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【覚書】コワガリーノ

息子が夜、勉強していたら、
邪魔をしないようにと、息子の部屋の近くで
気配をしながら本を読むようにしている。
息子は、それが怖いらしい。

彼曰く、
「暗闇がこわい」とのこと。
暗闇に何かいたら怖いと考えているところに、
私が気配を消して座っている。
暗くはしてないのだけれど。
「暗闇に何かいて、それと目が合ったら
その瞬間に魂奪われそう」とのこと。
「夜、寝るときは背中が空いていると怖い」とのこと。
「背中は壁につけておきたい」らしい。

息子は怖がりの心配性で、
自転車の交通ルールも私よりよほどしっかりしている。
ヘルメットは必ずつけてくれるし、
スピードは出さないし、
近道であっても細い道は車と近くなるから
大きな通りを選んでいる。

思えば、私も怖がりだった。

夜、寝るときに布団から足が出ていると、
その足を引っ張られそうな気がして、必死で布団に入れながら
寝ていた。
朝起きたら、出ていたけれど。


シャンプーの時は目を瞑ったら後ろに
何かがいそうで、ずっと目を開けていないと
シャンプーができない。だから、上から水を被れない。
常に上を向いてシャンプーをしている。
小さい頃は時々後ろを振り向きながらシャンプーをしていた。
ちなみに、今も上を向いてシャンプーをしている。

窓の外に何かが映るのが嫌なので、
夜はカーテンを閉めないと落ち着かない。
寝るときに夫は息苦しいからとカーテンを開けたがるのだが、
私は閉めたい。
窓の外で誰かが歩いたら怖いやん。二階やのに、
誰かが写り込んだら怖いやん。
今の家は窓だらけなので、なんだか感覚が麻痺しているけれど。

大人になると、
お化けよりも人間の方が怖い、と知るので、
怖がる対象は変わった。


今の家を建てるときに、アル○ックさんに申し込んだのだが、
アル○ックさんとの打ち合わせの際に、
侵入警報が鳴ったらガードマンが駆けつける、という話を聞き、
「で、あの〜その、武器は何を持ってきてくれるんでしょうか?」と
質問したら「あ、えーと…警棒を…」と、困らせてしまった。
そらそうだ。銃刀法違反で捕まってしまう。
「弊社の屈強なガードマンが駆けつけます」と
優しく答えてくださった営業の方。ありがとう。

さらに「窓から侵入されて、そこから駆けつけてもらっても遅いですよね…。
外に付けられないんですか?」と聞いたら、
「外に付けたら、猫にも落ち葉にも反応して一晩中、警報器が鳴ります」と
設計士さんに若干、苛立った声で言われてしまった。

「寝室に鉄の扉があればいいのに…」とボソリと言ったら、
夫から「お前はジョディ・フォスター(パニックルーム)か」と一蹴される。
一体、どんな敵と戦うつもりなのか、と。
「核シェルターでも作る気か」
うーん、本音を言えばほしい…

守るべき資産はないが、守るべき命があるので、必死なのだ。

子どもの頃は見えない何かがいつも怖かった。
いつの間にか見えない何かは見えなくなってしまった。
それでも怖いものは増えていく。
不安も増えていく。
でも、何かを「怖い」と思う気持ちが自分や家族を守ってくれることがある。
「怖い」と思うことで二重三重に、「備え」ようとする。
「備え」ていても、不意に危ない目に遭うこともある。
備えて備えて、心配ばかりして逃げていたら日常生活を送ることもままならなくなるから、世界を信頼して動かなければならない。
でも、気持ちに「備え」を常に持っておきたい。
と、思っているのだが、
私の心配はいつもどこか見当外れのようである。




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