涙の名前


例えば私が、排水溝だったら。

そこに、垂れ流すものが何か。


もし、わたしがここにいるのが感じられなくなったら。

たくさんの固体を、自分の中に取っておくのだろうと思う。

その摩擦で、自分を知るのだと思う。


わたしは、ただの枠である、ということ。

ただの、過ぎゆく破片だということ。


きっとすべてが流れ出したら、
それは濁流となって、誰にも止められない。

だから、川があふれだすのを、
わたしは心待ちにしているのかもしれない。

あふれだすのを見て、少し、胸が膨らむのかもしれない。


だから、今はこのままで。


わたしは、保ち続ける。
いつか飽きるのを夢見て。


濁流が、私を駆けるのを待ってる。

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