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「Think clearly」を読んで

 「Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法」を読みました。自己啓発本はこれまで何冊か、読んできましたが、久しぶりに何回も読み直したい良書に出会った喜びがありました。著者のロルフ・ドベリはスイス生まれ。30歳台前半の若さで、スイス航空の子会社数社でCEOを務めた経歴の持ち主で、その後、友人たちと書籍要約サービス会社を設立し、事業家としても成功を収めています。その後、文筆業に力を入れるために経営から退き、活発な執筆活動を行っています。
 この本は、スイスとドイツの新聞に連載されていたコラムをまとめたものです。人生を上向きにするための52の思考の道具が集められています。この52の思考の道具を覚えておくと人生をより良くしていくことができます。良い本に出合ったら続けて2回読むことともあったので正にこれは実行すべきと思いましたので早速、実行したいと思います。
 よい人生を送るとは「物質的に満たされることではなく、ストレスを引き起こすような考え方を避けて心を充実させること」だとあらためて気づかされます。著者は、「内なる成功こそが、真の成功」と定義しています。
 平静な心を保つのは、幸福な人生を送るための最も有効な手段のひとつであり、同時に西洋思想では理想とされる心の状態でもあります。52の思考の道具の出典は大きく分けて三つあります。ひとつめは、過去40年にわたる心理学研究の成果、ふたつ目は、ストア派の思想、三つ目は、多数出版されている投資関連書籍、バリュー投資家の思考です。
 人によって刺さる思考の道具は違うかもしれません。私が非常に感銘を受けたのはストア派の思想です。学者ボエティウスの最後の著作「哲学の慰め」は、中世に最も多く読まれた本のひとつだそうですが、この本に登場する「哲学」という女性が教えてくれた、つらい状況を乗り切るためのアドバイスは、ストア派の原理とのことです。
 ストア派は、紀元前四世紀のアテネに起源をもつ実践的な哲学の一派で、紀元後最初の二百年間、ローマでは主流学派のひとつに数えられていました。ストア派の代表的な哲学者には、大富豪だったセネカや、奴隷階級のエピクテトス、第十六代ローマ皇帝のマルクス・アウレリウス・アントニヌスらがいます。
 今日にいたるまでストア派は、日常生活における疑問に実践的な答えを呈示している唯一の学派です。それ以外の学派や傍流の理論は、知的刺激は与えてくれますが、人生の課題にはほとんど役に立ちません。
 グローバル化が進んで世界が複雑になっている現在では、まったく新しい予想外の不幸に見舞われる可能性が十分にあります。つまり、思考の道具を手に入れて精神的な打撃に備える重要性が、これまで以上に高まっています。
 世界は厄介ごとや偶然に満ちていて、ときに私たちの人生を混乱させます。幸せかどうかは、高級車や、社会的地位や成功を手にすることや、銀行口座の額で決まるのではありません。ボエティウスが経験したように、それらはどれも、「一度は手にしたと思っても次の瞬間には取り上げられてしまうかもしれないもの」ばかりです。
 幸せはあなたの「精神的な砦」の内側にあります。ポルシェのコレクションに精を出して物質的な充実を図るより、砦の内側を充実させよう。死ぬときに墓地で一番裕福な人間になっているよりも「内なる成功」に向けて努力して、いますぐに人生を充実させたほうがいい。その日その日を人生最高傑作の日にしよう。本書のテーマは思考の道具ですが、52の思考の道具があれば、状況に応じて必要な道具の数は異なるのでしょうが、人生の質を向上させるのに十分だと思います。これらの思考の道具を知っているかどうかで、人生の質は決まってくるのだと感じました。

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