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2018年4月6日の日記に少し加筆 アルヴィン・ルシエ/Alvin Lucie(86歳)四度目の来日


この3日間*1)少々高揚ぎみでした。15年ぶりに会えたことと、86歳になりまた日本で会えるとは思っていなかったので、嬉しい限り。それにしてもコンサートはすごい盛況でした。いつのまにこれだけの注目を集めていたのだろうか?ということでアルヴィン・ルシエ/Alvin Lucier氏についてつらつら書いてみたくなりました。

1989年の初来日でのお手伝いが本人との最初の出会い。それまでもLPなどで彼の仕事を追っていたので待望の初来日でした。それからほぼ30年経ってしまいましたが、その間、当時の職場だった川崎の美術館にて92年と2003年の2回、彼を招聘してコンサート、インスタレーション、トークを開催しました。その後も連絡を取っていて”Chambers”の翻訳やルシエ作品研究会などをやって、ルシエ氏との関係はいまに至るわけです。

ルシエも結構な歳(86歳)になってしまったゆえ、ここ数年は彼の動向をずっと気にしていました。ですので、今回久々に会って食事に行ったりし、元気なことを確認できたのが、何よりも一番嬉しいこと。本気で心配していたのでかなりホッとしました。

ただ心配し過ぎで、せっかくじっくり会っていても、数多ある「聞いておきたいこと」など一切聞けず。ルシエお得意の真顔で言う冗談にも返すことができず。あとは連日のコンサートだったので作品の話をほじくり回して聞く機会は次回に持ち越しです。それにしても、もう帰路とはハードスケジュール*2)。

ちなみに、ルシエの持っていたステッキには、レーザー光で障害物を発見し易くする機能が装備されていました。自慢げに見せてくれたので、そこはすかさずハンディソナー仕様*3)じゃないの?って、ツッコミを入れるべきところ。でも即応できませんでした・・・。

“I am sitting in a room”は、じつは92年に川崎市市民ミュージアムでもやってもらいました。その時はテープを再生しただけの公演。作品意図に対して実演での技術的な課題があって、その頃は実演はやらなくなっていた時期でした。「わたしはみなさんとは別の部屋にいます」というくだりから始まる作品なのでテープでも問題ありませんが、当時本当はコンサートで披露するのは気が進まなかったのだと推察します。

2003年に会った時に「コンピュータ制御で実演可能になりそうなんだ」と嬉しそうに話していて、その通りその数年後にシステムが完成したようです。その意味では昨日の演奏は大変貴重な体験でした。「同じ部屋にいます」と言っていたのはさすが実演している感が出ていて良かったです。

ただ作品意図ほど段階的な変化にはならず、数回の繰り返しで彼が言うところの「収穫逓減」、もうこれ以上変化が見込めない状況に達したので、コンピュータをもってしても技術的な調整が難しいんだな、と別の意味で感慨深く聞いていました。京都ではどうだったのか、行かれた方の話を聞いてみたいところです。

ちなみに“I am sitting in a room”の技術的な難点の話を聞いた時からあるアイディアを持っているのですが、(彼に直接話したところ)自分でやりなさいって言われたので、どこかでできないものかと、いまでも密かに考えています。余談です。

それと”Chambers”の翻訳、最終的なチェックの段階なので早く出版まで持ち込みたいものです。わたしがもたもたしているのですけど。昨日ルシエに「Music 109の翻訳は?」って言われてしまいました・・・。ちなみに翻訳、得意ではありません。

とりあえず”Chambers”の翻訳が日の目を見るよう頑張りたいと思います。(この記事は当時SNSにて挙げた投稿に加筆したものです)

*1) 2018年4月2日、3日、4日の3日間で、2日ルシエ氏はdommuneに出演し、3日と4日は六本木super deluxeにてコンサートを開催

*2) 非常に短い滞在でこの記事を書いた20118年4月6日には既に帰路へ

*3) ルシエの1969年作曲作品"vespers"にてエコーロケーションを主題にしおり、パフォーマーがハンディーソナー/Sondol(sonar-dolphin)を携えて、障害物回避や周囲の環境探査、お互いの状況の確認などを行う作品

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