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ゴリは人間みたいな犬

17年前に西表島に住んでいたエピソードを友人に話している中で好評だった話を書いてみたい。


住んでいた干立村の前の浜

西表島に渡航して最初に住み込みで働いていた民宿にゴリという犬がいた。雑種の犬で放し飼いだった。ゴリは何ていうか、犬らしくない犬だった。非常に賢い犬で、犬っぽく振る舞った方がいい場面と、素の時を使い分けていた。素のゴリは人間のオッさんみたいだった。

例えば宿泊客の若くて綺麗な女性の前では犬らしく振る舞い「かわいい〜♡」と言われれば近づいていき寝転がって腹を見せてクネクネさせて喜んで撫でられたが、私が「あ、ゴリ」と言っても、スンとした顔で横目でチラ見してどっかに行く。気が向くと遊べと言わんばかりに着いてくる。犬は縦社会で自分より下の存在をひとりは置くと聞くが、恐らく私はゴリ以下と思われていたに違いない。

そんな中、私は皮膚が弱い為に民宿の水仕事で手がボロボロになっていった。西表島には病院は無く、「Dr.コトー診療所」みたいな診療所がある。私が働いてた民宿からは自転車で10分くらいなので休憩中に行こうと自転車置き場に行くと、珍しくゴリがふらっと私のところに寄って来た。自転車に乗ろうとする私をゴリが見上げているので「今から診療所行くから遊ばれへんで」と言うと、突然ゴリは猛ダッシュで走り出した。


診療所に向かう途中の橋

「何やねん、ゴリ」と思いながら自転車に乗って診療所に向かうと、ゴリも診療所方向へ走っていた。「まさか私の道案内してんのか?」と思いながら自転車を漕いで診療所に着くと、ゴリは診療所の前で伏せていた。

「ゴリ、お前…」と思ったが、どうせすぐまたどっか行くんやろうとたかを括っていた。診療所は混んでいて、だいぶ待ってから受診した。ゴリのことなど忘れて診療所を出ると、何とまだゴリが居るじゃないか!!

面白くなった私はゴリがどこまで理解してるのか試そうと「ゴリ、今度は私、郵便局行くから」と告げるとゴリは立ち上がり、またも猛ダッシュで走って行った。ゴリを追いかけるように私も自転車を猛ダッシュで漕いだが追いつかない。そしてゴリはまた郵便局前に伏せていた。余裕の表情ですましている。

「ゴリお前…」となりながら郵便局の用事を済ませると、やはりゴリは待っていた。「次は星砂スーパーやで!」と告げると、またも猛ダッシュするゴリ。もちろん星砂スーパー前で、後ろ足で頭をかきながら待っていた。


今年訪れたらスーパー星砂は健在でした

「ゴリは一体どこまで理解してるんや…」と思いながら買い物を済ませてスーパーを出ると、ゴリは「次はどこや?」と言わんばかりに尻尾を振って待っていた。「ゴリ、もう用事終わって帰んねん」と告げるとゴリは尻尾を下げ「しょーもな!」と言わんばかりにフラフラとどこかに行ってしまった。

うちも犬を飼っていた時期があるので、何となく犬って人間の言葉を理解してるみたいだなぁ…と思っていたけど、ここまでくると何か不思議。ゴリは私を新しくやってきた後輩とか弟分とでも思っていたのだろうか。

ゴリはもうこの世に居ないけど、子孫は元気に暮らしているらしい。不思議な犬というか連れみたいなゴリにまた会いたいな。


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