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「人間の生き方」を学んだ資料とその記録

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改めて読み直して気づいたこと、若い時には気づくことができなかったこと、年を重ねて経験してきたからこそ気づけたことを書いたもの
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記事一覧

角野栄子さんの『魔女の宅急便』で学ぶ~2023年「経済財政運営と基本方針」

多くの人達に知られている『魔女の宅急便』。キキがひとり立ちの時をむかえる場面では、お母さんのコキリさんと娘のキキの会話が丁寧に書かれています。お母さんが魔女で、自分が10歳になったら魔女になるかどうか決めなくてはならない、という決まりがあるのです。 その二人の気持ちをそれぞれ汲み取り、塩梅(あんばい)よく入ってくるお父さんのオノキさんは、お母さんから告げられた「決まりごと」以外で、キキが欲しがっているものを与えてくれます。 さて、それは何でしょうね? 日本のことも、こん

社会学者 品田知美さんに学ぶ 『「母と息子」の日本論』 (亜紀書房)と参考になる本の紹介

「押しつけがましい自己犠牲」の言葉に反応して、品田知美さんへのインタビュー動画を観てみました。 最後のメッセージ(22:00~)は、子供の人格を尊重するには…ということなのではないかと考え… そこで参考になりそうな本として、山本周五郎とトルストイの本を挙げてみました。 山本周五郎の『小説 日本婦道記』の「箭竹(やたけ)」 ここに母と息子の日本論が描かれているように思うのです。 母 みよは 「そう思います。母上、そう思います」と、息子 安之助。 すると 安之助は

女性の乳房の役割

『戦争は女の顔をしていない』 『怒りの葡萄 』下巻 お母はどんなことに気づいたのだろうか。そこには男女の人生の捉え方の違いが書かれている。 お母とシャロンの薔薇の視線で交わされたことは…こういうことだった。 女性の乳房の役割について、考えさせられる話。

有吉佐和子さんの著書『恍惚(こうこつ)の人』の解説より

有吉佐和子さんの著書『恍惚(こうこつ)の人』の解説は、社会福祉学者の森幹郎さんである。昭和57年当時の老人問題について書かれており、今日の高齢者の方々がどのようにして自分の親と向かい合っていたのかを知ることができる小説でもある。 昭和57年(1982年)の寝たきり老人の数は30万人を越えており、限られた財源の中で、「寝たきり老人対策」が優先されていたという。 *今現在「痴呆」という言葉は使っていない 我が国の老人問題 昭和30年代の中頃から始まる高度経済成長。それ以前

「夫婦」を捉え直すための…石田衣良さんの著書『再生』

2009年角川書店より発行された、石田衣良さんの著書『再生』 この中に「東京地理試験」がある。松井定明(さだあき)という初老の男性が、新し世界へと踏み込む努力をやり続けた物語で、そこにいる妻の存在は小さく、見え隠れしている。 定さんは、高校を卒業してから40年、清掃車を運転していた。趣味は将棋。休日は区民センターの将棋教室に欠かさず出席した、将棋マニア。 定年退職をむかえ、意気揚々と将棋教室へと通った。 最初の一週間は天国だった。 ところが二週間目になると、負けがこ

『若きウェルテルの悩み』に書いたゲーテの、子どもとくるみの木への眼差し

ゲーテはロッテのピアノの調律に出かけたけれども、子供たちにおとぎ話をせがまれて、調律ができなかったことを書いている。 ゲーテがつなぎの話を出まかせでしゃべると、それが前にも話したのと違ったりすると、子供たちから抗議が出る。 ロッテと一緒にたずねたことがある牧師さんのところのくるみの木が、切り倒されてしまったことに、ゲーテは激怒した。 木を切り倒されたことを傍観してしなくてはならなかったのに…村中がおこりだした。切り倒したのは、新しい牧師夫人だった。 落ち葉で庭がよごれ

トルストイからの呼びかけ『復活』

トルストイの著書『復活』が書かれた経緯 1887年6月 トルストイの友人の裁判官のA・F・コーニがトルストイの元を訪れた。 そして、ペテンブルク管区裁判所の検事をしていた時に見聞きした興味深いエピソードを話して聞かせた。 そのエピソードとは… 解説には、また、このような内容のことが書かれている。 明治以来、ロシア文学が「日本でこれほど読まれてきた」だけでなく、『復活』ほど一般大衆に広く親しまれてきた作品も少ないだろう、と。 この作品は恋物語を取り巻く世俗的な権威(裁

「他の生を自己の中に体験する」 アルベルト・シュバイツァー (Albert Schweitzer )

フランスの神学者、哲学者、医師アルベルト・シュバイツァー(Albert Schweitzer )について調べてみました。 シュバイツァーは1913年、アフリカのガボンにあるランバレネで、自らの資金で病院を建設し、地元の人々に無料で診療を提供。予防医学や衛生教育にも力を入れ、地域の医療水準の向上に貢献。ノーベル平和賞を受賞している。 生命への畏怖 シュバイツァーが晩年、強調した思想「生命への畏怖」 人間をはじめをして生命のもつあらゆる存在を敬い、大切にすることを意味する。

山本周五郎が著著『おごそかな渇き』に描いた「宗教観」と「ブラウン運動」と「人間への問い」

山本周五郎さんの『おごそかな渇き』は、昭和42年1月から2月の8週、朝日新聞日曜版にて掲載された。 「半途にしてたおれることが多年の念願でもあったらしい」と、解説には書かれている。 『おごそかな渇き』に描かれているのは、人間と宗教。 これを、植物学者ブラウンが発見した「ブラウン運動」として捉えているところが興味深い。 この小説に登場するのは、福井県のある村で、宗教の盛んな土地。 この村に住む人達には、歴史的に根深い反目と敵意が続いていた。特に冠婚葬祭に関しては、相互の往

パール・バックの著書『大地』は自分の生き方を見つめるうえで参考になる本

元のこの言葉で、小説『大地』は終わった。 この本の解説には、このように書かれている。 人間はどうしても…身内びいきをしてしまう生き物である。と同時に、「身内なのだから…これくらいは…当たり前だろう」という感情も出てくる。 王龍の3人の息子達は、兄弟であっても内心は相手を見下しているものの、兄弟が力を持てば、自分を助けてくれるだろうという期待を持っていた。 これらの人間としての感情は、家族から派生し、親戚だけでなく、身近なコミュニティにも同じように存在するもの。超少子高