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パーソナライゼーション2.0:マーケ用語徹底解説

どの業界にもあるように、マーケティング業界にも数多くの専門用語があります。日常生活では耳にする機会がないこともあり、ふんわりとした理解のまま、その用語を使っていることもあるのではないでしょうか。

今回、解説する「パーソナライゼーション2.0」とは、顧客一人一人に最適化した情報を届ける「パーソナライゼーション」の発展形で、アドビが提唱している考え方です。

これまでのパーソナライズは、顧客特定のための個人情報・属性情報をいかに収集するかが主題になりがちでした。一方で、WebブラウザのCookie規制を始めとした法整備が進むなど、過度な個人情報の収集によって顧客を特定するという手法は時代にそぐわなくなっています。

パーソナライゼーション2.0は、そうした現状を踏まえ、より現代的な手法への転換を模索するという意味で、用いている言葉です。

監修:安西敬介(アドビ デジタルエクスペリエンス事業本部 ソリューションコンサルティング本部 マネージャー 兼 プロダクトエバンジェリスト)


そもそもパーソナライゼーションとは?

パーソナライゼーション2.0を考える前に、まずは既存のパーソナライゼーション(パーソナライズ)について説明します。

例えば洗剤を買ったら詰め替え用パックが、プリンターを買ったら対応するインクやトナーが合わせておすすめされるのは、パーソナライゼーションの一形態です。

しかし、洗剤を買った人に詰め替えパックを提示するだけではなく、過去に詰め替えパックを購入してくれた人に再度おすすめしたほうが効果が大きいかもしれません。もしくは、今までに買ったことのない洗剤を提案したほうが、購入につながるという可能性もあります。

顧客の行動は単純ではなく、「A商品を買った人なら、B商品を必ず買う」とは限りません。実際のパーソナライズは、過去に購入した商品や検索履歴、おすすめした商品に対する反応など、顧客に関する各種データを総合的に分析する必要があります。

そんなに難しいパーソナライゼーションを、なぜ実施する必要があるのでしょうか?

答えは、顧客接点を強化することで自社の事業を強化するためです。先ほどの例で言えば、ECサイトで洗剤を売るだけでなく、洗剤の詰め替えパックを提案することでサイトのPV数が増えます。さらには実際に詰め替えパックの購入につながれば、売上の底上げにもなるでしょう。

顧客側も「気付かなかった商品をまとめて買えた」となれば、満足度は高まるはず。顧客が不快にならない適切なパーソナライズは、ECサイトのみならず、webでビジネスを展開する全ての企業が注目すべき施策だと言えます。

パーソナライズで本当に大事なのは「興味」

これまで多くの企業では、顧客の年齢や性別といった属性を利用してパーソナライズしてきました。精度の高いパーソナライズのためには、顧客をどれだけ把握しているかが重要と考え、年齢や住所、性別といった個人情報など、より多くの情報を取得しようと考えていたのです。

しかし、こうした選別はパーソナライズというより広告向きのアプローチで、実際にここから顧客体験を変えることは簡単ではありません。しかも、過度な情報収集は、使い方によってはプライバシー侵害につながりかねないという危険性もあります。

一方で、そもそも個人情報はそんなに要らないのではないかとも考えられます。顧客の年齢や住所よりも「カメラが欲しい」「風景写真を撮るのに適したレンズが欲しい」という顧客の思考が分かることの方が、精度の高いパーソナライズに役立つのではないでしょうか。つまり顧客の行動ベースで何ができるかを分析できれば良いという考え方です。

例えば、東京都在住の20代男性がいたとします。彼が直近でECサイトで検索したのがパートナーにプレゼントする女性用の時計だった場合、彼の属性に合わせて男性用の時計をレコメンドしても意味がありません。つまりその人が男性か女性かではなく、今探しているものに合わせて提示するのが、本当のパーソナライズではないでしょうか。

パーソナライズの肝は「属性」ではなく「興味」なのです。

パーソナライゼーション2.0ではプライバシーに配慮

これからのパーソナライゼーションについて、デジタルマーケティングのグローバル企業、EconsultancyのAshley Friedlein氏は、以下のように定義づけます。

シンプルで直感的でパーソナライズされていることを意識させない
ユーザー個人のプライバシーを犠牲にすることなく提供され、ユーザー自身がパーソナライズに利用するデータをコントロールできること
また、個人を特定するデータを必要とせず、データを機械学習により予測し、コンテクストに応じたリアルタイム性をもったサービス提供を行えるようにする

ここで語られるプライバシーデータに配慮した流れ自体は、GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カルフォルニア州消費者プライバシー法)、改正個人情報保護法、改正電気通信事業法などを中心に、顧客データの取り扱いなどにおいて盛り上がっています。同時に、企業の中でどう利用しているかを明確にしていくことが求められているのが現状です。

今後、よりデータごとに利用目的を提示し、データを取得、管理していくことにおいて、この流れは非常に重要なポイントになってきます。だからこそ、不用意に個人情報をこねくり回さないでパーソナライズを提供していく仕組みや取り組みが重要になってくるのです。

そこで注目されているのが、パーソナライゼーション2.0です。

これまでのパーソナライゼーションは、顧客のCookieなどの識別情報によって、個別に設定されたものでした。webサイトやメール、モバイルアプリなどのチャネルごとに個別に設定されていたため、顧客にとって情報が分断しており、プライバシーへの配慮も不足していました。

しかし今後は、物理的な世界とデジタルの世界をまたぐ大規模なものとなり、一貫性を持っていくでしょう。例えばオンラインで商品を購入し、実店舗でその商品を受け取るというシステムを導入している小売業はすでに日本にもあります。企業の対応は顧客の行動や高度な予測によってリアルタイムに変化し、かつプライバシーを重視したものになっていくのです。

こうして「顧客の背景の解像度を上げる」ことで、よりパーソナライズしたアプローチをしていくことが重要だと、アドビは考えます。

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