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坂ノ途中で5年間働いて変わったこと

坂ノ途中に2016年1月13日頃入社したので、2022年のいま、5年目終わって6年目に突入しました。(わーい!)この季節になると、なんとなく入社時を思い出して、昔はあんなだったなあ〜と振り返ったりすることがあります。

入社時には2,30人だったスタッフもいつのまにか100人を超えていたり、お客さんの数も農家さんの数も次第に増えていきました。社内のことはまた改めるとして、自分はどう変わったのかな。というのを考えてみます。

結論を先に言うと、ブレを許容できるようになったなあと感じています。
これはつまり会社のミッションをひとまず自分自身で体験しているということですね。(なんと素晴らしい。社員の鏡なのでは。)

https://www.on-the-slope.com/vision/

入社前のこと

2011年20歳ぐらいのときから、環境問題とか社会問題には興味関心がありました。だからそういうような会社で働きたかった。けれど、普通に就活していてもしっくりくる会社を見つけられませんでした。

いまから思うと当時は、それらの「問題」を知りはじめたばかりで、実際の現状や実態を知らない、大した時間(10年20年単位)をそのことについて考えたこともなく、知識がない状態でした。

それは仕方のないことですが、そういう頭になると

わかりやすいもの、キャッチーなものに反応しがち
正解は一つしかない
0か100かのどっちかだ


みたいな思考でいました。
いまから考えるとブレを許容できない、というかそもそもブレがあるとも思っていませんでした。
学校のテストのように、「一つの正解があるんだ」と思っていたのです。
そして坂ノ途中で働きはじめて、様々な「ブレ」「多様性」と日々向き合うことになりました。



おやさいのブレ=楽しいけどむずかしい

おやさいのブレと言ってもいろいろなブレがあります。

季節ごとのブレ

わかりやすいのが、よくおのさんが言う「だいこんにすが入っている」みたいなブレです。冬がもうすぐ終わっていくのね、みたいな。
あとは、万願寺の終わりの頃は日焼けが多くなるよね。とか。
(これ全て日焼けではないです。寒暖差のストレスとか木が疲れてるとか、いくつか理由がありますね。勉強します)

天候によるブレ

雨が降ったあとのトマトは割れやすかったりします。いまの時期だと気温が下がりすぎて、葉物や大根が凍って届いてしまった。なんてこともあります。3,4月だとあたたかすぎて、ブロッコリーや菜の花はお客さんのところに届いたら花が咲いていた。なんてこともあります。

品種によるブレ

「だいこん」を発注しても、15cmぐらいの可愛らしい大きさで納品してくる農家さんもいれば、30cmで出してくる農家さんもいる。
いまが旬の春菊(きくな)も、サラダ春菊とか、丸葉春菊とか、同じ野菜でも品種によって全然ちがいます。

荷姿のブレ

「だいこん」を発注しても
葉っぱ付きのもの、葉っぱがないもの、ボードンに入っているもの、ラップにまかれているもの、裸のもの、1本では規格に達しないから2本づけにしてあるもの。農家さんによってさまざまです。

味のブレ

お野菜を美味しいと言ってくれる人がうれしいのは反面、全てが全て美味しいとは思っていません。上記のように書いたブレのせいで味が落ちることもあるし、スーパーのものとの食べ比べをすると、こっちも美味しいじゃん!みたいなこともあります。

出荷量のブレ

来週収穫用のかぶが鹿に食べられた、落花生300kg出せる予定が100kgになった。コロナで出荷できなくなったからだいこん1000本残ってるけど買ってくれない?自然相手だからこそ、出荷日ぎりぎりまでお野菜がどれくらいになるのかはわかりません。このブレは生産者窓口さんがもろに受けるものです。(それを耐えているの本当にすごい)

農家さんのブレ=農家さんの多様さ

日々そのような「ブレ」と向き合っていますが、言い換えをすると「多様性」なんだと思います。お野菜のブレは、つまり農家さんのブレ(多様性、多様さ)でもあります。

農家さんの品質によるブレ?多様さ?

A農家さんは検品に厳しいから虫食い一つなく納品してくれる。
B農家さんは割と虫食いがある。
農家さんによってもどれくらいの品質のものを出荷しれくるかはその農家さんによってもちがいます。(どれくらいの虫食いなら許容か?っていうのも難しいです。お客さんに説明できず明らかに商品として出せないものは赤伝にしてもらいます)

栽培方法の多様性(坂ノ途中基準はあります)

有機JASをとっている農家さんもいれば、とっていない農家さんもいます。
自然農よりの農家さんもいます。

規模の多様性

基本的にほとんどの農家さんが新規就農ですが、その規模もさまざまです。
1町2町単位の農家さんもいれば反単位の農家さんも多いです。就農して1年目2年目の農家さんもいれば20年やっているベテラン農家さんもいます。

地域差の多様性

基本的に西日本のお野菜を扱ってますが、その中でも地域差はあります。
九州の農家さんの旬と京都の農家さんの旬はズレます。端境期にもお野菜をお届けできるのはその地域差があるからです。

お客さんのブレ=多様な声

小売も卸売もしています。

個人のお客さん

意外と声があるのが「プラスチック」が多いので減らしてほしいという声。けれど逆に、裸(多少の土つき)で入れると土っぽいので袋に入れてほしいという声もあります。

珍しいお野菜がもっと入っていると思ったのに。という声もあれば、珍しくてどう使えばいいかわからない。という声もあります。

法人小売店のお客さん飲食店のお客さん

小売店のお客さんはできる限り荷姿の揃っているものとか、飲食店のお客さんはできるだけ大きいものを出荷できるようにはしています。



農業問題のブレ=というかギャップ

入社前は知識もないくせに調べることもしない&Facebook最前線な時期だったのでキャッチーなことを信じていました。

F1種よくなさそう
慣行より有機のほうがいい
自然栽培自然農法ってなんかよさそう
オーガニックってなんかいいな
有機は安心安全
規格なんていらなくない?
多品目な畑は豊かだな〜
中間業者は必要?農家さんと直接取引すればよくない?

みたいな、「なんか○○っぽい」というイメージをなんとなくに信じていました。けれど実際にそれらはただのイメージで、実際の現場とは大きなギャップがあるなと感じています。

「ブレ」というとなにか違う気がしますが、そのブレ(ギャップ)があることを知ったからこそ、他のものごとに対するの許容度が上がったなと思っています。


ブレの許容する=多様性をみとめる

改めて、やさいもいろいろ、農家さんもいろいろ、お客さんもいろいろ、社会からの声もいろいろ、のど真ん中にいて、たくさんのいろいろがありすぎて、なんか大変だなあと思いました(笑)

ブレないほうが効率がいいし、頭を悩ませなくていい、合理的です。

けれど合理的になりすぎても、そこに入れない人、手放さなければならないものも出てきてしまうのも事実です。一生懸命頑張っているのに、その「効率さ」「合理的でない」のふるいに落ちる人たちが報われないのはさみしい。それに効率さや合理的さはないかわりに、「多様なたのしさ」や野菜でいうと「奥深さ、しみじみと美味しいと思える美味しさ」があります。

とはいえ、ブレを許容しよう。多様性のある社会を。
って聞こえはいいですが、それはそれで大変です。
ブレがあるのはとても非効率だし、頭を悩ませます。
カチコチの頭でいるとストレスもたまります。
いろいろな声に耳を傾ける必要があります。

でもずっとそういう状態の中にいると、なんだかいい意味で諦めがついてきました。数学みたいなこれっていう答えはないから、できるだけベターな解を探し続けるしかないんじゃないか。と、「まあいまのベストはこれぐらいだけど、状況によって変わるよね。」みたいな、感じです。

それは自分自身の生活や身の回りのことや人においても、「まあこういうときもあるよね。こういう人もいるよね。」というふうに思えてきました。
これだけたくさんの農家さんがいて、たくさんの種類のやさいと向き合っていたら、そう思わざるをえないというか。

実はこれからの社会は、ガチガチに合理的でわかりやすい型にはめて考えるほうが逆に非効率で、共通の大切なことさえ大切にできていれば(会社のビジョン)その他のことはまあまあやっていこうよ。って思えるほうが効率的なのかもしれません。


そしてなによりも、ブレを許容できる、多様性を認めるって大変だけどたのしいです!自分の知らないもの、知らないやさい、知らない考え価値観に触れられるのは自分自身の人生の幅も増やしてくれます。

同じようなことを感じられる人が少しでも増えたらうれしいなあって思ってこれからもお野菜をお届けしたいです。




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書きたいことはあるのになにを書いたらいいのかわからなくなるので予告
・オーガニックがすきじゃなくなった話
・安心安全の話(農業問題のこととか)
・続けることの話
・(勝手に)おのさんのおしポイントの話
・最近に思う資本主義の話とか


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