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【ゲーム】「ROAD96:MILE0」独裁国家のお嬢様と地下労働者が、走るわ逃げるわ殴り合うわ

大臣の娘のお嬢様ゾーイと、半地下アパートに住む労働者少年カイト。
ふたりが生まれ育った国から脱出するまでを描いたアドベンチャーゲーム「ROAD96:mile0」
Xboxでクリアしました。力の入れ具合が間違ってるというか、題材から想像できないずっと変なゲームでたまらんかった。

導入が最高。「ライフイズストレンジ」を思わせる、立場の違うティーンの友情物語だ。次期大統領候補を父に持つお嬢様ゾーイと、半地下のアパートで暮らす少年カイト。

政権を称賛する案内をするスピーカーや、市民を監視するカメラがあちこちにある。テレビのニュースが1種類しかない。
いろいろ怪しいんだけどお嬢様のゾーイは慣れ親しんだ環境を疑えない。だけどカイトの話に乗って、ボディガードを振り切って駆けだすと、それまで主観視点で歩き回って調べたりしていたのが、ラン&ジャンプのアクションに変化!いきなりオフスプリングの曲が流れボディーガードも巨大化!

「この国は素敵」と信じてきたお嬢様に、カイトは「この国は弱者にひどい扱いをしている」と主張。
エピソードが区切られるごとにふたりが精神世界でスケボーとローラースケートで走り回る。そういうミュージカルみたいな。

ゾーイが身内の言うことを信じて「この国は素敵!」と思うか、カイトを信じて大統領を批判したり、ポスターを破いたり反体制側に傾くか。小さな選択の積み重ねで主人公の意思が決まっていく。

前作「ROAD96」の前日譚になるので、前作でこの国は危険なことがわかっているので、「国と友達、どっちが正しいんだろう?」と悩むおもしろさはない。
面白さのキモになる部分を捨ててるような気がするけど、主人公ふたりが魅力的だし、この国は反抗した者をどう扱っているのか最後まで見せない怖さがいい。
なにかやろうとしているカイトを止めたほうがいいのか。
自分も地位を捨てて逃亡するのか。よりによってトロンボーンとか、かさばるものを山ほど持っていくのがいい。

突然変わったミニゲームを挟み込んでくるゲームだが、いちばん印象的だったのは「友達にタトゥーを入れる」だ。

汚いもの、悪いものから遠ざけられてきた大臣の娘が、労働者少年と契約でもするかのようにタトゥーを入れてくれとお願いする。
描きようによってはすごくドラマチックな場面で、映画みたいだと思うんだけど、彫られるゾーイがくしゃみして腕を動すので注意しないと線がゆがむギミックを入れてきて、縁日のカタヌキのゲームみたいになっている。
そこは静かでいいのに、
「ほら!ミニゲームにはこういうハプニング要素があったほうがいいでしょ!サービスしといたよ!」とばかりに変な遊びを入れてくる。

ぼくの展開では、国から脱出したあとの最後のイベントで、「FINAL FIGHT」という曲とともに今までいっしょに生きて交互に操作してきたふたりが戦いを始めた。
その戦いかたがあんまりにも変わっていて、ああいいや、もう全部OK、このゲーム全部面白いことにしよう、ってぐらいハッピーになれました。過酷なテーマなのに。
細かい欠点をつついていたらキリがない。だけど荒い中にフレッシュな見せ方や絵や音楽があって、これぞインディゲーム!!って光を見せてくれる。前作やってなくてもOK、おすすめだ。


読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。