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海ドラマガジン第82回『ミセス・アメリカ』過去のフェミニズム運動から学び未来へつなぐ

【海外ドラマファンのためのマガジン第82回】

2020年のエミー賞で10ノミネートという高評価を受けた『ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~』を日本でも視聴することができました。
2021年2月現在、WOWOWオンデマンドで視聴可能です。

エミー賞では、俳優部門に4名の女優がノミネートされ、シャーリー・チザム(黒人女性初の大統領指名選に立候補した女性)を演じたウゾ・アドゥーバが助演女優賞を獲得しました。

『マッドメン』(2007-2015)で、シーズン3&4に参加していた女性プロデューサー、ダービ・ウォラーが制作したこのドラマは、1970代、男女平等憲法修正条項(ERA)の反対派と推進派に別れた、女性活動家たちを描いています。

全9話のリミテッド・シリーズで、主人公のフィリス・シュラフリー(ERAに反対した女性)を、ケイト・ブランシェットが演じています。
1話ずつ、ひとりの女性にスポット当て、彼女たちが当時何をしていたかをフィクションを交えて描いていくスタイルです。

フィリスのERA反対運動は、サンドイッチを配ったりして夫を支える主婦らしさをアピールしながら運動を展開するのですが、この影響力がなかなか侮れなくて、実際にERAは、現在に至るまで成立に必要な38州の批准(※1)を達成していないのです。(※2)
専業主婦と言っても、ロビイストとして本も出版しているフィリスが、主婦の代表格として意見を言うのは少し違うかなという気もしますが、ERA推進派はそういったところを攻めて対立し、ERAの中身の議論というよりも、働く女性VS専業主婦という構図を作って争ってしまっています。

お互いに相手に敵対心を持って対抗してしまったことが、ERAの批准が進まない理由の一つだったのかなとドラマを見ていて感じました。

現代では1970年代よりも多くの人が、働きながら子育てをしています。
専業主婦から働く女性に立場が変わるかもしれないし、その逆もあるでしょう。

今の自分の立場だけを考えるのではなく、将来的な女性の働き方を見据えて議論していくことが重要だと、かつてのフェミニズム運動を見て思ったのでした。

今後放送があるか分からないので、各話の主人公と共にあらすじを記載しておきます。
ネタバレあります

第1話【 フィリス】フィリス・シュラフリー(ケイト・ブランシェット)

保守派で一度下院議員に立候補したが落選したフィリス・シュラフリーは、夫のフレッドに反対されたことから、再び出馬することをあきらめた。その代わりに、38州での平等権修正条項(ERA)の批准を阻止するためのキャンペーンに没頭する。

第2話【 グロリア】グロリア・スタイネム(ローズ・バーン)

『Ms』誌の編集長で、フェミニズム運動の顔としてファッションアイコンとしても人気のグロリアは、40歳を前にしてもあえて結婚せず、中絶や同一賃金など、女性の権利のために戦っていた。一方、フィリスは、地元イリノイ州でのERA批准を阻止するために、草の根キャンペーンを展開する。

第3話【 シャーリー】シャーリー・チザム役(ウゾ・アドゥーバ)

アフリカ系アメリカ人の下院議員で大統領候補のシャーリー・チザムは、1972年の民主党全国大会で指名候補に残ることを誓うが、最終的には候補者になれなかった。フィリスは、想像以上に反響を得たStop ERAキャンペーンを全国的運動にするために奮闘する。

第4話【 ベティ】ベティ・フリーダン役(トレイシー・ウルマン)

全米女性団体(NOW)の創設者であり、フェミニズムの顔ともいうべき存在のベティ・フリーダンは、ERA反対派のフィリスと討論会を行うが、暴言を吐き、フィリス側に勝ちを譲ってしまう。

第5話【 フィリスとフレッドとブレンダとマーク】
ブレンダ・フェイゲン(アリ・グレイナー)


フェミニストカップルのブレンダとマークは、先進的な存在。家事を手伝う理解ある夫とすごしながらもブレンダは、女性と不倫関係にあることに罪悪感を感じていた。そんなころ、フィリスとフレッド夫妻とのTV討論の話しが持ち上がる。完璧な妻ぶりを見せつけるフィリスだったが、実は法学部に行って勉強したいという気持ちを夫には反対され、憤りを感じていた。

第6話【 ジル】ジル・ラッケルズハウス(エリザベス・バンクス)

1976年の共和党全国大会の中で、ジル・ラッケルズハウスは、反ERA運動に対抗するため党を統一しようと試みる。ジルの夫ビルは、フォードがビルを副大統領候補に指名することを期待していた。フィリスは、さらに運動を拡大させようと、反ゲイを掲げる組織と協力しようとする。

第7話【 ベラ】ベラ・アプツーグ(マーゴ・マーティンデール)

反ERAの中心的存在として、顔が売れたフィリスは、昼食会で男性ウェイターにパイをぶつけられ、左目にけがを負った。元下院議員で全米女性政治委員会の共同創設者であるベラ・アプツーグは、フィリスのいない討論会で、反ERAを打ち負かす。

第8話【 ヒューストン】アリス・マクレイ(サラ・ポールソン)架空のキャラクター

1977年のヒューストンで開催された全国女性会議には、反ERAのメンバーたちも招待されていた。反ERAでフィリスの親友でもあるアリスは、女性たちの熱気に圧倒され、記者の質問にうまく答えられず落ち込む。ホテルのバーに行き、フェミニスト陣営の女性と知らずに仲良くなったアリスは、もらった薬をLSDだと知らずに摂取してしまいトリップする。全国女性会議に集まった主義の違う女性たちと、トリップしながらも交流して行くうちに、STOP ERAの理念に疑問を持ち始めた。

第9話【 レーガン】

カーター大統領は、女性の権利委員会(大統領委員会)の委員長ベラ・アブズグを解任した。しかし、グロリア・スタイネムや他のメンバーたちは、ベラを尊敬しており、みんなで辞表をたたきつけた。フェミニズム運動の新たな展開が期待される1980年、フィリスは、レーガンを支持し、内閣のポストに興味を示す。自分の活動もいよいよここまで来たかと自信たっぷりのフィリスだったが、レーガンが大統領に当選した後、電話で、ポストは他の人に決まったと言われてしまった。結局、フィリスも選挙の駒の一つだったのだ。


※1)1982年までに、全50州の「4分の3」の38州の批准が修正の成立要件だったが、35州にとどまった。

※2)#metoo運動が高まる中、2017年にネバダ州、2018年にイリノイ両州が批准し、2020年1月バージニア州が38州目の批准を実現。事実上は38州を達成したことになるが、期限の問題や、5つの州で批准が取り消されたことなどから、憲法の修正には至っていない。

参考記事
https://www.tokyo-np.co.jp/article/26266




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