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劇場屋根裏の鳩

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映画・演劇・歌舞伎など、見てきたものの感想など
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そこらへんの鳩がうっかり歌舞伎見物にはまった話

もっちりデミタスさんのアドベントカレンダー(2023)寄稿です。 はじめに歌舞伎、見たことありますか。見かけたことがある方は、まあ日本人なら誰しもでしょう。白塗りの顔と赤い隈取り、あとなんか髪の毛ぶんぶん振るやつ。他には、男性が女性を演じる、というところくらいがおもな印象ですかね。不肖鳩はだいたいそんな感じのイメージでした。 もとより、いろんな事物について、ほんものを見たいと思っている鳩ではございまして、こと演劇や舞台芸術につきましては興味のあるものですから、歌舞伎もだいぶ

【舞台鳩】マシュー・ボーンの『ロミオ+ジュリエット』(東急シアターオーブ)

昨年図らずも「ロミオとジュリエット」の話の内容を割ときちんと知ったため、今なら見れると思い立ち、駆け込んできました。 こういうダンスの公演を見るのは初めて、内容分かるだろうか……などとちょっと不安に思いながら行きましたが、結果としては全然問題なかったです。 マシュー・ボーンについても名前と振付師?という程度しか知識を持ち合わせておらず、以下引用します。 今回は『ロミオ+ジュリエット』ということで、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の翻案作品。舞台は現代、若者を矯正する

【歌舞伎鳩】御浜御殿綱豊卿、伊勢音頭恋寝刃ほか(三月大歌舞伎 / 歌舞伎座)

ヘッダーの仁左衛門さん、めちゃくちゃにかっこよくないですか……? これは歌舞伎座でポスターを撮影したものですが、画質荒いのでもう本家で見てきてください。 見ましたか? かっこいいですね。鳩はど素人であるため、どの演目も大体内容を知らず、もちろんこの「御浜御殿綱豊卿」も知らなかったのですが、ビジュアル出た途端に、かっけ〜〜〜〜〜!!!と声が出たのはこれが初めてです。演目名だけで夜の部のお切符を取っており、昼は「傾城道成寺」を幕見しようかな〜程度だったのですが、まあ、行くよねこ

【映画鳩】オッペンハイマー

日本公開されることがあれば(本国公開されてから日本公開されるまで協議か何かあったようでだいぶ間がありました)、見に行こうとは思っていたものの、ずっと「見たい」と「見なければ」の間にありました。 でも公開されましたからね、もちろん行ってきましたよ。配信だと腰が重くなって見るのに時間を要しそうというのもある。劇場というのは時間と集中、環境を買う場所であるため。 チケットをとるまでは何も考えていなかったけど、劇場に入って本編始まるまでにもうちょっと帰りたかった。余裕があるときでな

【文楽鳩】曽根崎心中(BUNRAKU 1st SESSION / 国立劇場)

前回、国立劇場で文楽を見た時に、曽根崎心中を好きになったので、このプロジェクトもチェックしつつ行くかどうか迷っていたのですが、思い立って行ってきました。 トレーラーの通り、通常は大道具を立てて行う公演を、アニメーション背景で行うというプロジェクトです。背景美術は、スタジオジブリの背景画を数多く描かれてきた男鹿和雄さん。 演目は「曽根崎心中」から、最後の道行の場面「天神森の段」です。 「曽根崎心中」のざっくりとしたあらすじは以下の通り。 醤油屋の手代・徳兵衛と、天満屋の遊女

【歌舞伎鳩】女殺油地獄・忍夜恋曲者 将門(三月花形歌舞伎)

めぐりあわせでうっかり初日に行きまして、偶然役者さんのご挨拶に出会したりしました。南座前のあの小さいスペースでのご挨拶で、役者さんめちゃくちゃ近いとこにおる……となったのと、こういうご挨拶は役者さんの素の性格のようなものが見えるんですね。初めて目の当たりにしましたので面白かったです。 めちゃめちゃ寒かったけど、良い十五分でした(この日の京都、一日風花が……)。 鳩はこの頃ずっと思っていたんです、隼人さんが悪い男を演じているところが見たいと。新・水滸伝の林冲が印象的で、ヤマト

【映画鳩】哀れなるものたち

公開後そこかしこから良い評判が聞こえてきていましたね。へ〜……くらいにしか思っていなかったのですが、ちょっと前に作っていた映画公開見たいものリストの中に本作が入っており(すっかり忘れていた)、まあそれなら見てみるかあと映画館まで行ってきました。 (注:以下ネタバレあります) いつものことながら思えば情報を仕入れずに見に行ったため(大人の身体の中に子供の脳が入っている?程度)、屋敷の中にキメラのような動物が出てきたあたりで、どんな世界観???になっていました(すぐに慣れまし

【歌舞伎鳩】新版歌祭文 野崎村・籠釣瓶花街酔醒ほか(猿若祭二月大歌舞伎)

ともかく篠山紀信が撮影した写真とポスターを見てください。 ほんとうにこのビジュアルが美しく整っていて、どのお写真もポスターも素晴らしい。これが情報として出てから、輪を掛けて見物に行くのが楽しみになりました。 演目の中で先に知っていたのは「籠釣瓶花街酔醒」と「連獅子」。特に籠釣瓶の、八ツ橋の凜とした気品と、次郎左衛門の優しげな顔の中で八ツ橋の美しさに魂を奪われた表情が美事です。 初めてこういうもののクリアファイルを買いました(ポスターは全部揃えたくなっちゃう気がしたので我慢…

【映画鳩】ボーはおそれている

好きな映画に「ミッドサマー」を挙げるタイプの鳩です。最初は「ヘレディタリー」を、トレーラーの映像美に釣られて観たのですが、あっちは普通にホラーなのでね……怖いネ……(ホラーはあまり好きではない)。でもミッドサマーは好き。まあともかくそんな感じですので、今作「ボー」は、情報が出た当初から待ち構えていました。万全の状態でアリアスター監督に嫌な気持ちにされに行く覚悟を決めていざ映画館。 (注:以下ネタバレあります) 内容は、今までの作品の中で一番マイルドでしたね。ボウの人生を振

【歌舞伎鳩:番外編】歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉(二月シネマ歌舞伎)

松本幸四郎さんっていい役者なんだなあ……(しみじみ)。役名も役者さんのお名前も顔も覚えられぬ宿命を持つ鳩、歌舞伎役者さんはようやくなんとなく何人か分かるようになってきました。 たまたまヤマトタケルとはしごして見たんですが、もしかしてそういうスケジュールなんですかね?(時代感は違うはずだけれども、大和朝廷と蝦夷の話のつながりがある)鳩さっき新橋で帝見たよ。 こういう敵同士であろうとも、互いの信念を尊重するような人物たちの群像劇、良いですよね〜〜〜〜〜。熱い。出会うべくして出

【歌舞伎鳩】スーパー歌舞伎 ヤマトタケル

2月に観ましたから、中村隼人さんのヤマトタケルの日にお切符をとりました(2月は市川團子さんと中村隼人さんの交互出演)。3月20日までは同じく新橋演舞場で、團子さんのヤマトタケルでかかっております。 今年はここからずっと巡業するのすごくない? 5月御園座(愛知)、6月松竹座(大阪)、10月博多座(福岡)なので、気になった方はぜひ……。 5, 6月は團子さんのヤマトタケル、10月は隼人さんもなさるようです。 あらすじ 日本神話の日本武尊伝説の舞台化。 帝(市川中車)には双子の

【オペラ鳩】美しきエレーヌ(東京芸術劇場コンサートオペラ vol.9)

オペラ、聞いてみたくないですか!? 鳩はもうずっと聞いてみたかったのですが機会もなく、先日ようやく突撃してきました。演奏会形式ということで、演劇的な舞台装置や台詞があるわけではなく、全曲通しの演奏会という感じ。欲を言えば演劇的な感じのあれを見たかったのですが、まあすごい値段するのでね……それが尻込みしていた理由のひとつですし仕方がない。 演目はジャック・オッフェンバック「美しきエレーヌ」。 演目を元から知っているかと言われると、まったく知らなかったわけですが、どうやら日本で

【映画鳩】ラストナイト・イン・ソーホー、ヒューマン・ボイス

夢と現実が混沌としていく系の映像、結構好きなので、そういうタイプの映画っぽい、というのを探し当てて「ラストナイト・イン・ソーホー」を見ました。ポスターもいい感じだよね。 「ヒューマン・ボイス」の方は、ティルダ・スウィントンの一人芝居、という情報が先にあり、映像で一人芝居か〜おもしろそ〜ということで鑑賞。 (注:以下ネタバレあります) ラストナイト・イン・ソーホー ざっくりとしたあらすじ:1960年代のイギリスに想いを馳せる、ファッション科学生のエロイーズ。ある夜、196

【歌舞伎鳩】狐狸狐狸ばなし・京鹿子娘道成寺ほか(壽 初春大歌舞伎)

一度は見てみたかった道成寺ものがかかるというので喜び勇んで行ってまいりました。一月は昼の部を幕見と、夜の部を見物してきて、踊りの演目がとっても良かった。それから尾上右近さんが素晴らしかったですね。 演目を見ていて思い出したんだけれど、あまりの美しさに見惚れた坂東玉三郎の映像は、もしかして京鹿子娘道成寺 鐘供養の場の一番最後のシーンだったのかもしれない。 👒は鳩的好きな演目 👒 狐狸狐狸ばなし ざっくりとしたあらすじ: 手拭い屋を営む伊之助(松本幸四郎)は、元は上方の女方役