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危機を救った少女の決断ーTHE LEGEND OF THE BLUEBONNETー心洗われる美しい民話


今回ご紹介する絵本は、テキサスに伝わる民話です。


ブルーボネットとは花の名前で、
アメリカのテキサス州の州花です。
(表題に使った写真がその花です。)

もしも、春先にテキサスに訪れる機会があって
ブルーボネットの花が咲いているのを見かけたとき

この花の背景にある、この物語を知っていたら
ただのきれいな花、では終わらずに
感慨深い想いが、あなたの心を満たすでしょう。


たとえ、そんな機会はなかったとしても
一つのストーリーを知っていることで
見る風景の印象がまったく変わるって
素敵なことだと思いませんか?


あなたの世界観をちょっとだけ広げる物語を
是非味わってみてください。



◇◇◇◇◇

THE LEGEND OF THE BLUEBONNET

by Tomie DePaola


“Great Spirits, the land is dying. Your People are dying, too,”
the long line of dancers sang.
“Tell us what we have done to anger you. End this drought. Save your People.
Tell us what we must do so you will send the rain that will bring back life.”

「偉大なる霊よ、大地は死にそうです。
あなたの民も死にかけています。」

踊り子たちは長い列を作って歌いました。

「私たちがあなたのお怒りに触れたのなら、
どうぞ、何が悪かったのかお伝えください。

どうか、この旱魃を終わらせ、
あなたの民をお救いください。

雨を降らせ、生命を取り戻すために
私たちは何をすべきか教えてください。」

For three days,
the dancers danced to the sound of the drums,
and for three days, the People called Comanche
watched and waited.
And even though the hard winter was over,
no healing rains came.

3日間の間、踊り子たちは太鼓の音に合わせて踊り
そして、3日間の間、コマンチと呼ばれる人々は
見守り、待ち望みました。

厳しい冬は終わったのに
未だに癒しの雨は、降る気配がありません。

Drought and famine are hardest
on the very young and the very old.

小さな子供と年老いた者にとって
旱魃と飢饉は、とても残酷なものです。

Among the few children left
was a small girl named She-Who-Is-Alone.
She was sat by herself watching the dancers.
In her lap was a doll made from buckskin―a warrior doll.

生き残った数少ない子供たちの中に
“一人ぼっちの彼女” という名の、幼い女の子がいました。

彼女は一人で座り、踊り子たちを見ていました。

膝の上には、鹿の皮でできた人形― 戦いの人形 ― 
がありました。


The eyes, nose and mouth were painted on
with the juice of berries. It wore beaded leggings
and a belt of polished bone.
On its head were brilliant blue feathers
from the bird who cries “Jay-jay-jay.”
She loved her doll very much.
(英文の引用はここまで)


その人形の目と鼻と口は、果実の液で描かれ
ビーズ刺繍のズボンをはき
磨かれた骨のベルトを着け

頭には、“ジェイジェイ”と鳴く鳥の
美しく鮮明な、青い羽根が付けられていました。

彼女はその人形が大好きでした。

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“一人ぼっちの彼女“ は、人形に言いました。

「もうすぐ、シャーマン (呪術師) があの丘の頂上に行って
大いなる霊からの言葉を受け取るわ。
そしたら私たちは、もう一度雨が降り
大地に緑がよみがえるために、何をすればいいのかがわかる。
バッファローもたくさん増えて、人々はまた豊かになるの。」


日が沈む頃、シャーマンは戻り
人々は集まって輪になり、彼はそこで話しました。


「私は、大いなる霊の言葉を受け取った。」

「人々は、利己的になってしまった。
何年もの間大地から奪い続け、何一つ返していない。
大いなる霊は、人々はいけにえを献げなくてはいけない、と言った。

私たちの内で最も価値のある所持品を、
焼き尽くす献げ物として献げなければならない。

その献げ物の灰を、風の家のある大地の4箇所に撒くのだ。
このいけにえが献げられたら、旱魃と飢饉は終わる。
生命は大地に、そして人々の元によみがえる。」


人々は、お告げをくれた大いなる霊に
感謝の歌を歌いました。


「大いなる霊が欲しがっているのは
まさか僕の新しい弓じゃないよな」

と、ある戦士は言いました。

「まさか私の、この特別な毛布でもないわよね」

と、ある女性も続けて言いました。

このように人々は、偉大なる霊に献げるものについて
よく考え、話し合いました。


“一人ぼっちの彼女” は、
その大切な人形を強く胸に抱きました。

彼女はその人形を見つめ

「あなたは、私にとっての一番大切な持ち物。
あなたこそが、大いなる霊が求めているものだわ。」

彼女は、自分がするべきことをわかっていました。


話し合いのために灯された火は消え
ティピーの扉は、ぱたぱたと閉まり始め

その女の子は自分のティピーに戻り
時を待ちました。

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その夜、外はしーんと静まり返っていました。
遠くで鳴く夜鳥の声が、かすかに聞こえるだけです。

ティピーの中で、人々は皆眠りにつきました。
“一人ぼっちの彼女” だけがまだ起きていました。

彼女は、ティピーを照らす灯し火の灰の中に
まだ燃え残っている一本の棒を取り
夜中に、静かに、外に出て行きました。


彼女は、大いなる霊がシャーマンに告げた
丘の上のその場所に走って行きました。

月のない夜空に、満天の星々が広がっています。


「大いなる霊よ、」
“一人ぼっちの彼女” は言いました。

「ここに私の、戦いの人形を献げます。
これは、飢饉で亡くなった私の家族からもらった
たった一つの私の持ち物です。
これは、私にとって最も価値あるものです。
どうか受け入れてくださいますように。」


彼女は木の枝をかき集め、灯し火の棒で火を点けました。
木の枝が燃え始める様子を
幼い少女は見つめていました。


おばあちゃん、おじいちゃん、
お母さん、お父さん、そして沢山の人々

彼らの苦しみと飢えを思いました。

そして、彼女の気が変わってしまわないうちに、
その大切な人形を、火の中に投げ入れました。

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彼女は、炎が燃え尽き、灰が冷めるまで
じっと見つめていました。


そして、両手いっぱいに灰をすくい上げ
風の家のある大地の、北から東、南から西へと
灰を撒き散らしました。


そして、彼女はそこで眠ってしまいました。


朝日の光で目が覚め、丘一面を見渡してみると

大地は一面、花々で覆われていました。
人形が頭につけていた羽根の青色とまったく同じ
輝く青い、美しい花々でした。


人々がティピーから出てきたとき、彼らは
自分たちが目にしたものを信じられませんでした。

人々は、“一人ぼっちの彼女” と共に丘の上に集まり
奇跡的な光景を目の当たりにしました。

その花々は、大いなる霊からの、赦しの証でした。


人々が、大いなる霊に感謝の歌と踊りを捧げているとき
あたたかな雨が降り始めました。


そして、大地は息を吹き返しました。


その日から、その小さな女の子は
”一人ぼっちの彼女” ではなく

“民を心から愛した人”
と呼ばれるようになりました。


大いなる霊は、春が来る度に、
小さな少女が差し出した犠牲を覚え

今はテキサスと呼ばれているその丘と渓谷に
美しい青い花をいっぱいに咲かせてくれます。

今現在に至るまで。

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最後までお読みくださり、ありがとうございます。

あなたの毎日が、あたたかな光に包まれて
良い氣に満ちて過ごせますように。

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