過去に戻って人生をやり直したり、未来に行ってお得な情報を仕入れて現代に戻ってボロ儲け。

以前はタイムトラベルに対してそのようなイメージを持っていたが、とある作品に出会ってから一変した。

『あなたの人生の物語』という作品である。『メッセージ』というタイトルで映画化もされている作品だ。

この作品の影響を受けた今の私が考えるタイムトラベルのイメージは、まさに PC で動画を見ているような感じだ。それも何度も何度も見たことのある動画。

次に何が起こるのかを知っている状態で、Youtube 動画のシークバーのように自由自在に時間を変更できる。しかし、それは動画なので画面に手を入れて変えたりすることはできず、干渉することはできない。(といよりも、干渉しないことを自分は選ぶことを知っている。)

時間の流れがない言語を操るヘプタポットという宇宙人の言語を取得することで、主人公は新しい視野を得る。フェルマーの定理 (学術的に正しいのはフェルマーの "原理" らしい) の光のように、未来に起こることを事前に知っているかのように最適な解をとることができるようになる。

フェルマーの定理で光が常に最適な道を選ぶように、人間も常に最適な道を選んでいるのだ。だからこそ、人生の全体像が見える状態になってタイムトラベルできるようになっても私はそれを変えようとはしない。きっと満足した顔でその動画を見続けるだろう。何度も、何度も。

このように新しい言語を取得したことで新しい視野を得る体験は私も幾度となく経験しているので、この物語は難しい表現を多く使うけれどもとてもすんなりと入ってきた。日本語にはない外国語の表現を知って感嘆したり、逆に日本語にしかない表現の幅に圧倒されたり。

私はいずれ人間はタイムトラベルできる様になると確信している。タイムトラベルという言葉を飛び越えた能力を獲得するだろう。それもきっと宇宙人の助けなんていらなくて、このような素晴らしい芸術作品から生まれるんじゃないのかなぁ。