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文學界と「女は電子工作できない」の話

文學会11月号。
かつて吉本で芸人をやっていた藤原麻里菜さんのエッセイがおもしろかった。
途中で芸人を辞めて「無駄づくり」の話になって、「あの方だ!」と読んでいる途中で気づいた。どこかのバズ動画で目にしたけど、名前で認識していないから。
「初対面の人と思って話していたら、すでに名刺交換した後だった」
みたいな。

R-1グランプリの予選1回戦を突破した話(それでもかなり少数の選ばれし芸人だった)、吉本を辞めて電子工作を始めてからも周囲から
「女なのに」という言葉はつきまとっていた話。

コンプライアンスの息づいてないころの吉本時代のエピソードは、まあ胸糞悪くて、女性のお笑い芸人が少ないのは面白さよりも丁寧に男が刈り取ってやる気を失わせていったんじゃないかと思ったけど、問題はその後の電子工作の話。

工作界隈の男性は優しくておとなしかったけど、簡単な電子工作を見ただけで、
「彼氏に作ってもらったんじゃないか」と言われる。

自分自身を振り返る。ついこの間
「セガサターンに本当に詳しいアイドル」の動画を観ていたとき、自分も似た気持ちになった。
女性がマニアックな趣味に詳しいと理由を知りたくなる。

これは意識してない差別なのか、
男がレトロゲームに詳しくても疑問に思わないのに、
女だと「なぜ?」ってちょっと思って、両親の経歴を知って「それならわかる」ってなる、この感じ。(この動画のケースは全然世代が違うのでまた別の疑問もあるけど)

でも「女は機械が苦手なはずだからゲームをしないはず」
という偏見ではなくて、
「女の人ってもっと、かわいいものと楽しいことがいっぱいある人生を送っているはずなのに、我々と同じ暗い趣味をやっているとは何故だ!?」
っていうひがみ精神に近い。

長嶋有の短編「シーケンシャル」もおもしろい…!
昔のパソコンMSXを旧友に届けるためにバスに乗る話。
筋書きだけだと、なんだそりゃ、と思うけど、とにかく知らない昔の規格のパソコンの話をしているのにずっと読んでいられる。
今のパソコンとは全く違う、わかりやすく音楽や動画作成ができるわけでもないMSXを買って、一見無駄とも思えるようなことに青春を費やしてきた人たち。
当時ゲームデータを記録していたカセットテープのようにバスのルートも人生もくるくる巡る。

読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。