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遺影

「ちがうちがう、そうじゃ、そうじゃない。」

それが死んでからの第一声。

気付いたら、この世とオサラバしていた。

今でいうと『あの世』になるのか?

いずれにせよ、私は死んでいた。

幽霊ってやつになっていた。

棺に入った自分を上から見下ろすと、

死化粧が思いのほか似合っていた。

むしろ生きているときより顔色がいい。

ただ口紅の色が好みとは違った。

そりゃ化粧する人が私の好みを知っているはずもないので仕方がない。


問題は、写真だ。

棺の横に並んだ、遺影。

たぶん半年前の集合写真から切り取っている。

それくらいしか、親の手元には最近の写真がないんだろう。

私のスマホのカメラロールを探してもらえば、

もっとバッチリ決まったやつがあるのに。

かといってスマホのロック解除されてあれこれ詮索されるのは御免だ。

だとしても、なぜこの顔?

AIでもうちょっとマシにならんか?

合成している服もちょっとダサくない?

「この子は青色が好きだったから」

ってそれ小学生の時の話??

今でも青は嫌いじゃないけど、この青はセンスなくない・・・?

こんなことなら、遺影を準備しておくんだった。

そんなヒマなかったけど。


何を言っても、無駄。

だって、死んでるから。聞こえるはずもないから。

みんな泣きながら、花を棺に入れている。

こんなに惜しまれるような人生だったか?

意外にも多くの人が参列してくれている。

だとしたら今が人生のピークってこと??

じゃあ、もう言うしかないじゃない。

「Happy New Yeah!」