OTLHTを歩くまでの話。~ロングトレイルの神様が微笑んだ⁉~
こんにちは。minatoです。
今回は、
なぜ現地に行って初めて知ったOTLHTを歩くことになったのか
についてお話ししていきます。
なぜOTLHTを歩くことになったのか。
そもそもの目的はFT <Florida Trail> をハイキングするために渡米しました。
FTは以前の記事で説明したOTLHTのメインのルートになります。
全長は約2100kmのいわゆるロングトレイルです。
通常2〜3ヶ月かけて歩くトレイルになります。
それではFTを歩きに渡米したはずの僕が、
なぜOTLHTを歩くことになったか、
それは南のトレイルヘッドにあるビジターセンターに到着した時の話から始まります。
ビジターセンターで一体何が...
マイアミに着き、空港から少し離れたホステルに宿泊した。
翌日、近くのwalmartで食料品・燃料を購入し、すぐ近くにあった <Amtrak Miami Station> でタクシーを拾うことにした。
Google mapで見た感じ大きい駅で、何台もタクシーが待機してそうなロータリーも確認できたため迷うことなく駅に向かった。
しかし、いざ駅に着くとタクシーどころか広い駐車場には車一つ無かった。
駅員さんに何とかタクシーを呼んでもらい、20分ほどしてタクシーが来た。
タクシーの運転手は「大体40mileね!200ドルくらいで行けるよ!」と言いタクシーを走らす。
そのままタクシーで南のトレイルヘッドである <Oasis Visitor Center> に向かった。
乗車してから1時間近く経った頃、運転手はぶつぶつと何か言いだした。
僕たちに言っているのか、独り言なのか分からないくらいの声量だ。
恐らく思っていたより時間がかかっていて少しご機嫌斜めだったのかなと。
GPSが不調とも言っていた。
何とかビジターセンターに到着してお会計をする。
ひどく疲れたのかチップも自分で足してお会計をしてきた。
200ドルちょっとだ。
小言を言いながらもここまで無事に連れてきてくれた。
「長距離の運転ありがとうございます。」
と伝えるとにこやかな笑顔をくれた。
そのあとすぐにビジターセンターに寄った。
受付・書類の提出をするためだ。
そして受付にいる職員の方に声をかけた。
僕「FTをハイキングするための書類を持ってきました~。」
すると開口一番に、
職員「○%×$☆♭#▲!※」
「ん?」英語力の乏しい僕にはさっぱり何を言っているのか分からなかった。
ただ僕はニコニコと相槌をうつ。
歩き始めるウキウキで頭がいっぱいだった。
しかし職員の方は必死に何かを訴えている。
「Dry… up… water…」
そんな単語が聞こえてきた。
「ん?何て言ってんだろう。」
僕はすぐにスマホを取り出し、Google翻訳を起動した。
僕「ここにタイピングしてください!」
職員の方は慣れない手付きでタイピングをしてくれた。
職員「水が干上がっていて今は歩けないよ!!」
僕「...」
頭が真っ白になった。
しばらく理解が追い付かなかった。
「え…?そんなことある?」
一瞬にしてダウンを取られた。
しかし何とか歩けないかとGoogle翻訳で必死にコミュニケーションを取るも、
職員「リュックで背負っていくなら歩けるけど…」
そうだよな。
「でも次の補給地点までは7日ほどあるし...」
「そもそも7日分の水は背負えない...」
「無理だ…」
明らかに動揺している僕を見て、観光客のお姉さんが
「水の予備が車にあるから少し分けれるわよ!」
と優しく声をかけてくれた。
ただ数リットルあったとて先へは進めない。
「大丈夫です!トイレの水を汲めるので!」
と優しさだけ受け取った。
そしてそんなやりとりを30分ほどした後、少し冷静さを取り戻し、
「無理なもんは無理だ!」と
この現実を飲み込んだ。
すぐにマイアミまで戻るため携帯電話の使えない僕たちは職員の方に
「もしよろしければタクシーを呼んで頂けますか?」
とお願いしたところ渋々電話してくれた。
でも何故か繋がらない。
何件か電話してくれているが繋がらない。
流石に申し訳なく思って、
「今日は近くのテントサイトで一泊して、明日帰る方法を探します。」と
伝えビジターセンターを後にする。
行きは200ドルほど払ってタクシーで来たが帰りはどうしよう。
このビジターセンターにはバスターミナルも時刻表も無い。
周りの観光客は自家用車で来ている。
アリゲーターが見れる観光スポットではあるみたいだけど、わざわざ海外から来る人がいるわけでもなさそう。
行きでタクシーを拾えたのは幸運だ。
歩けないという衝撃が全身に走ったせいか、かなり疲労困憊。
もう考えるエネルギーもない。
「よし!今日はもう疲れたからとりあえず一泊しよう!」
そしてビジターセンターから3㎞ほど進んだところにある1番近いキャンプサイトで1泊することにした。
その後
歩くに連れて少づつ気持ちの整理がついてきた。
こればっかりは仕方ない。
一泊でもFTを歩けたからよかった。
そしてご飯を食べて、チャイを飲んで、夕日に照らされた。
凄く幸せな時間を過ごした。
辺りが暗くなる前に眠りについた。
そして朝を迎えた。
時間はいくらでもあった。
まずは一番近くの大きい水場に、本当に水がないのか状態を確認することにした。
距離は6kmほど。
トレイルも歩けるし、もしかしたら水が残っている可能性もある。
そして歩みを進める。
ジャングルを歩いている感覚に気分が高鳴る。
目的の水場に着くとそこにはカピカピな地面しかなかった。
それを見てようやく引き返す決心がついた。
ある家族との出会い
ビジターセンターまで戻ってきて、相方が早速ヒッチハイクの準備を始めた。
僕は先に少しでも体を清潔にしようと、ペットボトルに水を汲みシャワーを浴びる。
するとすぐに相方が誰かに絡まれているのを発見。
急いで戻った。
男性「ガソリン代を払ってくれるなら乗せてあげるよ!」
僕 「Sure!!」
わずか10分で乗せてくれる人が現れた。
ナイス相方。
そしてマイアミへ。
乗せてくれた男性のお名前は「マネホセ」。
家族でマイアミのフリーマーケットに向かう途中だった。
車の中には奥さんと4人の子供。
英語力の乏しい僕たちは、またもGoogle翻訳の恩恵を受ける。
長女のテイラーにお父さんが言った言葉をGoogle翻訳でタイピングしてもらい、僕たちがタイピングした文章をお父さんに伝えるという通訳として活躍してくれた。
高校1年生か中学3年生くらいだろうか。とても優秀だ。
タイピング通訳でコミュニケーションをとっていたら、
「時間があれば一緒にフリーマーケットにいかないか?」
そう言ってくれた。
断る理由もない。すべてを委ねた。
貴重な経験ができると思った。
そして一緒にフリーマーケットへ向かった。
フリーマーケットには、
フードコートや洋服、装飾品、家電やらおもちゃが何でも安く売られていた。
小さい遊園地もあり、大人も子供もはしゃいでいた。
マネホセ家は頻繁にこのフリーマーケットに来ているという。
「休みの日はここで遊ぶんだ!」「何でも安く売ってるからね!」と言っていた。
奥さんのカバン、子供のアクセサリー、おもちゃ、自分用のサングラスを買っていた。
それぞれ何か欲しいものを買うらしい。
そして、
「Everybody happy now ???」
「Yeah !!」
という掛け合いがこの家族の日常らしい。
なんとも仲睦まじい。
そんなこんなでフリーマーケットでのショッピングを満喫し、ホテルまで送って頂いた。
アメリカの家族の日常を覗かせてもらう、非常に貴重な経験になった。
僕も同じような境遇にある人を見かけたらマネホセファミリーのような優しさ、おもてなしをしてあげたいと強く思った。
そしてOTLHTへ
ホテルに着いた僕たちは、これからどうするか話し合った。
・選択肢
①帰国
②観光
③北のトレイルヘッドから行けるところまで南下
・答え
①帰国
何もせずに帰国は少し勿体ない。なにより誰にも合わす顔がない。穴があったら入りたい。
②観光
ここでムダ金を使うのは不本意。却下。
③北のトレイルヘッドから行けるところまで南下
FTAとメールで少しやり取りをしたが、どうも水源の有無は分かりかねるということだったので、不透明なまま行動するのも今回の似の前になりそうだし、移動費も含めお金の節約のために諦めた。
結果は①の帰国を選択した。
次のトレイルの資金も残しておきたいし、何より出鼻をくじかれ、精神的に参っていた。
もう帰ろう。そんな気持ちになっていた。
帰りの航空券も取った。
ただ、せっかく来たしまだ帰りたくない気持ちがどこかにあった。
そうしてFTの地図を何気なく見ていたら、何やら海からFT本線に続く道がある。
そしてその道について検索してみた。
どうやらそれはOTLHTというトレイルらしい。
「ふむふむ… 全長約100㎞で… FTをコンパクトにした…」
もしかしたら歩ける。
そんな気がして水源の情報を見てみる。
直近で歩いた人もいる。
水が干上がっているところはあるも一日一回は補給できそう。
「これだ!!!」
それが僕とOTLHTとの出会いだ。
航空券はすぐにキャンセルした。
幸い24時間以内のキャンセルは無料だった。
行くしかないと思った。
ここを歩けば少し報われる気がした。
そして次の朝、OTLHTのトレイルヘッドに向かったのであった。
濃密な2日間を振り返って
この2日間を過ごし色んなことを感じた。
旅の質は「その土地で誰と出会ったか」で大きく変わってくることを改めて思わされた。
ずっとそうは思っていた。
ただ、こうもまた痛烈に思わされるとは思わなかった。
「どこへ行ったか」より「誰と出会ったか」ということのほうが、
よっぽど記憶に残るし多くのものを受け取れる。
今回FTは歩けなかったけれど、この家族と出会ったことは、僕の中でこの旅をすごく上質なものにした。
FTも歩けず、この家族とも出会えずに帰国していたら、海外トレイルはおろか今後、海外旅行も行けない気持ちになっただろう。
そういう意味で、これからも旅は面白いものだと思わせてくれたロングトレイルの神様は存在し、微笑んでいるのではないかと思った。
表現として少し大げさには言っているが、
実際本当にそんな気持ちになった。
終わり
以上、「なぜOTLHTを歩くことになったのか。」でした。
かなり長々と思い出を振り返ってしまいました。
ここまで読んでくれた方はおそらく極僅かでしょう。笑
もし最後まで読んでくれている方がいたら、
もうどこかへ行きたくてたまらない気持ちになっているのではないでしょうか。
そう思ってくれたら嬉しいです。
それでは。
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