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こどもの絵に「上手だね!」と言わない3つの理由と、それに代わる言葉を考える

みなさん、こんにちは!
イラストレーター&デザイナーのみのりゆうです。

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今回は、保育士の資格を持つわたしが、こどもの絵に「上手だね!」と言わない理由について、お話したいと思います。
もちろん「上手だね!」というのは褒め言葉であり、こどもにかける言葉として良くないものとは思ってません。
「上手だね!」と声をかける保育者や保護者のみなさんは、こどものことを思って、そして尊重して言っているはずですし、大好きな大人に褒めてもらったら、こどもたちは嬉しく思うはずです。
では、どうしてわたしは言わないのか、わたしなりの考えを記事にします。


「上手だね!」と言わない理由

1.評価する必要がないから

ひとつ目の理由です。小学校以降になると図工や美術にも評価がつきますが、その時に担当の先生が「絵や作品を評価しなければいけないことが苦痛」と言っていたことがありました。
絵に模範解答はありませんし、みんなが違うからこそ良いのです。
「上手」と言う言葉には、反対の「下手」と言う言葉を想像させてしまったり、他の人と比べられているような、評価されているような印象もあります。
こどもたちは大人に評価されたくて絵を描くのか、というとそうではありません。(単純に「喜んでもらいたい!」とか「見てほしい!」という気持ちはあると思います!)
逆に、大人になるにつれて絵を描くことが嫌い、苦手と言う人は増えていくと思いますが、それは他人に評価された経験から、無意識のうちに自分自身でも評価して「うまく描けない」とか「人と比べてしまう」からではないでしょうか。

2.「上手」では表しきれない素晴らしさが、こどもの絵にはあるから

2つ目は、そもそも「上手」とは何を基準にしたら良いのでしょうか。
実物と同じように描けることでしょうか。
ちいさな子が初めてまるを描いて、そのまるを指さして「ママ」と言ったら、どうでしょうか?
実物はただのまるじゃないし、目も鼻もあるし、全然違うけど、そのまるは間違いなく「ママ」なんです。
愛おしいですよね。
描くことを仕事にするイラストレーターであるわたしも、こどもの描く絵ほど素晴らしい絵はない、と思っています。
その日のその時のその子にしか生み出せないものです。大人になってから、自分がこどもの頃に描いた絵を描こうとしても、自分でももう描けませんよね。

わたしがこどもの頃に描いた絵

3.出来上がったものより、表現を楽しむ気持ちを共有したいから

3つ目の理由です。こどもの絵には成長過程があります。描くという行為や感覚自体を楽しむ時期、自分の意思で線やまるを描くようになる時期、自分の知っているものを形で描くようになる時期、などなど。その子が今、どういう時期にあって、何を楽しんでいるのかはそれぞれです。
大人のイメージする「絵を描く」は、モチーフや描きたいものがあってそれを目指して描く、出来上がったものが「絵」なのかもしれませんが、こどもにとってはその線一本一本や過程が全て、重要な表現活動なのです。
そこにかける言葉としては、「上手」以外の選択肢がたくさんあるのではないかな、と思います。


「上手だね!」に代わる言葉を考える

そうは言っても、評価のつもりで「上手だね!」と言っている方はあまりいないと思います。
単純に、こどもが喜ぶ言葉をかけたい、と思っているのではないでしょうか。
そんな時に「上手」に代わる言葉かけはどんなものがあるかな、と考えてみました。

受け止める、一緒に楽しむ言葉

単純ですが、その時の様子や、描いている行為自体を言葉にして関わることです。
何かを描いているわけではなく、描くこと自体を楽しむ月齢の子には、「とんとんとーん」「ぐるぐるだね〜」と、今その子が楽しんでいることをちゃんと見てるよ〜と伝えます。一緒にやってみてもいいかも。
意思のある線やまるなどを描いて、「〇〇ちゃん、せんせ、わんわん」など描いたものについて伝えてくれる子には、「〇〇ちゃん描いたの!せんせいも描いてくれたの!ありがとう〜」など、同じものを見ながらその子の伝えくれたことを確認するように会話をします。

大学の教授から学んだ「おはなし聞かせて」の精神

会話が成り立つ年齢になると、自分から「みてみて〜」と見せに来てくれたり、「〇〇かいたよ!」を話してくれたりすることがあります。「上手だね」「よくできたね」という言葉を返すと、こどもが次に返す言葉があまりないですよね。

そこでわたしが思い出すのが、大学の教授の関わり方です。「あなたが何を描いたのか、どうしてそれを描いたのか、もっとたくさんおはなし聞かせて」
絵の表面的に見える部分だけでなく、その絵が生まれるまでの過程やその子の内面まで受け止める気持ちです。
こどもの絵で何を描いたのかな、とわからない部分は「これは何?」と素直に聞いて良いと思います。
「どうしてこの色なの?」「どうしてこれを大きく描いたの?」など、こどもの絵を見ると必ず聞いてみたい部分があると思うので、そこから会話を広げます。

わたしがこどもの頃に描いた絵、その2

例えば、わたしのこの絵。(↑)
今のわたしには、全くこの絵を描いた記憶がないので、もし今保育士としてこの絵に出会ったら、どんな言葉をかけようか考えてみました。

まず、このうさぎのような子が気になりますね。顔と手足は肌色で人間のようですが、やっぱり形はうさぎみたいだし、色はきみどり…謎ですよね。
こういった何を描いたのかわからない時は、「何を描いたのか教えて?」から始めてみます。例えうさぎのように見えても、いきなり憶測で「うさぎさんかな?上手だね!」などと言うのは、例え中身が褒め言葉であっても、こどもにとっては的外れの言葉でしかありません。

そして、周りの文字。たくさんの「ぴ」とたまに「ひ」と「じ」。
わたしの想像では3つあって、1つは「描けるようになったばかりの字を書きたくてたくさん書いている」、2つ目は「文字のかたち自体が面白くて書いている」、3つ目は「うたを歌っている様子やおまじないの言葉などを表現したい」。普段から関わっていたら、もしかしたら分かるかもしれませんが、これもやはり「文字をたくさん書いたんだね!なんで「ぴ」と「ひ」と「じ」を書いたの?」という感じで聞くかなと思います。

また、分かる部分から始めるのも良いですね。「このにこにこのお顔見て、先生も元気が出たよー!」とか、「たくさんの色を使って描いたんだね!カラフルでとってもきれいだね!」など、先生はこんなことを感じたよ、こんな部分を見ているよ、とまず感想を伝えるのも会話のきっかけになります。


そんなわたしの考え方のもととなった本はこちら!(PR等ではありません)


さいごに

大人にとっての絵と、こどもにとっての絵は、意味が大きく違う部分があります。
「上手」と言ってはいけないわけではなく、「上手」という言葉を使う場合は、その子が何を描きたくて描いた絵なのか、大人に何を見てほしいのかを理解した上で、「このお顔がとっても楽しそうで上手だね!」とか、「青い線をながーーーく描いてて上手だね!」など、どこが良いと思ったのかが伝わる言葉掛けになると良いのかなと思います。
また、「上手」以外のバリエーションを考えていくことで、こどもたちが絵を描くことを心から楽しみ、絵を描くことが好きなまま大きくなってほしいな、と思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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