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怪談イベントに初めて行ってきたレポ(5/20 「情緒不安定」)


はじめに



先週の5月20日土曜日に、大阪弁天町で行われた「情緒不安定」という怪談イベントに行ってきた。

「情緒不安定」のフライヤー。デザインがとても良い。


出演者の一人である、「怪奇少年団」の富田安洋くん(仮名)とは小中学校時代の同級生で、
(参考: #8 ゲスト: 怪談師の「富田安洋」くん - 名無しの長話 | Podcast on Spotify
そんな彼の怪談を生で聴きに行こうと思ったのがキッカケで、僕自身は怪談のイベントに行ったのは初めて。

ここ数年、有名人も自分のYouTubeチャンネルで怪談を取り上げたり、エンタメ界でちょっとした怪談ブームが来ている事は認識している。
でも、その割にというか、リアルの自分の知り合いの中で、実際にイベントまで足を運ぶ人にはまだ出会っていない。

後で打ち合わせの席で富田くん(仮名)から言われたけど、地元の同級生で怪談イベントに顔を出しに来たのは僕が初めてらしい。
まあ、YouTubeで怪談噺の動画を聴くお手軽さと比べて、実際に会場まで足を運んで3時間のイベント内容でチケット代3000円かかるコストは確かに割高に感じるかもと思った。

浅草の寄席が、昼の部と夜の部でそれぞれ同じく3000円で、個人的にも「3000円」のチケット代は全然安くないと感じているので、この料金は割とハードルが上がる。


総括

で、肝心の怪談の印象だけど、今回出演した4名の怪談師さんが、全員話がかなり上手くて、そこにまず驚いた。下手なお笑い芸人よりも断然上手い。

でも、合計12席のうち、率直に自分が「怖い」と感じた噺は4つも無かった気がする。

もちろん感じ方に個人差はあるだろうけど、これはそもそも最近の怪談は最初から怖さを志向していない場合が多いのではと思った。(傷つけない笑い的な)

それに関して、中山市郎氏は「オカルト解体新書」という自身のYouTubeチャンネル内の動画で、「怪談ニュージェネレーション2022」の最高顧問を賜った際の感想で、
「出場者の若手怪談師の噺が怖くない」
と、苦言を呈している。
(9) 【最高顧問の見解】怪談ニュージェネレーションを拝見して感じた事 怪談を語るうえで心得て欲しい事 怪談とプロレスの共通点!? - YouTube



上記の動画内で、「"不思議"というテーマ内であっても怖い怪談は語れるはずだ」と中山氏は指摘しているし、個人的には分かる部分も多いけど、そもそも運営側も、演者たちの怖さを志向しないトレンドに同調する意図があるからこそ、"不思議"をテーマに据えたように思えるし、怪談師としても「ガチの怖い話をぶつけたところで、難しい割にお客さんに引かれる」という空気もあるような。
で、お客さん的にも「怖い噺をしてくれる怪談師がいない」ってニワトリタマゴの状態にある気がする。
少なくとも、今回のイベントではそんな雰囲気を(勝手に)感じた。

まあ、そういう空気を打破する人が、得てしてカリスマ扱いを受けたりするんだけど、SNSで地道に草の根運動している都合上それもリスキーだしねー。まあ信者ビジネスにならざるを得ないのは仕方ない部分も多いのかなと思う。
というか、「怪談」ってジャンル自体がそもそも伝統芸能的な要素が大きいし、伝統芸能って太客の常連からおひねり貰ったりといった信者ビジネスでずっと回っているので、あとはファンとの関係性でどういった怪談師に焼き上がるのかは、それぞれのコミュニティ次第というか。客と演者の距離が近いほど、合わせ鏡の関係になる。

客にどこまで合わせるかは演者それぞれで違うし、どんなお客さんに支持されたいかは、各々で決めることだ。

若手をチヤホヤしたい客側の需要と、お客さん達にチヤホヤされてタレント扱いを受けたい怪談師たちの利害が一致しているので、それで全く何も問題無いじゃないか!

だから、僕たちの地元の同級生とか、一見さんがイベントに来にくいのもそういった事情かなと思います笑
ジャニーズのライブ会場にはジャニヲタだらけっていう、至って当然の光景。

総括してはそんな感じ。


イベントから帰った深夜、酔ったテンションで興奮冷めやらぬまま調子に乗って色々ツイートしているログ。


`

各論


前置きが長くなりましたが、ここからは具体的に一つ一つの怪談に対して、ずぶのド素人が偉そうにレビューをしていきます。

僕自身怪談イベント自体行ったのは初めてで、そもそも怪談噺を聴いてきた絶対数も圧倒的に少ないけど、まあそういう人が会場に出向く事も珍しいと思うので、そんなニワカの一意見として読んで頂けたらと思います!

5/20 情緒不安定 配信チケット - プレミア配信 (twitcasting.tv)
※6月3日まで

ウエダコウジ 「怖い、怖い、怖い…」


イベント当日の5/20の17時台は、まだまだ普通に気温が高くて、更に左右に照明も焚かれているのに、ウエダさんは革のライダースを着ていたので、まずそこがずっと気になっていた。

リナさんという女性が、小学三年生の9歳の時に霊感が目覚めたキッカケになったエピソードの話。

真っ暗な部屋で寝ていると、何やら人の気配を感じて目が覚める。自分を遠くから見ているような、そんな気配。
不気味に感じつつも、寝ているフリをしながら視線を動かして気配の正体を探ると、部屋の入口近くに初老の男性が立っていた。
それに気づくと、怖くて声も出せないし身体も固まって動けない。

そのまま、ずっとその初老を男性をじっと見続けていると、向こうが寝ているこちらに近づいてきた。リナさんはベッドで寝た状態のままやはり怖くて動けない。

すると、向こうは彼女の顔を覗き込んできたのだが、その時に見えた初老の男性の顔は、先日車の単独事故で亡くなったリナさんの親戚のおじさんだった。トンネルの中での事故だったらしい。
生前はすごく自分のことを可愛がってくれていた親戚のおじさんだったけど、今は表情がなくてあの時のおじさんの顔はしておらず、瞳にも光が無くどんよりしている。

リナさんは、身体をこわばらせながら、
「怖い、怖い、怖い、怖い…」
とつぶやき続けていたらしい。

その次の瞬間、どこかの病院の地下の霊安室みたいな場所に自分がいることに気づく。
「あれ、ここどこ?」
と考える暇もないくらい、すぐに向こうから
「良かった、良かった。良かった!」
と何人もの大きな声が聞こえてきた。
よく見たら、人垣が出来ている。

彼女は一歩一歩、その人垣の真ん中の方に小さい足で歩いていく。
一人一人の顔を見たら、お父さん、 お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん自分の親戚の親戚の位置がみんな集まっている。
彼ら彼女らが良かった。良かった。良かったって狂喜していて、この状況がよくわからない。
そのまま足が止まることなく歩いていく。
そうすると、真ん中のところに金属製の台が置かれており、そこに男の人が1人寝かされてる。
それが、トンネルの中で自動車の単独事故で亡くなったおっちゃんだった。

それに向かって、みんな指さして、
「良かった。良かった。生きてた、生きてた。生きてた。」
と言っている。

リナさんは、どうしていいかわからなくなってその場で固まっていた。
今度そのおっちゃんがグーッと体をもたげてきて、そのまま上から見てきた。
その瞬間に彼女が怖くなって、その場でしゃがみ込んでしまって、気付いたら
「怖い怖い怖い。怖い。怖い。」
と声が出ていた。

そして次に目を開けたら、自分の部屋に帰ってきてたそう。
それが小学校 3 年生の時にあって、そこから大人になるに連れても、いろんな体験をしている。

例えば車を運転すると、 いろんな方向から音が鳴る。
誰かが叩いてる? でも誰もいない。
よく見たら前から音がする。前には軽四自動車が走っていて、そのリアガラスのところに、3 歳、 4 歳ぐらいの男の子が立っており、
「助けて助けて助けて」
って叫んでいる。

これは誘拐だと思い、彼女はスマートフォンをバックから取り出して視線を戻したらその子スーッと消えていった。

また違う時もあった。

また車で走っていると、近所でお葬式があり、喪服の人たちがいっぱい外に出ている。
その一人一人の方のところに真っ黒い壁があったり。そんなのをいっぱい見るらしい。

そう思うと、話を聞いてて心配になるが、本人は幸せそうにしてる。
今彼女は 4 歳ぐらいの女の子がいる。

この女の子を身ごもったタイミングくらいでだんだんだんだんと、このいわゆる霊感がなくなっていたそう。
今ほとんどね。あんまり何も見えないと。

「あー良かったね、いま幸せだね」
と言っていたら、彼女が
「でもね、上田くんね。たまにね。うちの子ね。一人で遊びながら言うてるのよ。怖い、怖い。怖い怖い。」

これひょっとしたら、彼女のこの霊感的な。何かよくわからない、こういう力。子供さんに継承してしまったんじゃないのか? そんな風に僕思うんですよ。ありがとうございました。

ウエダコウジ 「怖い、怖い、怖い…」


基本的に「夢の話」は、どのジャンルでも受け手は萎えてまともに取り扱う気が失せる人が多くて禁じ手に近いので、極力避けるべきというのは不文律としてあるはず。

で、それに加えて、怪談の中の登場人物が
「怖い、怖い、怖い…」
と言っていた描写は、恐怖を演出する方法として流石に工夫が足りなさすぎると思う。

3000円払った有料イベントで、この怪談を聴いた瞬間に、固定ファン以外の一見さんなら即帰ってもおかしくないレベルだと思うので、一発目に持ってくる噺としてはあまりに不適切では。

あと、配信アーカイブから録音した音源を、Pixelの自動文字起こしから手直ししてみたけど、あまりに手間がかかるのが分かったので、以降は誤字脱字以外はほぼ手直しせずに口語のままで行きます。


富田安洋 「病室のベッド」


事前に何話すかって実は決めてなくて座った瞬間に決めるんですけど、今決めました。よろしくお願いします。

僕、普段は仕事が不動産の仕事してるという不動産系の話が多いんですけど、今日ここで話すのはちょっと違う系の話をしたいなと思ってまして。



あのこの話はYUNOさんっていう20 代前半の女性から聞いた話で、今から 5 年前ぐらいにYUNOさんちょっと病気になって入院されたんですって。

で、入院した病院っていうのがかなりの大きい病院でね。
病院の敷地内にコンビニとか入ってるような結構設備の整ったとこなんですよ。

自分が入院している4人収容される病室があって、一番奥のベッドで寝てたんですけど、病院の消灯時間って早いじゃないですか?
20 代前半の方ってそんな早く寝ないから自分で携帯触りながらもうなんとか頑張って寝ようとするんですけれど、どうしても寝れなかった。

むしろお腹が空いてきた。だからコンビニ 24 時間空いてるから抜け出して行こうと思って、一人で病室をこっそり抜け出して、病院の廊下エレベーターを下ってコンビニ行ったんですって。



コンビニまでの距離って病院の出口のどこかな? だいたい 100m あるかないかぐらいの距離なんですよ。
出て一人で歩いていたら、コンビニの方から自分よりかなり下の年の女の子が車椅子をこう、自分で漕ぎながら向かってきたんですよね、動物病院の方に。

それ見た瞬間
「あ、私と一緒で夜中お腹すいて抜け出してきてる子やっぱおるんやと。自分だけじゃないか? そらそうよなー」
って思いながらすれ違いざま会釈をしたんですね。

で、その女の子は車椅子をこぎながらYUNOさんのことを下からじーっと見て会釈もせずにそのまま通り過ぎた。なんかちょっと気持ち悪いな。とりあえず買い物終わって、病室に戻ってプリンを一人で食べてたんです。



ようやく時間が 1 時ぐらいになって、あ、いよいよ眠たいな寝ようかなって寝るんですけど。ある夢を見たんです。

その夢っていうのが、当時YUNOさんがお付き合いしてた彼氏と同棲をしてた家があるんですけど、その家に自分がいるんですって。

で、いる場所っていうのが玄関ガチャって開けた?廊下のところに自分が立ってて、リビングの方から彼と女性が喧嘩してる声が聞こえるんですよ。

で、その喧嘩のレベルもかなりの大声で怒鳴り合っている状態で、「えっ」と思ってYUNOさんは廊下を進んで突き当たりのリビングの扉を少し開けて、隙間3cmくらいのとこから中をじっと覗き込んだらしいんですよ。
そしたら彼氏が喧嘩してる相手っていうのが後ろ姿なんですって。容姿がどうしても自分と重なる自分を見てるようだと。
でも、声を聞いたら聞いたことないよ声なんです。あれ、誰なんやろ?と思ってて。


そしたら、その女性が、YUNOさんが覗いてる。その視線に気づいたんでしょうね。扉の方に。顔を向けてきた。
その顔を見た瞬間、寝る前にコンビニ向かう時にすれ違った、あの車椅子の女の子だ。
で、その女の子はじっとYUNOさんの顔を見ながら、どんどんどんどんドアの方が近づいてくる。



直感的にYUNOさん、
「あ、逃げな」
と思って、すぐさま玄関の走り抜けるんです。
で、追いかけてくるんですって。
で、玄関の扉に差し掛かってドアをガチャって開けた瞬間、外は真っ暗な空間なんですって。


その真っ暗な空間に飛び出た瞬間夢から覚めて、朝を迎える。
今まで自分が見てたのは何やったやろ? と、起きてからパニックになるんですよ。

で、そういうことがあったから、その日のお昼、お母さんがお見舞いに来た時に、
「こういうことがあったんやけど。お母さん、今日もしよかったらでいいねんけど止まってくれへんか?」
と頼み込んだんです。お母さんもお母さんで
「いやこの子が怖いとか言ってるけど、本当は寂しいんやろ」
みたいな感じで茶化してくるんですね。もう渋々お母さん、その日ベッドの横に付き添って泊まることになったんですけど。



その日の晩もYUNOさん夜中にお腹すくんですよ。
で、お母さんに言ったらお母さんが
「分かった。一緒にコンビニ行こうか。」
二人でこっそり抜け出して、また同じところ進んでいくんですけど、その日ね、めちゃめちゃ寒い日で雪が降ってたんですって。

吹雪いてる中、お母さんと身を寄せながらコンビニの方に向かっていく。
するとコンビニの方から前日の晩見、。あの車椅子の女の子がまた一人で漕いで向かってくる。
顔見たらあかん顔見たらあかんと勝手に自分でも思ったらしくて。
黙り込んでひたすら下見てすれ違ったんですって。
そのことをお母さんにYUNOさん言おうと思って、
「お母さん見たあれ? 私が昨日見た夢の中に出てきた女の子、あの子やねん。」
って言った瞬間お母さんが。

「え?あんた何言ってんの? 誰ともすれ違ってないで。」
「いや、今すれ違ったよ。」
って言うとお母さんが
「いやいや見てごらん。ほらあんた車椅子入れたけど雪積もってるとこタイヤの跡ないやろ。」
確かにうっすら雪積もってるんですけど。タイヤの痕跡なんてないんですよ。
だから自分しか見えてなかったんだ。その時に
「ああ、あの女の子は私と同じように入院してる子じゃなくて亡くなってる人なんだ。」
それが繋がった瞬間ゾッとした。コンビニで買い物して、お母さんと一緒に病室に戻る。

病室に戻ってからお母さんにそのこと全部話したんだけど、お母さんは
「あんたの考えすぎやから、もう気にせず寝なさい。お母さん隣りおるから大丈夫やから。」
YUNOさんはちょっと安心して眠りに入るんですよね。



でもね、また夢見たんですって。
でも今度の夢は、自分が今いる病室なんですって。
皆さんね、入院された方はわかると思うんですけど、 4 人部屋の所って寝る時ってカーテンで仕切るでしょ。

自分が寝てる病室のカーテンの外側に自分立ってるんですね。
夢の中で客観的に自分がいるベッドの方をポチッと見てるカーテンがあるから中は見れない。その中の方でお母さんに、
「お母さん、ちょっと顔拭いてほしい。」

体拭いて欲しいみたいな。そんな会話をお願い事を自分がしてる。でもよく聞いたら自分の声じゃない。
また同じようにYUNOさんはカーテンとカーテンの隙間からこうやって覗き込むんですって。

そしたら、あの車椅子の女の子が自分のベッドで入ってお母さんにあれやこれや頼んでるんですよ。

内心、
「私のお母さんやから」
ってパニックになるんです。
YUNOさんは何て言うかな? もう我慢できなかったんでしょうね。もうカーテンをザーって開けたらしいです。

開けた瞬間、お母さんだけぐったり、こう首をこういう状態でなってで、女の子だけこっち見ながらずっと指さしてるんですよ。
じーっと何も言わず、じーっと目力だけで圧をかけてくる。
その瞬間、YUNOさんは


「私のお母さんやから返してよ。」


って言った瞬間。急に部屋が明るくなった。現実の朝になってたんです。
看護師さんが部屋のカーテンをちらっと開けるタイミング
「あ、何々さんおはようございます。おはようございます。」
それでね。YUNOさんが僕にこの話を全部してくれたんですけど。

いや、これって何か 病院の中でさまよっている霊の仕業とか、その病室で亡くなった人が与えてる影響なんじゃないか?って話をしたんですけど。

にしても、私が普段生活しているあの家の中にあの子がいたのっておかしくないですか?私、この病院に入院してからその家に帰ってないし、彼とその女の子が喧嘩をしてる。もしかしたらですけど、私入院する前からずっとつけられてたんじゃないかって。なんでかって自分が見てたそのアングルって全部覗いてる視点なんです。だからリビングの扉の隙間から覗いてるシーンもカーテンの隙間から覗いてるシーンも私ずっと見られてたんですかねって。
そんなお話を聞かせていただきました。

ありがとうございました。

富田安洋 「病室のベッド」


またもや二連続で夢ネタ。

怪奇少年団は、土曜日に弁天町まで足を運んで3000円のチケット代を払っている観客のことを、
「よっぽど自分たちが好きな信者の集いだ」
とか考えて、あまりにもどっぷり甘え過ぎでは?

実話怪談でも、夢で見た話だったら何でもアリになるからタブーにした方が良いと思う。
というか、怪談界隈もそこそこ歴史があるっぽいのに、2023年5月現在で、まだ禁じ手になっていないのが不思議。


遊戯王のヤタガラスなんてすぐ禁止カードになっていたのに。

スピリット・効果モンスター 星2/風属性/悪魔族/攻 200/守 100 このカードは特殊召喚できない。 (1):このカードが相手に戦闘ダメージを与えた場合に発動する。 次の相手ドローフェイズをスキップする。 (2):このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。 このカードを持ち主の手札に戻す。



この時点で、
「3000円のチケット代でこれかあ…。」
とぶっちゃけ凹んでいました。知り合いが出ていなかったら帰っていたかもしれない。


ここからは、
「くだぎつねの会」
のターンです。


クダマツヒロシ 「ルービックキューブ」


これカナさんという女性の方が話してくれたんですけどね。で、この方も 30 代の後半かな。なんですけれども、あの高校生の時に体験された話で、このかなさんが通っていた高校っていうのはスポーツ校だったらしくて、で、かなさんはそのスポーツ校のバレー部でキャプテンをされてたそうなんですよ。で、このバレー部っていうのがめちゃくちゃ全国的にも強かったそうなんですよね。

で、そこでキャプテンをしてるもんなんで、やっぱり練習がむちゃくちゃ厳しいんですよね。

で、毎日まあ授業が終わってそのまま体育館直行ですよ。で、そこからもう日がどっぷり暮れるまでもう厳しい練習を毎日する。
で、もうヘトヘトになりながらもその日も帰ってたんですよね。

その日も練習が終わりまして、もう体引きずりながらですよ。
もう真っ暗な。ね、日が落ちた町を帰るじゃないですか?
家に着いて
「疲れた」
と思いながらも玄関のドアガチャって開けるんですよ。で、開けたら、玄関に一歩入った瞬間なんですって。強烈な異臭。何かプラスチックを焦がすみたいな。燃やすみたいな。ものすごい異臭がブワッと鼻をついたって。

リビングの一番奥に。

おお?なんかパチパチ言ってますね。大丈夫かな? これ最近僕はあるんですよ。最近僕喋ったらめっちゃパチパチ言うんですよね。
最近、 あるんですよ。
(※スピーカーからパチパチと大きなラップ音が鳴り出す)

お母さんはいつもリビングの一番奥にいるんですよね。
だから
「ただいま。ママ何このにおい?」
て声かけるんです。

で、いつもやったらお母さんがそのリビングからね。おかえりかな? おかえりって声かけてくるんですけど、反応が無いんです。
「もー」
って言いながら靴脱いでリビング上がって廊下へ歩いていって。

リビングのそのドアをガチャッと開けて。そうすると、やっぱりその何かの異臭っていうのがより強くなるんですよね。
で鼻をね、抑えながらリビングの脇にあるキッチンを覗いたって言うんですよ。ぱって見たらお母さんがいるんですって。
お母さんキッチンに立って何か料理をしているのか、キッチンコンロの前に立ってるその背中が見えたんです。
だから、
「お母さんいるわ。ママ何この匂い。というかさ、いるなら返事してよ。換気扇回しなよ」
って言いながらちょっと怒りながらですよ。自分はお母さんの背中にどんどん近づいてって横からフッて覗きながらですよ。
換気扇カチッと引いたらバーンて回ります。

「お母さん。ママ?」
って聞くんです。でもお母さん全く無反応。返事もしないし。ぼーっとしたまま自分の手元を見てるんですって。でつられてね。そのかなさんもお母さんの手元を見るんですよ。
そしたら、お母さん何してたかって、ガスコンロつけて火がついてる状態ですよ。そこで、あのね、四角いルービックキブって分かります?ルービックキューブぐらいの四角い箱これ真っ黒なんですけど、この真っ黒の箱をトングで掴んでガスでくるくる回しながらあぶってるんですって。
「え?」
と思って。その四角い箱から黒い煙がモクモクと上がってて、それがものすごい嫌な臭いを出してたんです。

ちょっと聞くんですけど、何の反応もないですよね?
お母さん、ボーッとした目で、それを見ながらトングでくるくるくるくるくるくる回してるだけなんです。
ちょっと怖くなっちゃって。
「ママ?」
って言いながらお母さんの肩に手を置こうとした瞬間なんです。

玄関から
「ただいま。」
聞き慣れたお母さんの声がしちゃってるんです。
「え?」と思って振り返るんですよ。廊下をぱっと覗いたら、玄関にお母さん立ってるんですって、両手にビニール袋スーパーで買った、買い物入れた。ビニール袋持ってんすよ。
「あ、かな帰ってたの?」
って言いながら靴を脱いでトントントンて廊下歩いてくるんですよ。
「えーっ」
と思いながら、もう一度キッチンをふっと見るんですけど。誰もいないんです。
さっきまでそこにブワーッて漂ってたあの嫌な臭いっていうのも一切ないんです。


でね、今入ってきた自分のお母さんに
「ちょっとママ。今さー」
って、今自分が見たものっていうのを説明するんですけど、当然信じてもらえないですよね。
「あんた、そんなん見間違いやないの? 私だってほら今帰ってきたとこやないの」
「いや、そうやねんけど…」


結局これあのお母さんに全く信用してもらえなかった。信じてもらえなかった。そういう体験をされたそうなんですよね。
で、僕もそれ聞かせてもらって、いやー、でもそれちょっと不思議な話ですよねって。で、かなさんが
「でもね。私あれ見間違いじゃないと思うのよね。あの嫌な臭いとかも全部覚えてる」

それに、このカナさんがお母さんらしきものを見たちょうど 1 ヶ月後なんですって。
このカナさんの家、原因不明の火事で全焼してんですよ。

まあ、みんなね。あの家族みんな外に出てる時間帯だったもんで、怪我とか事件というか、そういうね、そのどれかが被害にあったとか、そういうわけじゃないんですけれども。火事が起こってると。
で、この原因が一切わからなかったって言うんですよ。

「でね、私ねだからそれ思った時に、あれもしかしたら。お母さんの持ってたあの四角い箱ってうちのマンションちゃうんか」
って。
「あれの、なんかちっちゃいミニチュアなのかわかんないけど、あれってそういう何か嫌な予兆やったんじゃないか。どうしてもそう思うのよ。どう思います? 」
って言われて。
「こわっ」
って言ったすね。

そんな話でした。
ありがとうございます。

クダマツヒロシ 「ルービックキューブ」


文字起こしだと伝わらないけど、話のトーンもちょうど良いところに割とキーを置き続けているし(車やバイクのパワーバンドみたいなイメージ)、一定の間隔で同じ単語を繰り返し出して反復させるテクニックも上手かった。

肝心の話の内容は、霊感がまるで無い自分的には、
「まあ、そんな不思議な体験も世の中にはあるかー」
程度の受け止め方で、まったく怖いとは感じなかったけど、クダマツヒロシ氏の語り口は落ち着いていて良かった。

さすが、「怪談ニュージェネレーション2022」覇者の期待のホープ怪談師だなと思った。
突然のスピーカーからの異音というハプニングにもアドリブで臨機応変にユーモアで対応したり、機転も効くので今後もお客さんが付きそう。



八重光樹 「I駅」


はじめまして。八重光樹と申します。よろしくお願いします。

僕はね、普段あの東京の方で活動させていただいておりまして、今日のこのメンバーの中で多分僕が唯一東京からで、あとはみんな関西とか名古屋とかね、そちらに住んで、結構ここの辺はこちらのイベント関西の方のイベントだと見たこともある方多いかなと思うんですけど、僕は普段東京なので、しかも大阪で怪談を語らせていただくのが初めてなんですよね。

なんかこう、 普段はね、東京の方で怪談集めて語ったりとか、小鳥屋さんで働いたりとか。
最近はね。あのデスボイスのボイトレ通い始めたりとか色々してるんですけど、なんかねこう、皆さんの顔見てると、普段ね、よく会っている方もいれば、関わりはあったけれど、今回初めてお会いできたなって方もいたりとか。あとね。こちらの方で仲良くさせてもらってて怪談初めてだけど遊びに来てくれたりとかっていう方たちがいて、すごい嬉しい気持ちになっております。

ちょっとね。あのクダマツさんがね。さっき、
「今日は全部初出していきますよ。」
みたいなこと言ってたんで、僕もまあ、あのそんなそこまでね。絞りはしないですけど、今回ちょっとまあ東京土産みたいな感じでね。初出しのお話させていただきたいと思っております。



先日、東京のですね。銀座の方であった怪談イベントに出させてもらいまして、そこに来てくれた「マカリヒロミ」さんという女性の方なんですが、このヒロミさんから聞かせてもらったお話なんですよね。

場所は伏せますが、東京で非常によく利用されている、Iがつく駅なんですけど、イニシャル I が付く駅がありまして、このヒロミさんは出勤する時、通勤する時に自分の家から出て最寄り駅まで行って、そのIが付く、Iという駅で乗り換えをして職場に向かうんですね。

ある時なんですけど。
会社が終わって、そのIという駅で乗り継ぎをしようとした時に、こう。まああの夕方の時間ですから、たくさん人がこう行き交ってるわけですよ。その人混みをバーっと歩いて自分のね。乗り換えの駅に行こうと乗り換えの改札乗ろうと思ったタイミングで、ピタッと音が聞こえなくなったんですね。

「うわっ」
と思って、自分の耳の不調って言うよりは、何だろう?例えるなら周りの景色が一瞬でモノクロになってしまったような。そんな感じで音が全くなくなったって言うんですよ。
「わ、何だこれ」
ってあたりを見回すと。もう普通にみんな歩いてるんですよ。おそらくおかしいのは自分だけ。

「うわー。なんだこれ、どうしようかな? なんか耳おかしくなっちゃったのかな」
ってキョロキョロしてると、ある一点に目が止まったんですね。

それが、この駅のですね。地上に出るためのエレベーターがあって、その横なんですよ。
この駅構内の壁際にスレスレで直立している、おそらく女の人がいる。
ちょっとね。その姿が異様だったというんですけど。


まず服装。これがですね、白いスモックを着ていたって言うんですね。
スモック、なかなかこう聞き馴染みのない言葉かと思うんですが、イメージとしては幼稚園生が来てるような水色のちょっとふわっとしたようなシルエットの服ありますよね。あれの白いような服。白いバージョンを着ていると。
でも子供じゃないんですよ。おそらく成人はしているだろうというのが後ろ姿からわかる。で、そのスモックは丈が長いものですから、ズボンが入ってるかわからない。
ただ、そこから先は素足で下駄型の便所サンダル履いているんですね。

ちょっと外を歩くには異様な格好ですよね。
もっと言うと、その人の手足体パンパンに膨れてるそうなんです。
で、その手足の先なんですけど、あるところから先が真紫に変色していて、その色の境目からは、何かこう紐のようなものはぶら下がってるんですよね。
これちょっと…、ひろみさんは最初ね、まあ、あのびっくりはしたんですが、もしかしたらこれちょっと事件性があるんじゃないか?っていう風に思ったそうなんですよ。

それが紐か何か結ばれていて縛られていて、おそらくこの手の先っていうのは手足の先っていうのはうっ血しているんだろうと。
だから、どこかからもしかしたら逃げてきたんじゃないか捕まっていたんじゃないかって、ふと思ったわけです。

そこでもう、自分に音が聞こえていないっていう状況に、ちょっと忘れながらも、その人に声をかけようと近づいていくんですよね。
で、近づいていくと、その女の人壁に向かったまま、ゆらゆら揺れ始めたって言うんですよ。

体が揺れるたびに、その腕の先にぶら下がっている。その紐のようなものがぷらん、ぷらんと揺れる。
どんどんどんどん近づいていて、あともう少しで、もう手まで届くぞ、というところで、その女の人ピタッと動きを止めて。
手の先の紐はその慣性でぷらんと揺れるんですが、その距離で見て初めてそれが紐じゃないって気づいたんです。手の皮膚だったんですよ。皮膚がぷらんと揺れている。
「うわっ」
と思った時にその女の人
「ヌー」
とこっちを向こうとしている。

その瞬間に、直感ですよ。
「これ人間じゃない」
って思って、急いで踵を返して駅の方に向かって。改札までばっと走っていく。

この方、僕にこんな話を聞かせてくれたりとかイベントに来てくれるぐらいなので、怪談の類は好きなんですよ。
だからやっぱりちょっとこう好奇心はあって振り向こうかなと思ったんですが、振り向いてその目の前にその人がいたら怖いからちょっとさすがに振り向けなかったんですよね。
ってことを言っている。

後で思えば、そもそもあの人等身がおかしかったって言うんですね。
この方150cm台の方なんですけれども、そんなに自分と身長は変わらなかった。
なのに、その人 4 頭身しかなかったんですよ。
頭が異様に大きかったそうなんですよ。


それからまあ家に帰りまして、一晩経って翌朝また出勤ですよね。
その出勤のタイミング。まあその乗り継ぎの駅ですから、毎朝使うわけです。そのタイミングでまあ一晩経ったのもあって、ちょっと恐怖も薄れて同時に好奇心が少し出てきたので、
「ちょっと昨日あの人が立っていたところを見てみようかな。」

これでもしまた何かあればね、こう、怪談師の人に提供お話できるしなとか思いながらそんな好奇心で、その昨日女の人がいたところばーって歩いていくんです。
で、ここの角を曲がれば、あの女の人がいたところが見えるぞっていうタイミングで、いきなり
「ヴヴォぉぉ」
という音が地響きのように鳴り響いたっていうんです。

「うわ、うわ、うわ!」
と思ってびっくりしてあたりを見渡すんですが、誰も普通に気づいていない感じで歩いているんですよ。

「なんだ、自分にしか聞こえていないのか?でもこんなに大きな音で鳴っているのに」
と思いながら、
「おそらくは自分にしか聞こえていないんだ。昨日のあの女の人と、なにか関係があるんじゃないか。じゃあ、これ以上近づいたらまずいんじゃないか…?」
そう思って、彼女はあの女の人が立っていたところ、見ることなくそのまま会社に向かったそうなんですよ。


そのことがあってから、ちょっとあまりにも怖すぎて毎朝使ってる駅ではあるんだけれども、もうあの場所を見ることができないんです。
そんな風におっしゃってました。

後から考えれば、あの女の人とねmあの音っていうのがどんな関係があったかわからない。
「でもあの音、どう考えても叫び声にしか聞こえなかったんですよね。」
って。

東京でも非常に利用客が多い、Iという駅で起きたちょっと不思議なお話だったんです。
ありがとうございました。

八重光樹 「I駅」


状況描写の情報が細かくて多いので、聞き手は話の情景を想像しやすい。
小説の執筆だと、情景描写をいかに細かく正確に伝えられるかが、作者の文章技術の物差しになるので、その基準だと、今回出演していた4名の中で八重さんが一番テクニシャンという事になると思う。

この、「I駅」も関東に住んだことのある人ならすぐに候補が浮かぶし(おそらくJR埼京線の◯橋駅)、情報提供者の名前も「マカリヒロミ」とか仮名かもだけどフルネームで出したりと、八重さんはリアリティにこだわりがあって、怖さとは切っても切り離せないと捉えているところがあるのかも。

最初の前置きで、
「デスボイスのボイトレに通っているんですけど~」
と自己紹介をした矢先に、そのボイトレ仕込みのデスボイスを怪談噺のサビに遺憾なく盛り込んできて思わず笑いそうになってしまったけど、笑いと恐怖の感情は紙一重なとこがあるので、良い線行っているのではと思った。

"デスボイス若手怪談師"ってキャッチコピーは、普通に人気出そうだもんね。



「喜怒哀楽」(一巡目)


ここからは、「喜」「怒」「哀」「楽」のカードをランダムに引いて、それぞれのテーマに沿った怪談をその場で話すという流れ。

クダマツさんは、「怒」にちなんだ怪談が無いとずっと嘆いていたけど、それが結果的に前フリになって彼はしっかり「怒」のカードを引いていた。
(しかも二回連続であまりにもよく出来すぎた展開だったので、「ヤラセだったのでは?」と密かに疑っている)

あと、怪談内容の文字起こしも面倒なので、このブロックからは割愛します笑



ウエダコウジ 「喜」


知り合いの女性の子供の一人かくれんぼの話だったけど、冒頭のツカミで「僕はよく女性にモテるんですけど~」
の導入で、またもや人妻とその子供の話だったから、もしやウエダさんはそういう性癖の人なのか?とそっちに意識が向いてしまった。

「その子がかくれんぼをしていた相手が、先日亡くなった自分の母親で、母が孫に会いに来たけど、その時の姿は若返っていたので、子供は"お姉ちゃん"と呼んでいた。だから、霊で化けて出る時は若返るんです!朗報でしょ!」

っていう、まさかの平日お昼のワイドショーみたいな怪談だった。
怪談界のみのもんたとか宮根誠司とか、はたまた綾小路きみまろみたいな、奥様方の心を掴んで離さない独自の怪談師の道を進むのかも。
普通に需要ありそう。


クダマツヒロシ 「怒」


「"怒"にまつわる話がない」
とずっと嘆いていたけど、結局
「30年ほど前のバブル期の広告代理店という超絶ブラックな職場で、深夜に残業していた時にトイレで見た軍隊の霊の話」
をしていた。

クダマツさんの頭の中で、怒り=軍隊という連想がとっさに浮かんで、この話をチョイスしたのかも。

最後は、同僚の先輩の河合さんも、そのトイレの軍隊の霊に引っ張られて向こうに行ってしまったのでは…といった匂わせるようなオチだったけど、僕自身は霊感が全くないので、この手の霊的な話は一切信じておらず、よって特に響かなかった。
バブル期の広告代理店勤めの会社員とか、キツすぎて失踪した人なんて別にいくらでもいたでしょと思う。


八重光樹 「哀」


八重さんは、第一部のフリーテーマの怪談では東京のI駅(おそらくJR埼京線の◯橋駅)の話だったけど、今回は仕事で大阪に出張に行った時に、
「小鳥屋なのに、なぜか鳥を飼っていない」
という、まさかのモグリっぽい同業者と知り合った話。


やはり八重さんの怪談は、情景描写の情報量が他の人達よりも断然多くて解像度が高い。
こういう語り口はプロ受けしそうだけど、一般ウケするのかは不明。
(※ちなみに、お笑い界だと情報量が多くて解像度の高い話をする芸人よりも、クロちゃんとかの方が売れやすい。以下の動画では、永野がその現象についてクロちゃん本人を目の前にして嘆いている。
(9) 【放送事故】テレビ業界への不満を聞くつもりが大喧嘩に - YouTube


富田安洋 「楽」


「怪談は怖い話だけじゃない」
というツカミで始まったけど、それはまずめちゃくちゃ怖い怪談を放り込んでからじゃないとツカミとして機能しないやろと思った。

また夢っぽい話か、とは思ったけど今回のカマキリの話は許容範囲だったかな。

ちなみに、余談だけど、さっき「カマキリ 人」でGoogle検索で調べてみたら、「韓国官能秘話 かまきり3」というポルノ映画が出てきたので、「カマキリは人」って、韓国ではよく言われていることなのかもしれないと思った。


韓国官能秘話 かまきり3 
人気コリアン・エロス“かまきり“シリーズの一編。村を追い出された青年ペジギと、嫁入りした先で夫に冷たくされ、家を出た美しい娘タルビ。二人はともに“かまきりの星“の下に生まれ、偶然にも旅先で知り合い愛し合うようになる……。


 

「喜怒哀楽」(二巡目)


いよいよ、イベント二部の最後。

今のところ、「怪奇少年団」の二人は変化球の怪談ばかりで、
「あんまり真っ向勝負はしてこない怪談師なのかな?」
という疑念が自分の中に湧いていたので、二巡目でそれを払拭してくれることを期待していた。
平場でのフリートークは普通にこなれていて上手いけど、一応"怪談師"であってタレントさんでは無い訳であって、やっぱり怪談の出来有りきだと思います。

それでは、一つずつ見ていきましょう。


富田安洋 「喜」


二回連続の富田くん。

「プロ金縛リスト」と、「店の高級シャンパンを勝手に質屋に入れた錬金術師」の青山さんの話。

はい、昔から知っている同級生だからハッキリ言うけど、完全にふざけています。
彼の今回話した3席の怪談は、全て「夢」が絡んだネタしか演らなくて、これは到底一般ウケはしないと思った。

別に固定ファンに甘えたその姿勢を否定する気は毛頭ないけど、一見さんの僕は
「知り合いだからといってそんな身内びいきで評価が惑わされたりしないよ」
という気分になった。

夢って何でもありで、富田くんに怪談噺を提供する人は、せん妄とか統合失調症とかヤク中みたいな、認知の歪みが凄まじい人しかいないのかもと少し心配になった。
富田くん自身が、違法薬物に手を染めないようにファンの皆さんは監視し続けてあげて下さい。


八重光樹 「怒」


「スクール水着を着た写真をFacebookに投稿したり、ホームレスになったり、留置所に入れられたりしている変人のおっさんの勾留中の話」
で、その話を直接対面で聴いた人は、死神に取り憑かれた人の頭上に浮遊している黒い玉が見えるようになる…。

だから、八重さんから直接聴いた我々観客にもその能力が伝播して、これから黒い玉が見えるようになるかもってオチ。
なるほど笑

このおっさんも完全にアタオカっぽいから、そんな変な話もいくつか持っていそうですよね。

ここまで聴き直してふと思ったけど、やっぱ又聞きの時点で怪談って怖さが7割くらい大幅減になると思う。
この話も、本人から聴くと臨場感がまるで違うはず。

で、「怪談師」という立場なら、そんな本場の体験談を直で直接聴ける機会に恵まれるから、怪談師活動を続けているってのは動機として大きそう。

基本的に悪趣味な人じゃないと怪談師なんて務まらないんだろうな。


クダマツヒロシ 「哀」


詐欺男に引っ掛かりそうになった話とか、ブラック企業勤めの話(二回連続)

後半の、
「ブラック企業勤めで自殺しかけたけど、今は東北の方で自殺防止の支援団体を立ち上げて活動している。」
って話は、昨今の都内でのWBPC問題の騒動があるので、世間的にNPO団体=公金タカリ集団というイメージがついている人も多いと思うので、前半の
「詐欺男から、死んだおばあちゃんが私を守ってくれた」
みたいな良い話を聴いたあとで、その感動が目減りしてしまった。

僕の中でも、NPOとか一般社団法人という存在はまったく信用していない。


でも、最後にこういう話を前後半分けて語ってきたのは上手いなと思った。


ウエダコウジ 「楽」


ラストはウエダコウジさん。

1話につき10分前後ある怪談噺を12席すべてレビューするって、思いつきで始めてみたけどけっこうキツかった。もう二度としない。


最後の最後で、かつ「楽」というテーマなのに、よりによって今回一番ヘビーな噺を持ってきやがった。
しかも、ついさっきクダマツさんが自殺防止にまつわる噺を披露した直後に、電車の車掌が飛び降り自殺者を轢き殺しまくった話とか、こいつ頭おかしいんか。

今回トップバッターもウエダさんで、第一部はフリーテーマだったから、それこそ一発目にこれを持ってきたらツカミとして最適で良かったのに、もう無茶苦茶。自由すぎる。


ウエダさんの支離滅裂な怪談チョイスも含めて、諸々今回の「情緒不安定」のイベントの中で一番面白かったです。


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