どの業界にもあるように、マーケティング業界にも数多くの専門用語があります。日常生活では耳にする機会がないこともあり、ふんわりとした理解のまま、その用語を使っていることもあるのではないでしょうか。

今回、解説するオウンドメディア（Owned media）とは、企業や団体が自社で保有・運営しているメディア（媒体）のことです。具体的にどのようなものがあるのか、企業の情報発信は他にどのような種類があるのかなどを見ていきます。

オウンドメディアとは

オウンドメディアは、主に「インターネット上で展開する自社運営型Webメディア（情報発信を目的としたWebサイト）」を指しますが、広義の意味ではパンフレット、カタログ、定期刊行型の広報誌といった紙の媒体なども含まれます。

企業の情報発信形態は3種類、「トリプルメディア」って何？

マーケティングの観点から考えた場合、メディアはオウンドメディアの他に「ペイドメディア」「アーンドメディア」があり、オウンドメディアを含めたこれら3つのメディアを「トリプルメディア」と総称します。

ペイドメディア（Paid media）
情報を発信したい企業が費用を払って、広告という形式で情報を掲載してもらうメディアのことを指します。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌から構成される「マスコミ4媒体」や商業メディアのWebサイトなどの広告掲載枠などがそれにあたります。

アーンドメディア（Earned media）
「Earned」は「（信用を）獲得する」という意味で、情報を発信したい企業ではない第三者視点のメディアを指します。SNSやブログ、口コミサイトなど消費者が情報を発信するソーシャルメディアが主に挙げられ、ユーザー同士がつながって共感することで情報がシェアされていくのです。商業媒体においては、広告ではなく編集記事などのコンテンツを掲載している新聞や雑誌、テレビなどのマスメディアもアーンドメディアです。

同じマスメディアでもペイドメディアとアーンドメディアの2種類があることになりますが、「情報発信したい企業がお金を出して掲載できるかどうか」の違いです。また個人のブログであっても、企業からお金を受け取って書いた広告記事は「ペイドメディア」です。

ペイドメディア、アーンドメディアとは何が違う？

ペイドメディア、アーンドメディア、そしてオウンドメディアは、メディアの特性が異なります。

ペイドメディアは広告出稿という費用が発生するものの、発信する情報を企業側がある程度コントロールできるため、キャッチコピーや画像、情報解禁のタイミングなどを設定し、すでに多くの読者を持ったメディア上に掲載することができます。

一方、アーンドメディアでは発信される情報を企業がコントロールできません。そのぶん、「アーンド」の言葉が示す通り、記者などの取材による専門的な情報や、消費者が実際に利用したクチコミ情報など、より信頼を獲得しやすいという性質があります。

そして今回取り上げるオウンドメディアは、情報を発信したい企業が自ら運営するので、アーンドメディアよりも自由な情報発信が可能です。そのぶん、ペイドメディアと違ってメディアを見てくれる読者を自分たちで一から集める必要がありますし、メディアを運営する人件費などのコストも発生します。

企業が運営するSNSも同様で、開設するためのデザインやサーバー費用など直接的なコストこそかかりませんが、投稿する担当などの人的コストは発生します。

こうしたコストがかかるという負担はありますが、オウンドメディアのメリットは、企業の思いを他のメディアを介することなく直接届けられることにあります。アーンドメディアには取り上げてもらえない、ペイドメディアではコストやターゲットが合わないというときであっても、企業が自社の製品やサービスにかける思いを自ら発信できるのがオウンドメディアの魅力です。

また、トリプルメディアを組み合わせることも重要です。オウンドメディアでの発信がアーンドメディアで話題になる、ペイドメディアの記事をオウンドメディアで補足するなど、複数のメディアが連携することで、メディアのメリットをより活かすことができます。

前述の通り、オウンドメディアはインターネット上だけでなく、パンフレットやカタログ、さらには製品のパッケージも自社の情報を発信するという意味ではオウンドメディアと言えます。企業自ら情報を発信し、他のメディアとも連携することで、自社の情報を増やして消費者とのエンゲージを高めるために、オウンドメディアは非常に有効な手段といえるでしょう。

以下は、Webメディアの中で代表的なオウンドメディアです。

LIGブログ／株式会社LIG
テクノロジーやデザインに関する最新トレンドやノウハウを発信。社員自らコンテンツを執筆。

サイボウズ式／サイボウズ株式会社
“新しい価値を生み出すチームのメディア”をキャッチコピーに、主に働き方に関する情報を発信。社内外のメンバーがコンテンツを執筆。

北欧、暮らしの道具店／株式会社クラシコム
ECサイトとしてスタートしたが、現在は世界中の商品やオリジナル商品、エンタメ情報など幅広く発信。社内外のメンバーがコンテンツを執筆。

ジモコロ／株式会社アイデム＆株式会社バーグハンバーグバーグ＆株式会社Huuuu
どこの地元にもコロがっているような魅力ある「場所」や「仕事」「小ネタ」など、地元愛を感じてしまう話の数々を集めて発信。社内外のメンバーがコンテンツを執筆。

もちろん、この記事が載っている「みんなのデジタルエンゲージ」も、アドビとテクノコアが運営するオウンドメディアです。