【海外ドラマファンのためのマガジン第81回】

2月28日（現地時間）に発表されるゴールデン・グローブ賞のドラマ部門作品賞を予想しようと思い、過去の受賞作を調べてみました。
さらに、テレビドラマに贈られる賞、エミー賞の作品賞と比較してみると、面白い特徴がありました。まずは、表をご覧ください。

過去5年のゴールデン・グローブ賞とエミー賞ドラマ部門作品賞

両賞は、ノミネート期間が半年ずれています。
ゴールデン・グローブ賞　1月発表（前年1月から12月が対象）
エミー賞　9月発表（前年6月1日から当年5月31日が対象）

左側のゴールデン・グローブ賞ですが、毎年作品賞受賞作が違うのが特徴です。ところが、右側のエミー賞では、『ゲーム・オブ・スローンズ』が6年中4回作品賞を受賞しています。

過去6年で『ゲーム・オブ・スローンズ』は、両方の賞に4回ノミネートされていますが、エミー賞では作品賞を4回受賞しているのに、ゴールデン・グローブ賞では1度も獲得していないのは驚きでした。

エミー賞はアメリカのテレビ関係者が投票して受賞作を決めますが、ゴールデン・グローブ賞は外国人映画記者協会に所属しているメンバーが投票します。
その違いがあるにしても、『ゲーム・オブ・スローンズ』が一度も受賞していないのは、ゴールデングローブ賞では、エミー賞受賞作に票が集まりにくいという可能性もあります。

ところが、『ハントメイズ・テイル/侍女の物語』シーズン１は、2017年9月にエミー賞を獲得して、2018年の1月にゴールデン・グローブ賞を獲得しています。
『サクセッション』も同様にシーズン２が両方の賞を獲得しました。

ということは、単純にゴールデン・グローブ賞での『ゲーム・オブ・スローンズ』の評価が低かったのでしょうか。

もう一つ、エミー賞では『ベター・コール・ソウル』は5回もノミネートされているのに、ゴールデン・グローブ賞では過去6年間で一度もノミネートされていないのです。

ゴールデン・グローブ賞では、5作品しかノミネートできないので、最終候補に入る前に切られてしまっているのでしょう。ドラマファンには非常に評価の高い『ベター・コール・ソウル』を切ってしまうあたりが、ゴールデン・グローブ賞の特徴を表しているようにも思いました。

『ベター・コール・ソウル』は、海外ドラマの超人気作『ブレイキング・バッド』のスピンオフドラマで、シブい役者たちが、じっくり＆ゆっくりと世界を構築していく連続ドラマならではのスタイルです。
過去6年間だけのデータでは断言できませんが、ゴールデン・グローブ賞では、ドラマ的な作品よりも、映画的な作品を好む傾向でノミネート作を選んでいるという可能性もあります。

もし、「映画的な作品を好む傾向」があるとしたら、今回ノミネートされたのが少し意外に感じた『ラチェッド』の評価に注目です。
アカデミー賞でも高い評価を受けた映画『カッコーの巣の上で』に登場する看護婦を主人公にしたドラマなので、映画ファンは興味を惹かれるはず。
さらに、スター・ウォーズの並行世界の物語『マンダロリアン』が選ばれるという可能性も高いです。シーズン２は、スター・ウォーズファンにとっては、歓喜する展開でした。
この2作品のうち、どちらかが作品賞を獲得すれば、ゴールデン・グローブ賞では映画的な作品が評価されるという定義の信ぴょう性は高まります。

ドラマ的な要素をより重要視するのであれば、エミー賞でも評価の高い『ザ・クラウン』や、『オザークへようこそ』が順当に作品賞を受賞すると思いますが、判断が難しいのが『ラブクラフトカントリー』です。

黒人と白人の対立の歴史とＳＦ要素を融合したドラマで、人種差別、女性の活躍などタイムリーな社会問題を盛り込む内容でもあります。
製作総指揮には、ジョーダン・ピール、J・J・エイブラムスという名前もあり、映画とドラマの両方の要素をふんだんに盛り込んだ異彩を放つ作品です。

要は、どの作品が受賞してもおかしくないドラマばかり。今の段階で予想するとしたら……『ラブクラフトカントリー』に一票。

【ドラマ部門】作品賞2021

『ザ・クラウン』シーズン４　
Netflix (Left Bank Pictures / Sony Pictures Television)
『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』スターチャンネルEX　
HBO(HBO / Afemme / Monkeypaw / Bad Robot / Warner Bros. Television）
『マンダロリアン』シーズン２　
Disney＋ (Lucasfilm Ltd.)
『オザークへようこそ』シーズン３
Netflix (MRC Television)
『ラチェッド』
Netflix (Fox21 Television Studios)

※一部過去作の表に入力間違いがあったので訂正しました。2021年2月16日