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【itさんについて―非制御の主体と経験】第1回

坂井講師が「itさん」というキーワードで、「○○が気になる」「いつも苦しい」「もうずっと悩んでいる」という状態から抜け出すヒントを寄稿してくれました。
3回連続掲載です。
 
【itさんについて―非制御の主体と経験】第1回
坂井洋介
 
私は多分に神経質で、自分で強迫神経症ぎみの性格だと思っています。
しかし、だからこそ、どうしたらその性格が少しでもおおらかになるのか、楽に人生を渡っていけるようになるのかを、人よりも長い時間と強いエネルギーを使って探求してきました。
 
その答えの1つがもちろん、マインドフルネスです。
が、今回お話するものは、完全にマインドフルネスとはいえないものだと思っています。
それを私は勝手にitワークやitさんと呼んでいます。
そのitについて今回は説明します。
 
マインドフルネスとはいえないとは書きましたが、まったく異なるものではなく、どちらかというとitはマインドフルネスの一部といえるでしょう。
マインドフルネスに限らずあらゆる瞑想には、制御と受容という相反する2つの要素のバランスをとる必要があると思っています。
私は、その受容に特別の価値をおいています。
受容というものに実体があるわけではなく、制御が静まったとき、弱まったとき、それを受容と呼んでいるという感覚です。
そこでは制御するという意図が限りなく少なくなります。
普段ものを制御する主体は自分なので、受容の知覚や経験は自分という感覚の少ないものになります。
このときの私という感覚の薄い、知覚・経験の主体を私と呼ばずにitと呼んで区別しているのです。
 
神経症や強迫神経症の人は、この受容と逆の要素である制御性、あるいは制御したいという欲望がとても強いと感じます。
制御性が弱まること、つまり受容性が増すことが、心のバランスをとるために良い影響を与えるのではないか、というのが私の体験からくる考えです。
特に神経質でない人も、何かこだわりや強い執着があるときには、同じような状態、制御したいという欲が強くなり、受容性が減った状態にあるのではないでしょうか。
その場合、ここで書かれるitが役に立つかもしれません。
 
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3回連続掲載です。明日に続きます。