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英マンチェスターにみる「共生する社会」

イギリスのマンチェスターで昨夜(現地時間で2017年5月22日の夜)、自爆テロが発生しました。

日本でも既にニュースになっていますし、事件の詳細は随時明らかになると思います。なので、ここでは、マンチェスターという都市がどういう場所なのか、また、地元の人々が今回の自爆テロにどう対応したのかを、かいつまんで書きたいと思います。

マンチェスターは、都市部人口ではロンドンに次ぐイギリス第二の大都市です(行政地区単位だと6位)。私がこよなく愛する街でもあります。

イギリス北西部のビジネスの中心地であり、多国籍・多文化社会としても知られています。

首都ロンドンと比べると、ロンドンが「多文化であるがゆえに、人々は一定の距離を保ちつつ生活している(なので、時として冷たくも感じる)」のに対して、マンチェスターは、「多文化であるがゆえに、住民がそれぞれの多様性を受け入れて共存している」と言う感じがします。

そういう街ですから、今回の自爆テロが起こった直後も、地元民は支え合いました。

地元のタクシーがすぐさま集結して、パニックに陥っている人々に無料で乗車サービスを提供したり、
現場近くに住む住民が、事件を知って現場に駆けつけ、途方に暮れている被害者や終電に乗り損なった観客に、一時避難所として自宅を開放したり、
翌朝からは、被害者の治療・輸血のために、献血センターの前には献血をする人々の列ができました。

また、献花やSNSを通じた支援はもちろん、キリスト教やイスラム教、ヒンズー教など各宗派の人々が、宗教や人種のわくを超えて援助や祈りに加わりました。

The City of Resilience (不屈の都市)

同じように多国籍・多文化社会であっても、マンチェスターはロンドンとはどこか違う気がします。これはもうマンチェスター気質としか説明できないです。

マンチェスターは、かつては工業都市として栄え、その後不況でどん底に陥り、それから商業都市として復活、と、長い歴史の中で栄枯盛衰をなんども経てきたことによるのかもしれません。

そして、マンチェスターがテロ襲撃をうけるのは、今回が初めてではありません。

もう20年以上前になりますが、1992年と1996年に爆弾テロが起こっています。これはイスラム勢力によるものではなく、当時のアイルランド共和軍暫定派(IRA)によるものです。

特に、1996年の爆弾テロは規模が大きく、市の中心部が甚大な被害を受けました。

現在のマンチェスターは、1996年の爆弾テロ後に開始された、大規模な再建・再開発の結晶です。地元政府と市民が一致団結してなし遂げた発展だといえます。

今回のテロ事件の後、マンチェスターを鼓舞するフレーズとして、“We are resilient. We are Manchester.” というのをあちこちで見かけました。この街の特徴をよく表していると思います。

Resilienceとは、困難な状況から立ち直る力、反発力・回復力の強さを指します。BBCニュースの中で、一般の若者がこう言っていました。

“Manchester is a strong city. Together we can get through it.”

地元文化に根差したマンチェスターの resilience に期待したいと思います。