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【itさんについて―非制御の主体と経験】第2回

制御性(思うようにしたい気持ち)が弱まった状態=itが与えるよい影響について、坂井講師の寄稿2回目です。
 
【itさんについて―非制御の主体と経験】第2回
坂井洋介
 
【itさんの性質】
itさんが主体となっているとき、私たちは経験を制御しようとしていません。
それゆえ、経験をあるがままにとらえます。
経験にバイアスがかかるのは、ある意味、制御したいという思いのためだからです。
ここでいう「あるがままの経験」というのは、起こった事象を放置している、思い込みのバイアス・フィルターをかけない、などといった意味です。
 
それは、同時に、事象を受け入れているということです。
itさんのメリットとは、事象を抵抗せずに受け入れるから、その事象による苦しみはなくなる、または、少なくなるということです。
 
【本来の状態】
執着している内容について、私たちは何らかの制御を加えて解決しようとしがちです。状況を制御したり、感情を制御したりといった形で。
しかし、制御性の過剰によって苦しい思いをしている人にとって、「自分の努力の(つまり制御の)結果として執着が消える」という考えは、心の自然な状態とずれがあるように思います。
 
心の自然な状態は、制御せずとも川が流れているように動いているものだと考えます。
実は、いつでも、ネガティブな問題に執着しているときも、それがないときも、今経験していることに心は使われているのであって、流れるように経験が移り変わっていく以上、心も自然に流れているのではないでしょうか。
そのネガティブな問題は、それを考えている瞬間は、まるで流れをせき止めるダムのように見えているかもしれないけれど、実は経験も心も流れていて、問題を忘れて動いている時間もあるのではないでしょうか。
まったく別のことを考えているときも、1日に何度もあるのではないでしょうか。
それが、自然な状態ではないかと思います。
悩みやネガティブな問題はまったく解決していないけれども、それが心から消えている時間も確かにある。
それを実際に経験することで、このあと説明する『常在の感覚』が抜けて、問題も一時的存在であることが実感できるかもしれません。
もちろん、問題は存在しているのですが、そこに付随する常在の感覚(この問題はいつもあるという感覚)が薄い…、という感じです。
常在の感覚のないネガティブな問題は、棚にあげやすいものになります。
itさんを知ることは、ただ、問題を一時的に脇に置いておけるようになるだけにすぎません。
それでも制御過剰で苦しんでいる人にとって、一時的であっても問題から解放されることは、とても楽になれることだと思います。
 
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3回連続掲載です。明日に続きます。