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ここを読んでいっこも興味がわかなければ、残念ながらぼくはあなたにとって価値がない。
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記事一覧

Tシャツから逆算して本を選ぶ

フィリップ・K・ディックのユービックという小説を買った。 ハヤカワSFが出しているTシャツになっている。 意味のわからない英字や思想の服を着るのが嫌だ。 特にTシャツって自分を表現するものだから、ニルヴァーナのロゴをバンドだと知らずに着てたり、知らないメジャーリーグのチームとか読めない外国語とか、そういうのを身につけるのが嫌。 迷彩やARMYとか戦争に関連したデザインが入っているのも、すすんで着たくない。 服のセンスはないのにそういうこだわりだけがある人がゲームや本のデ

スター発掘番組、R1グランプリはもう「夢がある!」と言わなくていい

正直、びっくりした。 あの、毎年面白い人が軽くすべらされるR1が、ネタ時間1分増と出演者の個性で2024年は見違えるほどいい番組になっていた。 R1の「優勝しても報われない大会」ムードが薄れたのは、YOUTUBEの影響だと思っています。 佐久間信之や、こたけ正義感の逆転裁判実況のおかげ。 こたけの逆転裁判がバズってると聞いたとき、 「あ、その名前どっかで見たことある、R1か」と引っ掛かりができてた。 R1で登場後、バラエティで大活躍とはいかないけど、長く自分の得意分野で活

デッドアイランド2で定期的に街を焼くと健康に良い

Xbox買ったら絶対遊べ。 デッドアイランド2の紹介をする。 残酷描写のため日本では販売されていないが、パルワールドとか遊ぶために月額千円ほどのゲームパスに加入している人なら、居住地を欧米に設定するだけで遊べる。 今時ゾンビもの?と思ったけど、これが楽しいのなんの。 崩壊したロサンゼルスでゾンビの抗体を持った主人公が拾った武器で闘う。序盤が多少硬派すぎるが、進むほど強く、爆殺手段は多才になる。 あらかじめ道に燃料を撒いておいて火のついたバットで一双!ドロップキックで電気

西村亨「自分以外全員他人」で人生からドロップアウトしたくなった思春期に戻る

たぶんですけど、みんな意味もなく人生からドロップアウトしたいと思った日々があったはず。あっても口にしないだけ。何度も人生が無意味だと思った日があるはず。 年齢を重ねて「しんどいこともあるけど、見たいところも好きな人もいるしボチボチ生きていこう」とか思いながら生きているうちに、若いころの憂鬱なんてなくなって長生きを望むようになるもんだと思う。 「自分以外全員他人」は、若いころからうっすら死にたい気持ちのまま40代になった主人公が、いまでも「消えたい気持ち」をかかえたまま、保険

【地味ゲー】While the iron's HOTを続けているやつ、俺ひとりかもしれん

鍛冶屋が主人公の「クラフトRPG」が絶妙に面白くなくてずっと続けてしまう。 雲に覆われたフィールドをひらき、出会った村人の依頼に沿って物を作ったり、お供の牛を引き連れて何かあるかわからないフィールドを切り開いていくのだ。 村人のリクエストにそって、鎌やハンマーがほしい人がいれば鋼と木材を装置に正しく置いて軽いミニゲームをこなしてひたすら作っていく。 鋼や鉱石を適切に使えば「ダマスカス」や「ガラス」の原料を生み出すことができる。 さらに違う材料を生み出して、用途のあまりな

流行語大賞がとらえる間もなく「エッチ」がひらがなの「えっち」にすり替わっていた

とあるラジオを聞いて耳がぴくんとなった一言。 「中年男性がセックスのことをエッチと言うのが気持ち悪い」 私はそんな会話する機会がないけど、 死語が生まれる瞬間ってこんななんだ!意識してないと、いつの間にか自分も死語と知らずに使う側に流されるんだ!と思った。 「セックス」なんて口に出して言っていいのは、海外ドラマの 「セックスアンドザシティ」 の話題のときだけだと思っていた。 それも前方にアクセントを置かずさらっと。 「セックス」を日本人が口に出すのはタブーだった。 その

「龍が如く7外伝」クリア。初めての桐生ちゃん、初めての価値観

未来の宇宙を飛び回る「スターフィールド」で、巨大なスケールのどぎついネオンの宇宙都市を観たとき 「サイバーパンクだ。すごいけど知ってるやつだ」 としか思わなかった。 なのに「龍が如く7外伝」の大阪で、巨大フグやらカニやらが並んで、串カツ屋を持ったおじさんの巨大な人形が立ち、立体のタコとたこ焼きをあしらった建物、その横で平然と無表情な学生たちが歩いている空間に立つと、 「こんな狂った都市が実在するわけがない」 と思う。 ゲーム用の誇張か、リアルの大阪か、わからないところがい

メタルギアソリッドを今遊んで、「思ってたんと違う…」って言ってほしい

「メタルギアソリッド」シリーズは、反核を中心に据えたストーリーでアメリカ人にも熱狂的に支持された。 核は絶対悪だと小学校から教育を受けてきた日本人に、自ら核武装を選択させた。 メタルギアがリマスターされました。作中に一瞬アニメで出た(うろ覚え)「ポリスノーツ」も待ってます。あれ、今だと古さも新鮮だぞ。 「ソリッド」が付く前のシリーズ最初期は、敵が多く表示できないのを逆手にとって、敵地に潜入するゲームにしたそうですが、プレイステーションでも潜入要素はそのまま。 見つかったと

【大空スバルとSF6】格闘ゲームの女性は乳揺れから腹筋の時代へ

スイカゲームの陰でVtuber界隈のスト6配信も途切れずに続いている。 大空スバルのスト6配信を観て、ストリートファイターの大胆な路線変更がことごとく正解だったんだと、彼女に合格印を押された気分になった。 こういう流れ今までなかったなあ。スト6は本当に格闘ゲーム復活の火種から、めらめら燃えている。 発売前の情報では、かなり否定派も多かった。桃鉄のキャラデザインを古いのがいいと言ったり、スラムダンクの映画をCGにした時ぐらい「否」の声があった。 UIが本当にストリート系だっ

SF小説の未来予知が間違っているとkawaii【読書記録】

アーサー.C.クラーク「火星の砂」を読みました。 1950年ごろ書かれたもので、SF大家の長編2作目になります。開拓中の火星を訪れた作家の物語。 初めての宇宙旅行で離陸に緊張する主人公、「水鉄砲式」で水分を補給していたが重力が戻ってくると嬉しくなってコーヒーを器に入れて飲みたくなる船員。つい持っていたものを落としてしまい、いけねえ重力あるんだった重力重力、ってなる感じ。 火星探索の前に「無重力あるある」がたくさん出てくる。 70年以上も前に書かれた小説で、火星に生き物がい

【ゲームレビュー】異文化はおもしろい。と信じてないと作れない「Venba」

「Venba」短編映画のようなゲームでした。南インドからカナダに移住した家族の会話を通じて、言葉の問題で就職がうまくいかないつらさ、広い世界を知る喜び、息子が世界に羽ばたいていく半面で、故郷の忘れていく寂しさ…。 そういう、ちょっとした喜びや困難を体験する。 「移民生活ゲーム」と聞くと興味を持つのは難しいけど「料理パズルゲーム」として出したのが面白いところ。 人生の節目節目に、欠けたレシピとおばあちゃんが作っていた記憶をもとに、家族はインド料理を作る。 大変な人生の合間で

ラッタウット・ラープチャルーンサップ「観光」今年ベスト短編集!

タイ系アメリカ人の短編集。ハードル低かったのもあるけど、すごい良かった!誰かにオススメの短編聞かれたらこれにする! こんなのとの出会いがあるから、ブックオフもたまには行くもんだな! 「カフェ・ラブリーで」 お兄ちゃんに連れられて初めて悪い遊び場に行くはなし。 お兄ちゃんについて行ったら大丈夫、と思っていたらシンナー吸いだしてわけわかんない状態になって、一人で取り残された少年が女の人にからかわれながら強がる感じが痛々し愛しい。怖いんだけど、エロいやらワクワクするやらで、どうす

【ゲームエッセイ】初代バイオハザードって、キックがヘッドショットになってる?

初代バイオハザードのリメイクの実況プレイを観ていたんです。ホロライブの。 それで、リアルタイムで遊んでたころを思い出したのが、実況者の 「ヘッショできねえ!」 って言葉。 ヘッドショットを今のゲーマーはそう略すのか。ほほう。最近の若いもんは何でも略すのう、と茶をすすった…。 ではなくて、リアルタイムの人ちょっと集合。 初代バイオって…ヘッドショットなかった!? 確かに、バイオってヘッドショットなかった! 銃をかまえたら自動的に敵のほうを向く、ナイフは無限。でもたしかに、

「つけびの村」が他人事とは思えない

限界集落で行われた連続放火殺人事件の犯人を取材したノンフィクション「つけびの村」が、まあ怖かった。恐怖を与えるために書かれた本じゃないのに、不安になるツボを刺激する内容だった。 それは、ぼくが電車内で叫んでいる「どうかしてる人」を見ていられないのと関係がある。 そういう人が、向こう側の人間とは思えないのだ。 「つけびの村」では、連続放火殺人をおこして、殺害予告のような川柳を残した犯人の印象を聞いてまわる。 生まれも育ちも凶悪、理解できない悪人なら単に憎めばいいけど、昔の印象