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【無料】基礎から分かる水産用語<203> 栽培漁業とは

みなと新聞で毎週火曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。
みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。


栽培漁業とは

 水産生物の種苗を生産して自然の水域へ放流し、成長した魚介類を漁獲すること。水産資源の回復、増大による沿岸漁業の発展と、水産物の安定供給が目的。死亡率が最も高いとされる卵から稚魚の時期を人工的に管理し、自然界で生き残りやすいサイズにまで育てる。水産庁によると、放流した都道府県の区域を越えて回遊し漁獲するマダイなどの「広域種」と、放流した地先で漁獲するホタテガイなどの「地先種」に分類される。

 全国豊かな海づくり推進協会によると、栽培漁業の代表的な水産生物として、魚類ではヒラメ、マダイ、トラフグなど7種、甲殻類ではクルマエビ、ガザミ、貝類ではアワビ類、ホタテ、アサリがある。水産庁によると今後、漁業者からのニーズが高いキンメダイやアカアマダイなどの種苗生産や中間育成技術の開発も進めるという。

 2019年の種苗放流数はホタテが最も多く31億8700万個、次いでクルマエビが7351万9000尾、ウニ類が6326万1000個、ヒラメが1705万6000尾だった。

 近年、種苗生産技術者の高齢化が進む中、水産庁は各都道府県が連携した計画的な人材確保に努めている。資源が急減し迅速な放流が必要な場合に備えて、放流技術の体系的なマニュアル化にも取り組んでいる。

みなと新聞本紙2024年5月7日付の記事を掲載