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『太宰治は、二度死んだ』――おまけの話(改造社版『葛西善蔵全集』)

現在連載中の『太宰治は、二度死んだ』第3話で、主人公「あつみ」の愛読書として改造社版『葛西善蔵全集』が出てくるのですが、実はこれはわたしの蔵書の一つでもあります。

昭和五年(1930年)の主人公がどんな本を読んでいたのか、令和の世を生きる皆さんにわかっていただくために、写真を数葉、ご紹介したいと思います。

函入り。天金、布張り。表紙の布の手触りがなかなかよき、です。


短編「雨」の本文


奥付。昭和三年八月三日発行、初版本。定価二円五十銭。


奥付には、「昭和三年八月一日印刷」、「八月三日発行」と記されています。初版本です。

奥付の上部にある「葛西」というハンコは、「著者検印」と言います。海賊版を防止し、発行部数を確認するためのもので、なんと、著者自身が一冊ずつ押印していくのです!

この「著者検印」制度は、昭和三十四年(1959年)に廃止されるまで続きました。

つまり、それ以前の本というのは、読者より先に著者の手が触れているんですね。

物語の中の時代の雰囲気を、少しでも味わっていただけたら幸いです。

※『太宰治は、二度死んだ』は現在(4月28日時点)、第4話まで公開中。
毎日更新の予定です。どうぞよろしくお願いいたします。