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ECモール横断LTVを消費者個人ベースの実購買データから分析する

皆さんこんにちは。データストラテジストの古谷です。

製品をつくり、販売するメーカーにとって、販売チャネルをどのように決定するかはマーケティング上の重要課題です。
特にオンラインのチャネルにおいては、

  1. 大手ECモールに出店する場合、ひとつのサイトに絞るべきなのか、複数出店すべきなのか

  2. 集客力のある大手ECモールに出店するのか/直販(DtoC)で獲得するべきなのか

といった点が課題になることが多いのではないでしょうか。

本記事では、1. のテーマについて、複数ECモールを併用する消費者(以下、ユーザ)の購買傾向から、企業はどのような購買行動を促進していくべきかについて考えていきます。

分析要件

  • ソース:Mineds for EC Data

  • 期間 :3年間(2019年~2021年)

  • サイト:3サイト(Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング ※PayPayモールを含む)

  • 指標 :平均年間LTV(1年間のユーザ購買金額合計の平均)

  • 除外 :転売目的などと想定される外れ値を除外

疑問①:ECサイトを複数利用しているユーザにおいて、EC購買全体のLTVは高いのか?

Mineds for EC Dataのデータを用いた結果をみると、複数サイトを併用しているユーザはユーザ購買全体のLTVが高い傾向にあり、特に1サイト利用と3サイト併用ではLTVに4倍近く差があることがわかります。

利用サイト数別の1ユーザあたり年間LTV
利用サイト数別の1ユーザあたり年間購買件数
利用サイト数別の1回あたり購買単価

LTVはユーザを軸とすると以下の式で表すことができます

年間LTV = 年間購買件数 × 購買単価

それぞれの要素を深掘りしてみると、年間購買件数は年間LTVと同様にサイト併用数に比例して多くなり、一方で購買単価は併用数の増加に比例して微減はあるものの、ほとんど変わらないことがわかります。
このことから、サイト併用ユーザは購買の頻度が高くなり、相対的に、よりオンラインでの購買習慣が定着していることがわかります。

疑問②:ECサイトを複数利用しているユーザにおいて、個々のECサイトのLTVは高いのか?

複数サイト併用ユーザーの全体LTVが高まることはサイト毎のLTVに対してどのように影響するのでしょうか?
Mineds for EC Dataのデータを用いた結果を見ると、複数サイトを併用しているユーザは、単一サイト利用ユーザと比較して各サイトごとのユーザ購買LTVが高い傾向にあることがわかります。

利用サイト数別の個々のECサイトにおけるユーザLTV

結論

本調査結果から、複数ECサイトを利用しているユーザの方が全体LTV、ECサイト個別LTVともに高いことがわかりました。
この理由として、複数ECサイトを併用しているユーザは、オンラインでの購買体験により慣れており、積極的にオンラインサービスを活用していることが考えられます。

また、複数ECサイトを併用しているユーザは、単一利用しているユーザと比較してECサイト毎のLTVも高いことから、サイトの併用は個々のサイトにとってもメリットがあることがわかります。
企業によっては、ECモール単位で担当者が分かれているケースや、そもそもモール間を横断したユーザ軸での分析ができない、といった課題をお持ちであることも多いかと思いますが、ユーザの購買ポテンシャルを把握する場合、ECモール単体でのユーザ行動にとどまるのではなく、複数のサイトの併用を促すことや、その状況を把握することが必要となります。

つまり、ユーザのオンライン購買のトップラインを上げたうえで、その状況を把握しながらコミュニケーションを設計、実践していくことが重要となるのではないでしょうか。


最後に

マインディアでは、ユーザを軸としてオンラインアクションデータを蓄積、分析可能なサービスを提供しています。これによってユーザ単位の購買全体からインサイトを得ることができます。サービスにご関心をもっていただけた方は、ぜひ一度こちらからお問い合わせください!

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