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【オペラ鳩】美しきエレーヌ(東京芸術劇場コンサートオペラ vol.9)

オペラ、聞いてみたくないですか!? 鳩はもうずっと聞いてみたかったのですが機会もなく、先日ようやく突撃してきました。演奏会形式ということで、演劇的な舞台装置や台詞があるわけではなく、全曲通しの演奏会という感じ。欲を言えば演劇的な感じのあれを見たかったのですが、まあすごい値段するのでね……それが尻込みしていた理由のひとつですし仕方がない。

演目はジャック・オッフェンバック「美しきエレーヌ」
演目を元から知っているかと言われると、まったく知らなかったわけですが、どうやら日本で上演されるのがかなり稀というか、ほぼないものだったようです。なかなかレアでお得だったよう。
オッフェンバックというと、「ホフマン物語」とか「天国と地獄」あたりが有名なんですかね? 鳩は"オランピアのアリア"が好き。ホフマン物語の中の一曲で、機械人形のオランピアをお披露目しているところですね(ホフマンがそれを見て惚れちゃう)。演出によってかなりいろいろあるのが見ていて面白いです(これとかこれとか好き)。あとあの蝿の……なんかすごいやつ……あれもオッフェンバックですよね(天国と地獄の中の一曲だったらしいと今知りました:蝿の二重唱)。ともかくコミカルというか、なんかだいぶ世俗的な曲を作った人という印象です。




作品概要

 『美しきエレーヌ』は、ドイツに生まれフランスに帰化した作曲家ジャック・オッフェンバック(1819〜1860)による3幕のオペレッタ(オペラ・ブーフ)である。台本はアンリ・メイヤックとリュドヴィック・アレヴィによるもので、1864年12月17日にパリのヴァリエテ座で初演された。(中略)
この作品は、トロイア戦争の発端となったギリシャ神話「パリスの審判」を基に、パロディ劇として仕上げられたものである。

「美しきエレーヌ」パンフレットより

あらすじ

 舞台は神話時代、ギリシャのスパルタ。「この世で最も美しい乙女」と名高いエレーヌ(砂川涼子)は、夫であるスパルタの王メネラオス(濱松孝行)との平凡な夫婦生活にうんざりしている。「どうか愛をお与えください」と切望するエレーヌ。そんな彼女の前に、羊飼いに扮したトロイアの王子パリス(工藤和真)が現れ、エレーヌは彼に一目惚れする。パリスの本当の身分が明かされると、エレーヌは仰天。実はこの二人、出会うべくして出会った二人であったのだ。そうこうしているうちに、パリスと結託している予言者カルカス(伊藤貴之)の手によって、メネラオスは訳も分からないままクレタ島行きを命じられてしまう。
 夫不在の部屋のなかで、未来を案じるエレーヌ。そこに、「そろそろ僕と一緒にならないか」とパリスがやって来る。最初はためらいをみせていたエレーヌであったが、夫との生活に飽きていた彼女は、まんざらでもないご様子。「これは夢の中だから」と言って、ついにパリスとの甘い時間を過ごすことに。しかし、そこにクレタ島に行っていたはずの夫が突然帰ってきてしまう……。妻の浮気現場を目の当たりにして唖然とするメネラオス。騒ぎを聞きつけ集まる人々。追い出されるパリス……。さあ、どうする、エレーヌ!(指揮:辻 博之 台本・構成演出:佐藤美晴)

美しきエレーヌ / 東京芸術劇場

感想

音楽について

前述した演奏会形式ということで、はじめそれをわかっておらずチケットを取ったので、気づいた時にちょっとしょんぼりしたのですが、始まってみると全然、何も憂う必要などありませんでした。
オーケストラが演奏しつつ、歌手の方が少しだけ演技をし、進行を声優さんが行うという感じの演出。声優さんの進行の回し方や、字幕なんかが結構はっちゃけており、でもそれがおそらく原曲というか、演劇の雰囲気を捉えているんだろうなとわかるのが良かった。まあでもこれはオッフェンバックの他の曲を多少なりとも知っていたのが良かったのかも。1回休憩のだいたい2時間程度の上演でしたが、コミカルに進行していくし、お話の内容もなかなかなので、集中力が切れることもなくとても見やすかったです。

生音で全曲通して聞いていて、やっぱり序曲がいいなあと再確認しました。演劇が進んでいく中で出てくる音楽のフレーズが、序曲に散りばめられていたりするのがいいですよね。これから一編の物語を見るぞ〜!という、期待感を持たせてくれる。

ひとつずつの曲に関しては、擬音のようなスキャットのような歌い方の歌詞(歌詞?)の部分が結構あり、声を使った音の表現として面白いな〜と思いました。人を追い詰めたりしているシーンだったりもするのですが、音楽として聴かせるので聞いていても心地よく楽しい。これはオッフェンバックの曲の特徴だったりするんだろうか。

また、オペラというものを(おそらく)初めて生で聴いたのですが、すごいな〜(月並み)という感想。人間の生の声を楽器の音に負けずに聴かせつつ、強弱と表現がつくのは圧巻ですね。特に聴かせどころのようなところの音の広がりと響き方がとても心地よい。人間の声ってあんなに心地よく響くことがあるんだな。音の高さとして?テノールの声の響き方が大変素敵で、この音域が一番心地よく感じるのはなんでなんだろうと思った。
あとカウンターテナーという音域の人を初めて知った。舞台から遠い席だったので、初めは女性かと思ったのですが、男性が女性の声の音域を出している?とわかり驚き。なんか不思議な音の厚みがあり、それが雫のように扱われるので聞いていて面白かった。

オーケストラの生音は昔聞いたことがあるような……ないような……(たぶんある)というところで、久しぶりに体感しましたが、思ったほど音の恐怖感がなく、これも良かったです。やはり弦の音って柔らかくて恐ろしくないものだなと思いました。金管楽器の音はちょっと怖い(ライブやらなにやらよく出かけるくせにでかい音が怖い鳩、だいたいいつもこういうところに行くと、始まるまで恐々しています。損すぎるので怖くなくなりたい)。


お話について

神話ベースということで、ひっちゃかめっちゃかだろうことは大いに予想されましたが、なかなかどうして……。間男に掻っ攫われちゃったじゃん……。
神話なので、実際のお話はこの前後のなにかがあるはずではありますが、まあここだけ抜き出してみると、そこまでメネラオスも悪そうでなく、不憫ですね笑
メネラオスは浮気された方なのに、浮気していた妻(エレーヌ)に「帰ってくる間が悪い!つまりあなたのせいです」とか言われてるのさすがにおかしくて笑ってしまった。そんな不憫なことある……? 周りの王たちも、す〜ぐ人に言われたことでころころ意見変えて風見鶏をやっているのでなんも信用ならない。味方がいないメネラオス。その場にいる全員に「島へ行け!」コールされるのも普通にひどい笑
エレーヌはエレーヌで、浮気した側なのに「私は一度断ったの!(鳩注:そうだっけ?)パリスに迫られたからだし、そもそもあれは夢だったの!(鳩注:実際そうは思っていたっぽいが)」からの「だから私は悪くないわ!」なのであまりにメンタルが強すぎる……と思ってしまった。いいですね奔放な娘。
神話って結構はちゃめちゃやりたい放題浮気話なんかも多い印象で、読んでいてさすが人間の上に立つ神と思うことも多いのですが、それをこんなに楽しい感じに演劇化できるんだなあと思いました。音楽や歌声の力も相まってほんとうに面白かった。オペラというと「カルメン」とか「椿姫」とか「蝶々夫人」とか、ねえ……こう重たい悲恋とかの印象も強いので、こういった笑いを誘う演目もあると知れたのが良かったです。

「美しきエレーヌ」とても面白かったので、演劇形式でのオペラがもっと見てみたくなりました。次こそは必ず。



公演概要

東京芸術劇場コンサートオペラ vol.9
オッフェンバック/喜歌劇『美しきエレーヌ』
2024年02月17日 (土)

演奏会形式/全3幕/フランス語上演/日本語字幕付
東京芸術劇場 コンサートホール

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