く履くものだし、少しくらい値が張っても、好きになれそうなものを買おう。

そうして買ったのは、雨靴には見えない、青い靴。かわいい。(と私は思っている。)

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ぼーっとすること

0827

自宅でゆっくりと過ごすことが少なくなっていた。

平日は深夜に帰ってきてばたんきゅー。なんとかお風呂にがんばって入って、ぼーっと髪を乾かして、やっと布団にたどりついた…と思った瞬間、携帯を充電する間もなく寝落ちている。

土日は、平日には会えない人たちとごはんを食べに行ったり遊びに行ったり、病院や家計簿や部屋の片付けを一気に消化したり、二日しかない休日は、こうして一気に予定で埋まってい

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手ぶらであること

1004

先日、地元でちょっとしたものを買いに行ったときのこと。

私は携帯とお金を服のポケットに入れ、手ぶらで街を歩いた。

うわ〜、変なの。

と思うのは当たり前で、私はいつも荷物が多いタイプの人間なのだ。

あれがないと心配だ、きっとこれも必要になるはずだ、そういう自分なりの根拠をつけては、どんどんかばんに詰め込んでいく癖。

家を出るときには、かばんはもう満杯である。

そんな私が、今日

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ことばが解放される

1103

午前中の空いている電車では、なぜだか筆が進む。

今日は祝日で、いわゆる休日出勤というやつのために電車に乗っている。

今は10時半、朝とお昼の間の時間だ。

そこでぼーっと、研究のことを考えたり、エッセイの続きを書こうとしてみる。

すると、いつもよりも、ことばがどんどん紡がれていくのだ。

空いているので隣の座席に荷物をおいて、ゆったりと腰掛けることができて、

さらに立っている人

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カレンダーをめくる

1030

カレンダーをめくるという行為は、なんだか不思議だ。

この間、ふと自分の部屋を見回したとき、

部屋にかかっている「March」でとまっているカレンダーに気づいた。

この部屋にいかに愛着がないか、いかに家で過ごせていないかを痛感した。

かなしかった。

最近は会社から帰ってくるとすぐ寝てしまうし、休日も出かけてしまうし、

家にいても、リビングにいることが多くて、

自分の部屋でゆ

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お店に並んだ商品たち

1103

お店に並んだ商品は、だれかに買ってもらうことを待っている、のかもしれない。

だれかのものになることを待ち望んでいる、のかもしれない。

商品が「早く未来の持ち主こないかな〜〜〜」と思ってるんだと思うと、いとおしくてきゅんとしてしまう。

これはいろいろ買ってしまいそうだ… 

そう考えると。

お店は、商品と未来の持ち主の、待ち合わせ場所とも言える。

だれが来るともわからず、だれが

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大きめのスケッチブック

1103

私は、ちょっと大きめのノートが好きだ。

それも無地の。

B5サイズだと、小さく感じてしまう。

思えば小学校の頃から、ノートといえばB5サイズだった。

小学校の頃からずっと、ノートをとるのが好きだった。

小学校の頃は、基本はBの鉛筆で、持ってくるのが許されていた青や赤のゲルインキボールペン(当時の私にはそれはとてつもなく大人っぽくて、かっこよくて、さらさらさらとペンを走らせてい

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会議中の、お手洗い事情

1115

しょうもないことだと思う人もいるかもしれないが、本当はみんな、「あ〜あるある」と思っているはずだ。恥ずかしくて口にしないだけで。

会議中、お手洗いに行きたくなった経験は、ありますか?ありますよね。

事前に済ませておこう、と注意しつつも、どうしてもそうなってしまうことはある。

注目したいのは、そうなった時に、どうするかだ。

その瞬間、たっくさんのことが頭をかけめぐる。

席を立ち

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ハウツー本は待てない人のためのもの

先日、とてもショックなことがあった。

本屋で、ハウツー本に手が伸びたこと。

ハウツー本を無意識に欲してしまったこと。

ああ、何をやってしまったんだ私は…と自分を瞬時に咎めた。

私は、ハウツー本が嫌いだ。嫌いなはずだ。

(もちろん、ハウツー本にもいろいろな類のものがあると思うが、)こういうときはこう動け、こういうときはこう考えろ、と小手先の方法だけ書いてあるものは嫌いだ。そして、それを妄信

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使い道のわからない買い物

1113

シールを買ってしまう癖がある。

別に、シールを買おう!!!と意気込んで買うわけではなく、

あ。シールだ。あ。なにこれいい味出してる。買お。

このくらいのテンションで買ってしまうのだ。

シールを買ったあとどうするかというと、

どうもしない。

手帳にはさんで持ち歩くだけ。

シールを実際にどこかに貼ることは、めったにないのだ。

でも、私は懲りずに買い続ける。

いつ貼るのか、

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拍手の前の静けさ

バレエの舞台で、拍手をするのを待ちたいときがある。

しん という静けさや、ややはりつめた空気を、ごくりと味わいたいとき。

たとえばそれは、ダンサーが大技を決めた直後。キチッと最後まで決めるまで、息を飲んで見つめる。そして大技が決まったあと、一拍、劇場全体が静けさに包まれ、その直後にわーーーー!!っという大歓声、大拍手が沸き起こる。

しかし、客層がちがうと、この一拍はない。客の多くがダンサーの

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