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『キルミーアゲイン’21』考察②

明日からツアーが始まるけどまだまだ振り返るね、『キルミーアゲイン‘21』。

火のないところに煙は立たないというけど、人魚伝説の残るこの村に、人魚は本当に存在していた!
ヤマメちゃんは人魚だ。まず、”山女魚”って名前からしてわかりやすい伏線だった。
折に触れ人魚であろうことを匂わせてくるしな。

この村に昔から継承される人魚伝説はこちら。
『昔々、とある貧乏侍が川で釣りをしていたら、美しい人魚が釣れた。貧乏侍の女房になり仲睦まじく暮らしていたが、妬んだ村の男どもが女を藪の中で襲った。
私は男達に刺身にされました。今夜遠くに逃げておくれ。貧乏侍がその通りにすると、そのよる女は嵐を起こした。全て流し去った後に残ったのは、二人の家と一枚の鱗。女は川底で人魚となり、仲間達と楽しく暮らしておるそうな』
たにし座の座長に説明されるこの伝説、タガメの合いの手が面白すぎてちっとも頭に入ってこないんだけどね。

ヤマメちゃんの人物設定は、本人も読んだって言ってたアンデルセン作『人魚姫』の童話のあらすじと照らし合わせながら見てみようか。

遠い遠い海の底に、人魚のお城がありました。お城には王様と6人の人魚姫が住んでいました。
→姉妹は知らないけど父子家庭は同じ。ヤマメの父がダム建設に反対して川で無理心中を図り、ヤマメが一人生き残ったことになっている。


人間の王子様に一目惚れした人魚姫は、嵐で船から海に投げ出された王子の命を救います。
→これは逆だよね。17年前、溺れていた人を助けようとして岸に打ち上げられたヤマメを助けたのは、藪中。目を覚ましたヤマメが口からぴゅーっと水を吐き出す様子に藪中は笑い、その笑顔にやられてヤマメは藪中を好きになってしまう。一目惚れしてる点は同じ。

人魚姫は王子様のそばにいたいと魔女のところへ行き、人間にしてほしいと頼みます。魔女は、人魚姫の美しい声と引替えに、人間にしてくれることを約束してくれました。
しかし王子様が他の女性と結婚すると、二度と人魚姫には戻れず海の泡になって消えてしまうと言われます。
人魚姫は全ての条件を呑み人間になることを決めました。
→藪中は、天涯孤独のヤマメを養護施設に連れていく。命の恩人である藪中を慕って、ヤマメは吹奏楽部の練習場にまで出没するようになる。
『人魚伝説』のオーディションでも、得意なのは「歌」って言ってるけど、ヤマメちゃん、声を奪われるどころかバリバリ歌ってる。
将来の夢が「人間になること」だからまだ人間にはなってないはずなのに、めっちゃ長い間人間界に居られるんだね。
ところでヤマメちゃんもしきりに人間になりたがっているけど、魔法使いの存在を匂わせる描写は一切ないから、人間になる方法は示されず謎のまま終わる。

人魚姫に助けられたのに、意識を戻したときそばに居た女を命の恩人と勘違いしたまま、その女と結婚することを決める王子。
王子の胸をナイフで刺し殺せば(物騒だな)人魚姫は海の泡にならなくて済むらしいけど、愛する王子様を殺すことができず、人魚姫は海へ飛び込み、海の泡になって消えてしまいました。
……ハァ、切ない。
→人魚姫とちがって、ヤマメはそもそも人間界に遊びに来ていたわけじゃないよね。ダムが建設されれば人魚が暮らす場所がなくなるから、阻止するために現れたのか。
17年前の場面では孤児のせいかみんなにやたら心配され大切にされているのに、7人の高校生の命を奪った嵐が起きてから状況は一変。嵐はダム工事に怒った人魚が引き起こしたことにされ、一人助かったヤマメは人魚疑惑をかけられ村を離れた。川底の人魚の住処に戻っていたのかな。17年後戻ったヤマメにも村民は冷たい。
人魚の命は300年とヤマメが言ってるから、藪中が「ヤマメちゃん、全然変わってない!」と驚いてるけど人魚なんだからそんなの当たり前。
川底住まいのヤマメはいくら藪中が好きでも東京までは遠征できなかったんだろうね。恐らく人間界の様子は見ていて、藪中が帰郷したのを知ってちゃっかり戻ってきたんだろうな。
ヤマメは倒れてくる柱から藪中を庇って川の泡となって消えてしまう。どんな水難もくぐり抜けてきたヤマメだけど、支柱に潰されたらそりゃ死ぬか。
ヤマメは、藪中以外の皆の記憶から消えてしまうのでした。
……ハァ、切ない。

17年前と違って新聞にダム工事反対の投稿はしてなかったし、現代のヤマメは、
「17年前の事件に罪悪感を抱き苦しむ人々を開放させるため」
「亡くなった7人の高校生たちの無念を昇華させるため」
何より、「燻っている藪中を再生させるため」
に現れたんだろうね。

ヤマメちゃん、人魚ってより、天使だよな~
『人魚姫』と同様、自分の命を犠牲にしても好きな人を救ったことは同じ。

最後に、藪中の人物像だけど、
「俺にはもう何も残ってない。」「からっぽ」藪中が脚本を書くことに苦悩する場面が何度も出てくる。


ねえなんで藪中モテモテなの?ってずっと疑問に思っていたけど、
きっと、藪中は、丸尾さんだよね。
そりゃ、藪中、モテモテに書くか。(笑)


でもその超絶かっこいい役を真田佑馬君に任せてくれて本当にありがとうございました!
『舞台27』とともに、忘れられない作品になりました。
早くDVDが届かないかな。待ち遠しいぜ。


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