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魔術的リアリズムの喫茶店

おはよう! こんにちは! こんばんは! 

商店街愛好家、下町グルメライターの『民話★飯Blog』です!

いきなりですが、note読者の皆さん、喫茶店には行かれますか?
私、本当によく行くんです。
(現にこの記事も、出先のスタバで書いてたり……しがない兼業ライター廃業寸前! でもがんばろ♡)
喫茶店の楽しみ方って、人それぞれですよね。
美味しいコーヒーでホッと一息。それからモーニングセットが充実してたり、フードメニューがウリになってるお店もありますよね♫

というわけで、、、
今回ご紹介したいのは、昔ながらのレトロな喫茶店の、おいしいランチです。

旧国鉄I駅の東口を出て、何だか昭和な感じにゴチャゴチャした飲み屋通りを抜けると、そこは旧中山道。歴史のある街道ですね。
この通りにもまた、古い商店街がちゃんと生き残ってます! レッツ☆サバイヴ! 時代&疫病なんかに負けるな!
(本当に、心から、頑張って欲しいと思っております)

さて、いよいよ本題。
(前振り長くてゴメンネ♡)
今回私がレポートしたいのは、そんな下町素敵エリアにある、昔ながらのレトロな喫茶店Kさんです。

こちらは古くから地域に根ざした純喫茶。いつも常連さんで賑わっています。お店の人(仲良しのご夫婦)も気さくで親切。ゆったりくつろげる、とても素敵な喫茶店です。

そしてこのKさん、ご飯がもう、本当に美味しい。
本当に、美味しい!
(2回言いました。あまりに美味しいので)

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この日いただいたのはBランチ。
メンチとコロッケ、二種類の揚げ物は、どちらもさっくりキレイに揚がって、中から肉汁ジュワー、おジャガがホクホク。もう幸せ-♡ 揚げ物にはソースもいいけど、個人的にお醤油と辛子で食べるのが好きなので両方試しちゃったり。とにかく最高!
それから、ふっくら炊き上がったご飯、お出汁がちゃんと効いてるお味噌汁に、付け合せの煮物もサラダもお漬物も、全部がよい味、よい塩梅。細かな所にも、まったく手を抜いてない。もう涙が出てくる。最近とくにやさぐれてたからか、本当に涙が出てきて驚いたりもした私……。
とにかくもう、全部の仕事が丁寧なんです!!

ここのランチを食べて、何度か自分の人生を見つめ直したくなりました。お仕事についても、ちゃんとしようと思いました。(何度もそう思ってはいるけど……)

ところで、いつもランチは3種類あるんですけど、この日はAランチが売り切れ。お昼のかなり早い時間に言ったんですけど、もう売り切れ。日替わり黒板メニューで、Aランチがすでに消されていて……。
もう、いまでもすんごく気になる。
……あの日のAランチ、なんだったんだろう!?

とにもかくにも、最高のランチ!
レトロな街の喫茶店、Kさんのランチ、これイチオシです!
とにかく丁寧なお仕事をされていて、もちろん食後のコーヒーだって最高です! 超おすすめ!

……はい!
以上、民話★飯Blogでした。

次回の記事もお楽しみに!

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……というような記事を書いてみようと思った。
というか、書いてみた。
何となく子育てママとか主婦ライターぽい文体にして。

軽薄で内容のないキュレーションサイトみたいのが全盛だった数年前、私は無職で時折は知り合いの所でアルバイトなどしていたが基本的には無職で、かといって就職しようとも本気で思っておらず、とにかく無職で(無職って何回も言った)、何となくクラウドソーシングで気軽な雑文ライターなどもやってみた。
もちろん報酬は死ぬほど安かった。
それで暮らしてなどいけやしない。必然的に奴隷のようなライティングライフ。

しかし自宅で適当に(そう、むしろ適当な、中身のない軽い文体の量産が求められていたような)文章を捏ねくり回して一応は賃金が派生するという生活は、ゾンビのような状態で地下鉄通勤して会社員をして実際ゾンビ症状が進んで背筋も変に曲がって体調も崩れ気味……そんな現状から考えるとゾンビ映画の登場人物が振り返る「何でも無いが幸せだった過去の日常」のように輝きを帯びてくる。

一人で勝手に時間を使って生活する。毎日出社とかしなくても文句など言われない。何という理想的な生活なんだろうと、結局は奴隷のような状況における悲哀とか困窮を忘れ、都合よくまた憧れたりする。

だから会社を辞めるとか、何とか上手く立ち回り完全在宅勤務になって副業をはじめるとか、あるいは会社自体もう何かヤバいような気もするし、そうなると晴れてまた無職転生、そんなような状況になったらまた商店街グルメリポート記事とかnoteにも書いて、ちょっとはマネタイズも試みようとか。内容のないサロンも開いて騙されて集まった善良なメンバーから月額いくらか少しづつ搾取してやろうとか。
そんな事を思ったりもして。
もしくはいっとき検討していたワードプレスのサイトいまさら始めようとか、しかしいまどきのSEOもクソもよく分かんないし、個人ブログで収益化とかイケハヤ師のケツを抉れるほど舐めても自分には無理臭いし腸が弱ってうんこも臭いし、どうすんだよおれは……。
そんな事も思ったりして。

そいうわけで、あんなグルメレポートを書いてみた次第です。

ともかく会社ズル休みしてね。心身共にゾンビな自分に耐えられなくなって、またサウナでも行こうと思って、とりあえず駅前のチェーン喫茶に入ってね。書いてみたわけです。

まあそんな、いうなればちょっと邪悪な気持ちで書き出した冒頭部分のグルメ記事だけれど、件の喫茶店Kのご飯が美味しいのは本当で。すごく丁寧な仕事してるのが、もうその佇まいから分かる。カメラアプリで補正入れなくとも、何か輝いてる。実際食べたらもっと分かる。感動までする。頭が下がる。己の邪心も浄化され……。

なんてまた書いてたら、また行きたくなったので、実際に来てしまいましたよ、喫茶店K。せっかくサボったんだから平日の昼間から温泉サウナに行って、その帰りにI駅で降りて、ちょっと歩いて、いまそのKに自分はいるわけです。

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もう夜だからランチはやってないんだけど、ぼんやりしたオレンジ色の照明の店内は雰囲気がいい。
薄暗く、静かな空間の中で一人、珈琲を飲む。ようやく心が落ち着く。

この店の体制としては、いつも朝から昼間のうちは中年の夫婦が切り盛りしている。旦那さんが調理スペースに陣取って丹精込めてフードメニューを担当、奥さんが珈琲や飲み物を用意して配膳もする。

そして夜になれば人員交代。おそらくだけど、ここは家族経営。夜に店にいるのは、先代のマスターと思しき、とうに還暦は過ぎてるだろうけど背筋のピンと伸びたおじいさん。それから、そのおじいさんの母親(つまり先々代の奥さん?)だと思われる、かなり高齢のおばあさん。
夜に来ると、いつもこの二人がいる。

「夕ご飯まだ?」
「おいおい。さっき食べただろ」
「そうかね?」

二人はこうやって、いつも同じ会話をしている。

「……目の前にある、その皿は何だよ」
「これ、わたしが食べたのかね?」
「やだなあ。また耄碌しちゃってよお」
「そうなのかねえ」

先代マスターの口ぶりは少し乱暴ではあるが、いかにも下町らしい温かさがあり、老いた母親に対するたしかな慈しみも感じさせる。何だかんだ言いながらも、決して邪魔にはしていないのだ。いつも奥の席に座って自分が夕飯を食べたかも忘れてしまうおばあさんも、お客が帰るときには「ありがとうねえー」とニコニコして見送ってくれる。

夜の部は客も少なく、多分メニューも絞っているのだろうけど、珈琲は変わらずに美味い。夜は夜で、すごくいい店だなと思う。別に軽薄なグルメ記事にしなくとも、本当におすすめの喫茶店……ではあるのだが。

さっき、私は気がついてしまった。

この二人は、いつ、どのタイミングで昼間の中年夫婦と交代しているのだろうか。

昼過ぎくらいから長居して、夕方くらいまで店にいた事もあるのだけど、交代する瞬間は見ていない。とくに意識していなかったせいもあるのだが、いつの間にか、本当に一瞬のうちに入れ替わっていた。そうとしか思えないのだ。自分の記憶も、昼と夜の切り替わり、かはたれ時のように輪郭がぼやけている。その曖昧な領域を、手探りして思い出した光景。

……ああ、そうだった。

先代マスターとおばあさんは、宵闇が迫る時刻、ちょうど客足が途絶え、長居していた自分以外が店内にいなくなったタイミングで、店の奥の暗闇から不意に現れたのではないか。俄にわき立つように、あの二人はその場に浮かび上がってきた。

またそれと同時に、昼間の中年夫婦も姿を消していた。本当に消えるように、どこかに吸い込まれてしまったように、いなくなったのだ。

なんとも曖昧な黄昏時のシフト交代。

どうしていままで思い出せなかったのだろう。

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どーも!
おは、こんばんにちは!

あなたの街のグルメ番長、中性脂肪なんて何のその、民話★飯Blogですっ!

下町の憩い、庶民的で、でもしっかり美味しいランチ、もちろん珈琲も美味い、行きつけの喫茶店K。

今回は、前回ご紹介したあのお店の再リポート記事となります!
(ちなみに。他にもグルメリポート、やっております! 以下のリンクをクリック、いいね、拡散よろしく~)


さて前回の記事ではランチについてご紹介しましたが、このKさん、夜は夜で、すんごくいい喫茶店なんですよ~!

夜に店を切り盛りするのは、先代マスターと、そのお母さん。
いやー、近頃のご老人の元気なこと!
是非ともインタビューして、元気の秘訣など伺いたいところですが、今回の記事の趣旨としては、

ズバリ、真相解明!

「あの二人、昼間はどこにいるんだろう?」

個人的に長年の疑問だった事が解決しましたので、ここで報告したいと思います!

それでは迫真のレポート、記事本編をどうぞ!

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あの二人が昼間どうしているのか、ずっと気になっていた。
宵闇頃になると、ぼんやりと浮かび上がるように現れる、喫茶店Kのおじいさんとおばあさん。

とにかく気になりながらも、自分の日常もまた曖昧で、リビングデッド会社員生活はただ流されるように流れていって、しばらくKにも来ていなかった。来るだけの余裕がなかったのだ。しかし憩いのない生活には定期的に限界が来るわけで、だから私はまた会社を休んだ。

そして久しぶりにやって来た、喫茶店K。

昼下がりの半端な時間でもあるし、ここ数年で急激に太ってしまった結果が健康診断の数値にも如実に表れたこともあり、その日は珈琲だけを注文した。
(グルメリポートなどと称して街中華を食べ散らかしていた報いか。座りっぱなしの仕事もストレスがたまる一方。そもそも会社員など向いてない。健康不安は日々の出社のせい。間違いない。呪われし社会システムによる肥満、ヘルシー無職志向は同調圧力に屈するのか、そのせめぎ合い)

店の中はそれなりに混んでいて、私は一番奥の角席に座った。そこで珈琲をすすり(とにかく会社を辞める、しかしその先は?)なんていつもの堂々巡りをしていると、耳元でささやき声がする。

「あそこも家業が傾いて、そう長くは続かないだろう」
「そうかねえ」
「何せ息子が殺したのだ」
「……あのヤモリかい。百年は生きてたのにね」
「それだけでなく、古い御守り袋を裂いて捨てたのだ。去年来た嫁は何も分かってない」

意味がよく分からないが、とにかく不穏な会話。
とうとうメンタルのヘルスにも支障を来したか……とまた健康不安に陥りそうになったが、たしかに、はっきりと聞こえてくる。
自分が頭をもたれていた店の壁の中から、あの二人の声が聞こえる。

「ところでご飯はまだなの?」
「さっき昼飯食べたろ」
「そうかねえ」
「どこでもいつでも耄碌してるな」
「そうかねえ」

先代マスターとその老いた母は、昼間のうちは壁の中にいるのだ。そして壁の中にいても、相変わらず仲はよさそうだった。

「ところで近藤さんは、また事務所で若い人を蹴ったみたいだ」
「あの人も乱暴者ねえ」
「それでも随分と丸くはなった」

二人が噂している近藤さんは自分も知っている人だ。この辺の古い飲み屋で何度か顔を合わせて話をしたこともある。
有り体に言えば指定暴力団の偉い人だから、どこかしらで暴力を行使しているだろうとは思っていたが、こんな形で具体例を知るとは思わなかった。

「あれも因果だ。四代前からのものだろう」
「でもあの人はつよいから」

たしかに近藤さんは強そうだ。なにせヤのつく自由業の偉い人。そら強いに違いない。しかしとくに偉ぶりもせず気さくで、いかにも場をわきまえているし、マナーもよい。サービス精神があって話も面白いから、たまに酒場で会って飲むには楽しい人だった。

「うちにもよく来てくれてる」
「そうねえ」

近藤さんは地域に根付いた古いタイプの任侠を自認しているようで、この辺り一帯を歩いていると、酒場以外でもよく出くわす。
以前あるそば屋で会ったときは「お前また太ったんじゃないか。腹出てきたな」と私の下腹をガッと掴んだ。その掌の力強さ。握力だけでなく、何かしらのオーラのようなものを下腹に熱く感じた。「おめえもよお、もういい年になってきてんだから、身体の事考えたほうがいいぞ」と忠告された。あれは健康診断の前だったので「はは、そうすね」なんて軽く流したが。

「乱暴ではあるが面倒見もよいのだ」
「そうねえ、本当に」

たしかに近藤さんは面倒見がよい。それに甘えるように、さらに心を許したり、すっかり委ねたりしてしまったとする。そして仮に自分が失職して、ここらで連日昼間から飲んだくれたりするようになれば、近藤さんが声を掛けてきて仕事を斡旋してくれるかもしれない。あの分厚い掌でおれの手を握り、そのおれの手の中には黒光りするチャカ、粗悪なロシア製拳銃があり「ごく簡単な案件だからよ。ただもう一発か二発、あのビルに撃ち込んでくりゃ、それでいいからよ」なんて諭されて、チャカの手触りは冷たい金属のそれだが近藤さんの掌からは熱いオーラがブワッと伝わってきて、気がついたらその気になっている自分……そんな事を勝手に想像する。

「……悪い人間ではない。ただ力があるので、周りの人間が勝手に動いてしまうのだろう」
「じゃあ、許してあげようかね」
「そうしよう。うちにもよく来てくれるし」

この壁の中にいる二人は、一体何者なのだろうと考える。

この界隈でも最強の部類に入る近藤さんを罰する、あるいは許容する権利を有しているらしい。こうして壁の中にいる、という状況から考えてみれば、およそ妖魔の類ではあるのだろう。しかし夜になれば二人とも店に出て、いかにも下町らしいやり取りを繰り返す。丁寧に珈琲も淹れてくれる。

まあだから、あまりこの二人が誰であるとか、深く考えなくてもいいような気もしてきた。

「ねえ、お昼ご飯」
「もう食ったろ」
「そうだったかねえ」
「大体、こうやって壁の中にいるのに、腹が減るのがおかしい」
「減るんだから仕方ないじゃないか」
「ほら、そこのシロアリでも食ってみたらいい」
「こないだちょっと食べてみたんだけどね、意外と美味しかったよ」

いまは昼間で、立地的に日当たりもよく店内は明るい。厨房の中で穏やかそうな旦那さんがフライパンを振るい、何か料理を作っている。健康のためにしばらく食事制限しているのだが、やはり気になる。とにかく美味そうなのだ。日替わりの黒板を見ると「Bランチ・豚の生姜焼き」とある。漂ってくる匂いからして、なるほど豚の生姜焼きだ。さぞや美味いだろう。Aランチは今日も早々に売り切れたらしく消されている。一体何だったのだろう。激しく気になる。いつかは食べられるのだろうか、Aランチ。

「ありがとうございましたー」

店の奥さんが会計を済ませたお客を見送る。「おう。じゃあまたな」と肩で風を切るように去っていく厳つい背中は、どうも近藤さんらしい。気が付かなかったので挨拶しそびれた。まあでもそんな事で怒る人ではないだろう。私はまだ仕事を斡旋されてないしトカレフも握らされていない。ただやっぱり事務所で本当に人を蹴ってきたのかは気になった。

ところで、いま忙しく立ち働いているこの二人は、夜の間はどうしているのだろう?

やっぱり交代で壁の中に入るのだろうか。そこではどんな会話をしているのだろう。やっぱり真面目に、次の日のランチのメニューを決めたり、仕入れの段取りをつけているんじゃないかと思う。

今度夜来たときも、いまの席に座って確かめてみようと決めた。

「ああ、お腹空いたねえ……」
「あ、こら婆さん、その柱はかじるなって。さすがに店が傷むぞ。あとで娘に怒られんの、おれなんだからな。勘弁してくれよ」
壁の中からガリガリという音がして、心なしか店全体が揺れたような気がした。

そしてやっぱり自分も腹が減ってきて、追加でBランチを頼もうかと思う。豚の生姜焼き、絶対美味かろう。しかし健康不安もまた頭をよぎる。とりあえず珈琲を一口飲んで、ノートパソコンにいかにもグルメブログぽい感じで結びの言葉を打ち込む。

……と、いうわけで!
この喫茶店「K」さんは、昼も夜も楽しめる、とっても素敵なお店です!
オススメです!


【蛇足】
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